外伝1-2『昼食』
「ママぁ~、おなか空いたぁ~」
ミドリが腹をすかせたらしくリビングに入ってくる。
「はいはい、もう少し待ってね」
忍が壷の中に入っていた妙な肌色のペースト状の何かをボールに取り出して、ミキサーに様々な野菜や果物を押し込んで粉砕して緑色の液状になったものをペースト状の何かに混ぜた。
それを適量皿に盛り、スプーンで直接ミドリに食べさせる。
「はぁ~い、あ~ん」
「んんぅ~♪」
幸せそうなミドリを傍観して思ったが、これはそんなに美味いのか?
ボールに入った妙なモノをつまみ食いしてみる。
ペロリ
!? なんだこの異常な不味さは!!
まるで、まるで青汁を濃縮したものを出来損ないのクッキー生地に練り込んで焼かずに常温で放置したような味がする!!
我慢できずにトイレまでダッシュして嘔吐した。
オェーーー!!
ひ、酷い味だ……。
こんなモノをミドリは美味そうに食べていたのか?
理解に苦しむ……。
「マスター、大丈夫ですか?」
「あぁ……とりあえず次の昼食の分だ。悪いがお前のレーションには世話になりたくない」
「まぁ、私の価値観とマスターの価値観に相違が存在するのは薄々理解していましたから気にしていません」
「悪いな、カルチャーギャップだけはどうしても俺達の間に介在する」
「大丈夫です、気にしてません」
『気にしてません』と2回言う辺り、これは確実に気にしてるな。
我が家の食材のストックは卵、各種野菜果物、干し肉やハムやベーコン、乾燥したパン、そして調味料か……これだけならサラダやベーコンエッグとかが食べれる。しかし……
「ダナー、訊いてもいいか?」
「何か?」
「ウチにはガスコンロの類はなかったのか?」
「少なくとも私はそのような調理器具の作成は行なっておりません」
マンマミーア!
コンロ無しでどうやって調理しろって言うんだ!!
「火をおこす位なら簡単ですよ?燃料の木材なら庭に大量に存在しますし、耐熱性能の高いフライパン等なら3分もあれば作れます」
「とりあえず頼む」
「ラジャー」
そう言って庭の木を一本切り倒して三枚におろした。
フライパンとコンロもどきは手に入る。となれば、サラダとベーコンエッグとパンだ。究極的な話、パンとサラダはそのままで良いだろう。つまり問題はベーコンエッグだ。……ベーコンエッグってどうやって作るんだ?ベーコンを焼いてその上にタマゴを焼くのか?それに塩と胡椒をかければいいのか。なんだ、簡単じゃないか。
「忍、ベーコンエッグは俺が作るからサラダを作ってくれないか?」
「あいさー」
▽
「ダナー、フライパンとコンロは出来たか?」
「はい、初めてなので自信はないですが問題ないかと」
そう言って庭に作った簡易コンロに火をつけてフライパンを温める。
フライパンに油を入れて焼きやすくしたほうが良いのかね?別にいいか。
十分に温まったことを確認してベーコンをフライパンに投下。
しかし、フライパンに接した瞬間にベーコンは炭の塊に姿を変えた。
え?何これ?
「む、火力調節をミスってしまったようです。サーモグラフ機能オン」
「火力調節くらいちゃんとしてくれよ」
「同じミスは二度とやりません。学習機能も私のは超一流だと自負しております」
それなら十分だが……何だろうか?この不安感。
次にまたベーコンを入れた時もまた炭と化した。
「ふっざけんなよ!どんだけ火力上げてんだよ!」
「ふぅむ……かなり温度は下げたのですが……」
『ふぅむ』じゃねぇよ!!
「ところでマスター、火力っていったいどのくらいの温度にすれば炭にならないのでしょうか?」
「俺も知らん!!」
「さすがにここで威張られても……」
「くっ!仕方ない、理科の実験みたいに最初から徐々に温度を上げろ」
「サー」
こうして、俺はベーコンを焼くのに1時間も浪費してしまった。
▽
「忍、サラダは出来たか?」
「…………」
「忍?」
「サラダってどうやって作るんだっけ?」
「は?サラダなんて野菜を適当に切ってその上からドレッシングをぶっ掛けるだけ……だ……ろ?」
俺は忍が盛り付けた(と思われる)サラダを見て驚愕した。
なんと言うことだろうか?そこには前衛的というか抽象的というか子供が粘土でコネて作ったような形容しがたい現代アートみたいなサラダが存在した。
「サラダってどうやって作るんだっけ?」
「むしろ俺はどうやって作ったらこうなるのか教えて欲しい」
「……なんか気付いたらこんな風になってた……」
どんな風に作ったんだよ!!
「だいたい1時間もかけてこれか!お前は俺達が1時間もベーコンを焼くのに苦戦してた間にこんなトンチキなサラダを盛っていたってことか!!」
「煩いな!!そういうミコトだってなんでベーコンを焼くのに1時間もかかるのさ!要領悪過ぎなんじゃないの!!」
「あぁ!やんのか!」
「上等だ!」
臨戦態勢を取りファイティングポーズを構える。
「落ち着いてください、御二方。料理が存在するのにケンカする必要が何処に存在するのですか?」
「……まぁそうだな」
「……その通りだね」
「分かってもらえたなら何よりです」
「「じゃあ『いただきます』」」
パクリ
『マズイ!!』
1時間もかけて作った昼食はドブのように不味かった……。
泣きたい……。日本に帰りたい……。
レトルトカレー食べたい……。




