第十四幕 カタストロフィの尖兵
勇者ギリ、勇者マク、勇者ゼオはマドーに詰め寄る。それでもマドーは全く動じなかった。そんな中、魔王カオスデキオンはほくそ笑んだ。
彼はすでにマドーと話を終えており、マドーがどういう存在か知っていたからだ。これから起こることを考えると愉快でたまらなかった。
「おう!てめえに言ってんだ!無視してんじゃねえ!」
そういって、勇者ギリはマドーめがけて剣を振り下ろす。しかし、剣はマドーの体に当たる前に腕ごと燃え尽きていた。
「え?」
勇者ギリは驚愕した。そして、状況を理解する。
「う、うわああああ!俺の腕が!」
「て、てめえ!よくも勇者ギリを!」
「人間様に逆らうつもりか!」
勇者マクと勇者ゼオも剣を抜き、マドーに切りかかるが同様に剣が燃え尽きついでに腕も燃え尽きる。
「ぐわああ!」
三人は仲良く腕を抱えて座り込んでしまった。ちなみに、今回グリーアも同行しているのだが、非常に小さいサイズになってマドーの肩に乗っている。
なぜ、グリーアが同行しているのかというと、魔王カオスデキオンと同じ魔王であるということで、今回のクエストであるカウンセリング業務に最適だったからだ。
その有様を見てグリーアは喜んだ。
「人間どもの苦しみこそ我が至高た。そして、何を思ったか三人を回復させてやり腕も生やしてやった。しかも剣まで復元されている。
「どうぞ」
とマドーはいった。勇者たち三人は何が何だか分からず唖然とする。
「斬りかかるのではないのか?」
そうマドーに言われたがマドーがあまりにも得体のしれない相手であると気づき、徐々に後ずさりし始めた。
「ふ、ふん!てめえが誰か知らねえが。もうてめえは終わりだ。俺たち人間を敵に回したんじゃな」
「てめえがどれほど強かろうが、勇者連合が力を合わせて勝てない相手じゃないぞ!」
そういって、踵を返し一目散に逃げだしていく。ところが、ある程度逃げたところでまたマドーの前まで強制的に転移される。
「な!て、てめえ!」
そういいつつ、また後ずさりし同じような台詞を吐きながらまた逃走するが再び戻される。そんなことが複数回繰り返され、勇者三人は完全に参ってしまった。
「す、すみません!助けてください!」
「命だけは勘弁してください!」
泣きわめきながら土下座する。グリーアはその有様を見て一体マドーは何がしたいのだろうと思った。
「マドーよ。何がしたいのだ?」
「何がしたいのだとはご挨拶だ。単に観察しているだけだよ」
「観察だと?」
「我々はこの異世界は初めてだ。この異世界の法則をより知るためには、もっと多くの情報が必要になる。そういえば勇者連合とか言ってたな。
ちょうどいい。新魔界にも魔獣が欲しいと思っていたところだ」
「魔獣?」
話があまりにも飛ぶのでグリーアは全くついていけていない。マドーは泣きわめていた勇者三人を一つの生命体に融合させた。
「名付けて魔獣ギリマクゼオだ」
勇者ギリ、マク、ゼオの顔が中央と左右についており、胴体は完全に化け物の魔族風の様子だ。
「あ、あんまりだ!元に戻してくれ!」
三つの顔の声ははもっている。
「では、尖兵として勇者連合と戦うといいだろう。まもなくカタストロフィが始まる。世界を終わりを告げる役割を与えよう」
「そうすれば元に戻してくれるのか?」
「そこまで言うなら仕方ないが、気が変わると思うぞ」
「気など変わるものか!分かった!勇者連合を蹴散らしてくるぜ!」
魔獣ギリマクゼオは、フライング気味だがカタストロフィの尖兵として出陣したようだ。
「マドーよ。貴様は我以上の魔王だ」
グリーアはあまりのひどさにそういう感想を漏らした。
「そうかね。ともかく君の業務はカオスデキオン君のカウンセリングだよ。カタストロフィの進行も頼む」
と、グリーアの戯言など何の意にも返していない。
「頼むといわれても、何をしたらいいのだ?」
「それはグリーア君の才覚で何とかしてくれ。私は他にやることがあるのだ」
「ぬう。しかし、我は元々瘴気の研究に雇われたはずだったが・・・」
「そうはいうが、瘴気はパメロア君のが詳しいではないか。それに業務担当が変わることがあると契約書にも明記されている」
実のところ、グリーアは結構な無能で、ほとんど瘴気の研究に携わっていないことが後から分かったのだ。グリーアは単に力が強いから魔王をやっていただけで、知能方面はもっぱら四天王の大地のパメロアが担当していたらしい。
「我は契約書の内容をよく確認していなかった!」
「君の無能を私に押し付けられても困るよ。全く君は愚痴屋で才覚に乏しい」
「ぬう!我を侮辱するか!」
「今度は怒ったふりか!さぼろうとしてもそうはいかんぞ!ともかく業務時間内は仕事をしていただく!」
「ぬ、ぬう・・・」
グリーアはようやく納得したようにうなった。マドーはその様子を見て無能な部下ができてしまったと嘆くのだった。




