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虚構の世界に介入して登場人物を全員幸せにするまでの物語、パーフェクト・バージョン!  作者: 秋乃晃
14回目の偽アカシックレコードの世界=修正された虚構の世界編
98/100

「little by little」



 ここは。

 13回目で総平と来た場所。


 この世界の篠原幸雄は記憶リセットパワーで覚えていないだけで、たぶん何度か都営バスで足を運んだことがある。


 おれの主観では訪れるのは2度目だ。


 晴海客船ターミナル。

 太陽光をあちこちに跳ね返すオブジェが目立つ。

 それ以外には何もなく、海が一望できるスペースだ。

 総平は『ヒーロー番組のロケ地として使われている』と紹介してくれた。


 そんな場所におれはフォークを持ち、裸足で立っている。

 ださ。


「せめて靴ぐらい履かせてくれや」


 どれだけこの世界の篠原幸雄がエクセレントでビューティフルな存在であっても、これではさまにならない。

 見回したけど創は姿を消している。

 もしこの場にいたらフォーク突き刺してるところだった。


 家の中から移動させられたせいでこんなことに。

 タイルの感触が直に伝わってきてやな感じ。


 フォークは食事中だったからだけど、離さずに持ってきてるのは何。

 武器のつもり?

 ホットケーキ食べたかったよ!


「ぎゃっ!」


 おれが憤慨していると、海を背景にして神佑大学附属高校の制服を着た女の子が背中から墜ちてきた。

 後頭部を打ち付けてしまったらしく「いたたたた!」と言いながらぶつけた場所を左手でさすっている。


(白菊美華!)


 フォークを一旦ポケットにしまって身構えた。

 アンゴルモア。

 前回まではこの世界の管理者だった女の子。

 その証拠に、右手には本物のアカシックレコードを携えている。


 覚えている限りで2回はこの子に殺されているから、今回も間違いなく敵だ。

 当初はこのアカシックレコードを奪おうと考えていたのが懐かしく思える。


「篠原幸雄。やはりあなたはこの世界にとっての悪!」


 おれに気付いた白菊美華はさっきまでの余裕のなさはどこへやら、ファイティングポーズをとってくる。

 っていうか、みんな悪いやつ扱いすんのな。

 おれのことを。


 そんなによその世界から来たのがダメか。

 おれも来たくて来たわけじゃないんだけど?


 できれば静かに死にたかった。

 誰にも必要とされずに。

 誰かに看取られることもなく。

 1人で。

 孤独に。

 死にたかったのになんか『この世界をハッピーエンドにしろ』って言われたからさー。


「わたしは“正しい歴史”の管理者として、この14回目も“正しい歴史”に沿ってこの世界を進行していかねばなりませんでした。創造主がわたしに与えた役割です」


 白菊美華は本物のアカシックレコードを掲げる。

 お前はそういう役割だったよな。


「しかし14回目は“正しい歴史”に至るまでの積み上げられた土台が既に書き換えられていました。わたし1人ではどうしようもないほどに」


 お手上げとばかりに両手を挙げる白菊美華。

 落とされるアカシックレコード。

 本来ならば“正しい歴史”が刻まれているはずの本なのに、その“正しい歴史”の流れを汲まない14回目の世界。


「こんなの間違っています。アカシックレコードに描かれた“正しい歴史”こそがこの世界の真の姿!」

「お前にとってはな」


 考えてみたけど、14回目ってそこまで悪くないじゃん?

 作倉さんぐらいじゃね?

 ダメージ受けてんの。


 あの霜降先輩が満身創痍な作倉さんを倒しにいくの?

 ほっといても死にそうだよ今の作倉さん。

 入院してどんな治療受けてんだか知らんけど。


 楠木もジェネリック知恵ちゃんを生み出していないから世界征服を目論む人工知能も生まれてないし。

 血生臭い“正しい歴史”よりよっぽど正しい気がするのはおれだけ?


「ここで14回目は終わらせて、リセットさせます」

「納得いってないのお前だけだぞ。たぶん。全員に聞いたわけじゃないけどさ」


 おれが口出しすると、白菊美華は「うるさい!」と一喝しておれを指差す。

 しかし何も起こらない。


「あれ……?」


 なんかしようとしていたらしい。

 もう一度手を上下させておれを指差した。


 痛くもかゆくもないが?


「んな?」


 何度か同じモーションを繰り返すも、特に変わるわけでなし。

 血の気が引いていく。

 ひょっとして【移動】が使えなくなっているとかそういう?


「創造主よ……わたしを見捨てたのですか……?」


 ふーん?

 使えないの?

 ふふーん??????????


 勝ちじゃん!


「創が偽“アカシックレコード”に書き込んで使えなくしたんじゃね?」


 思い当たる節はそれぐらい。

 学校を消してみせたんだから1人の能力をなかったことにするぐらいちょちょいのちょいでしょ。


「あいつ!!!!!」


 ここで白菊美華を倒せば、この物語を何が何でも“能力者の全滅”で終わらせようとする要素はなくなる。


 だよな?

 間違ってないよな?


 でも、まあ、この世界の篠原幸雄は女子供を殴るようなキャラじゃなさそうなんだよな。

 おれとしては2度こいつから強制終了食らってるから2回ぐらい殴りたい。

 どうしたもんか。


 おい。

 ぼく。

 聞こえる?


 ……聞こえないか。

 特等席から見てるんじゃなかったのかよ?


「おれはここで殴りたいところだけど“ぼく”はそうしないだろうから、こうしよう」


 対象を白菊美華1人に指定。

 最大値に調整。


「これで【疾走】を発動したらおれにとっての……いや、お前以外のこの世界にいるすべての物体にとっての1秒はお前にとっての1年になる」

「!?」


 時空に取り残されろ。

 おれが直接手を下すまでもなく1分後には60年後だ。


 凍りつく白菊美華に「オーケー、何か言いたいことがあれば言いたまえ」とこの世界の篠原幸雄の口調に合わせて聞いてみる。


「呪ってやる」

「かわいい子に呪われるなら、おれは嬉しいかなー」


 ぼくはそうでもないかもしれないけど。

 他に言いたいことない?






【little by little】


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