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虚構の世界に介入して登場人物を全員幸せにするまでの物語、パーフェクト・バージョン!  作者: 秋乃晃
14回目の偽アカシックレコードの世界=修正された虚構の世界編
96/100

「no matter how」


 親子喧嘩は取っ組み合いの寸前までヒートアップしてしまったので、おれが「まあ、2人ともいい大人なんだしそれぐらいにしといて」と口を挟んだらお互いにそれもそうかと思ってくれたのか急に終わった。

 聞き分けのいい大人でよかったよかった。


 途中からは暴言のぶつけ合いになってたしな。

 行き場をなくしたボキャブラリーが宙をふわふわ漂っていた。

 教室の外の学生諸君に見つかったら総平の負けだったけど。

 男子高校生と来客が言い争いになってるのはこちらの分が悪すぎる。


『言いたいことはそれだけか?』


 沈静化したのに氷見野さんが再点火しようとしてる!?

 いや、まあ、総平もケンカしにきたわけじゃないだろうし……?

 と思いながら横目で総平を見れば「成仏してくれ」と拝んでいる。


「なんで!?」


 宗治の視点で考えてみる。

 風車首相の願いは叶っていない。

 全人類は幸せになってないし。


 例えば真の世界のおれなんかそうだ。

 実の両親からは捨てられるわ、育ての親からは顔を焼かれるわ、義理の兄からは殴られるわ。

 高校には行けてないし。

 こうやって高校の文化祭にきてみると高校生活したかったなぁなんてちょっと思い始めている。


「なら何の未練があるのか教えてくれ! できる限りなんとかするから!」


 風車宗治が自らの願いを叶えるために、自らの能力で生き返ったのだとしたら。

 高校2年生からやり直そうとしているのだとすれば……。

 このまま放っておいたら歴史は繰り返すんじゃね?


 なんで高校2年生なのかはわからん。

 きっと本人にしかわからない人生の転機があったとか?

 分岐点がここにあるとか?

 生き返るんならもうちょい成長した後の姿でもよかったじゃん?


「風車さんはなんで高校2年生に?」

「え?」


 いや総平に聞いてるんじゃないよ。

 両方とも風車さんだったわ。

 総平は総平ってさっきから呼んでるでしょ!


「オレ? オレはほら、道半ばで死んだから人生をやり直したくて」

「それなら高校生である必要なくないですか?」


 年下だけど中身は年上ってことを考えると敬語になってしまうおれ。

 宗治は「確かに! それ!」と自分でもそこまで深く考えてなかったかのような反応を示した。


「でもオレはこの学校をいずれ卒業し! もう一度この国のトップに立つから!」


 うーん?

 トップに立たれたら困るのでは?


 いや待て。

 この世界は1年でリセットされるんだ。

 ここで宗治を放っておいてもどうせ2023年だかの8月25日には死ぬんじゃないか?


 一度死んでいる場合はどうなるのこの処理。

 記憶がリセットされるの辺りも含めてどうなるの?


『バカは死んでも治らない』


 誰宛?

 おれ?

 じゃ、ないよね?


「なんだよ! まさひとまでバカって言うな!」


 よかったおれじゃなかった。


『この世界ではお前の野望は叶わない』

「まだわかんないだろ! 留年しそうだけど! しないようにする!」


 まあ、氷見野さんは知恵ちゃんのおかげでこの世界が1年でループしてるって知ってるもんな。

 宗治も知恵ちゃんに会わせたら諦めてくれるのかな。

 諦めさせたところでどうなんだ……?

 でも【予見】で視た“未来”を変えられなかったってことは【威光】も所詮そこまでってこと……?


「とにかく! 俺はここからやり直すんだからな! 総平も邪魔すんなよ!」


 宗治が言い終わった瞬間に、ぐらりと地面が揺れた。

 地面が、というか、建物全体がうねるような?


「地震!?」


 えええええっっとおとおっと。

 地震の時はまず頭を守って?

 倒れたら危なさそうなものからは離れ! る!


「きゃー!」

「うわあああああああああああああ!」


 教室の外から叫び声が聞こえてくる。

 そちらに視線を奪われ――消えた。


 え??????????


 あんなに並んでた高校生が消えたんじゃが!?


 なに?

 何のマジック?

 近くに築山いる?

 BB弾転がってる?


 肉体が消えかかっている宗治が、総平に食ってかかる。


「なんだよこれ! おい! 総平! なんかしたのか!?」

「俺は何もしてない!」


 総平の言うとおり、総平に何かできるわけじゃない。

 総平は“成仏してほしい”とは言ったが、それを実行できる力は持っていない。

 塩を撒いたわけでもない。

 宗治は「嘘つけ! なんかしただろ! 元に戻せよ!」と14回目のこの世界では存在していない息子に訴えかけながら、……消滅した。


「総平! 逃げるぞ!」


 驚いている場合じゃない。

 おれたちの足場もだんだんなくなっていく!

 このままじゃ3階の高さから地面に落ちるぞマジでやばいやばいやばい!


「氷見野さんは!?」


 もういない。

 消えかけている床に先ほどまで持ち主のいたタブレット端末があったので、おれはそれを拾い上げてから【疾走】発動。


 対象をおれと総平にして、1分に設定。

 実際に進んでいる時間は1秒に調整。

 これでおれたちは1秒の間に1分ぶん動くことができるようになる。


「走れ総平!」

「どこまで!」

「とりあえず校庭まで!」


 階段を駆け下り。

 玄関から飛び出す。


 振り向けばそこにあったはずの神佑大学附属高校は綺麗さっぱりなくなっていた。


 なんだこれ……。

 なんか、そういう能力?

 建物を消しゴムで消していってしまうような……?


「秋月さん!?」


 総平の視線の先には膝に手をついて息を整えている女子高生。

 神佑大学附属高校の制服を着ているのでコスプレでもなければついさっきまでそこにあった高校の学生だろう。

 知り合いなのかと思いきやあちらは「……えー……どちら様で?」とピンときていない様子だ。

 智司や宗治と同じく記憶が消えているパターンかもしれない。


 ん?

 秋月ってことは?

 他に秋月って名字の人がいないのだとしたらこの人が秋月千夏?

 女子高生だったんか。


「お知り合いですか?」


 秋月さんの近くにいたパーカーの男の人が耳打ちする。

 高校生にしては歳とってるな。

 それなのに秋月さんに対して敬語ってどういう関係?


「いや、全く……声かけ事案カモ?」


 言われてんぞ総平。

 この14回目の世界では住所不定無職おじさんだもんな。

 不審者と思われても無理はない。


「俺の知らない“組織”の人でもなく?」

「おじさんの隣にいるイケメンは見覚えあるの」


 ふーん?

 なら、この世界の篠原幸雄と同じ本部にいたのか。

 霜降先輩といい天平先輩といい、顔採用でもしてんのって疑うぐらい美人多いな……?


「何をしにきたのかね?」


 総平と秋月さんの間にふわっと降り立つ男の子。

 どこかから瞬間移動してきたみたいな……。


 質問されているのはおれだ。

 目と目を合わせてきているからたぶんおれに向けて何しにきたのかを聞いている。

 男の子の左手には生前のおれが一瞬だけ手元に置いていたアカシックレコード。

 間違いなくあれだ。


「なんでお前がその本を?」

「元々この本はクリスがぼくに与えたものだからね?」


 なんでそんな当たり前のことを知らないのかね?

 とでも言いたげな顔をしてくる。


 時系列を考えてみるか。

 まずクリスさんが偽“アカシックレコード”を創りました。

 次にこの子に渡して?

 この子が、か、誰かはわからないけど海に捨てて?

 ワイキキビーチだかに流れ着いたのを2010年8月のおれが買い取った?

 そんでクリスさんが回収しにきたから、最初に戻る?

 ループしてるってこと?


「どうせこの学校のみんなは2009年8月25日以前に死んじゃってるんだよね。こうして消えちゃったとしてもそれは元の位置に戻ったってだけだね?」


 宗治も氷見野さんもそうか。

 死んだという事実は14回目の世界の歴史でも変わっていないわけだ。

 元の位置に戻った、という表現で濁されているけどあの世に逆戻りしたのかな。


 死後の世界ってあるのか……?

 真の世界のおれは殺されてからこの世界に転生したわけだけど。

 だとしたらおれにとってのここが死後の世界?

 うーん?

 死後の世界なんだとしたらもうちょっとなんか、楽したいな?


「創がやったの?」


 秋月さんが男の子に問いかける。

 創という名前らしい。

 こいつが能力者なら、名簿に名前載ってるのかな。

 あとで調べてみよう。


「この世界はこの偽“アカシックレコード”の世界だから、この本に書き込んだことが起こるんだよね」


 なんだそれ。

 初耳なんだけど。

 どんなチートな登場人物も作者には敵わないってか?


「ちなっちゃんは今日ここまでのことを全部忘れて、明日からまた“組織”で頑張ってね!」


 そう宣言すると、実演とばかりに創はアカシックレコードにペンを走らせる。

 すると秋月さんの身体がビクッとえびぞりして、パーカー男は「大丈夫ですか!?」と駆け寄った。

 どういう関係?


「たーちゃん……? 私服なんて珍しいの」

「休みなので?」

「今日何曜日? って、あれ? なんでわたし制服なんか着てんの!?」


 顔を真っ赤にして「年甲斐もなくはずかし!」とブレザーを脱ぎ始める秋月さん。

『ここまでのことを全部忘れて』?

 忘れたってこと?

 あの本になんか書き込んだだけで?


「で、さっちゃん! さっちゃんというよりお前は“シン”って呼んだほうがいいかね?」


 大技を見せつけてからおれに向き直る創。

 おれは総平を盾にする。


「ぼくはお前と敵対する気はないし、どっちかというとお前の味方だね」


 そうなの?

 総平の影からちょっと顔を出してみるおれ。

 総平は腕を組んで「クリスさんから話は聞いてる。宮城創」と呼びかけた。


 宮城は、クリスさんがどうしても日本人っぽい名前を名乗らねばならない時に使っていた名字だった気がする。

 クリスさんは【創造】の能力者で、おれはそこまで仲良かったわけじゃないし能力者についても詳しくないからあれなんだけど超長生きらしい。

 超がどのぐらいなのかは知らない。

 いわゆる不死身ってやつだ。

 見た目は小学生ぐらいだけどこれは小学生の時に【創造】が使えるようになったからだとかどうの。

 その宮城姓をわざわざ名乗っているんならなんか関係者なのかな?

 弟とか?


「ぼくとしては偽“アカシックレコード”を回収できたし、あとは篠原幸雄がカッコよくラスボスを倒してくれればいいんだけどね?」





【no matter how】


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