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第13話  新しい師弟が生まれた

 ヘイザ・アッシュブレードの一党(仮名)の最初の冒険を終えた後、ヘイザは家(というより物置小屋)へは戻らず、その足で藤乃屋へと来ていた。言うまでもなく緋桜を指名して一夜を過ごすためである。


「緋桜! 約束通り金稼げるようになったから、きたでござるよ!」


「わっちもこうしてヘイさんとここで会えて、嬉しいでありんすえ」


 ふっと花が綻ぶような微笑みを浮かべる緋桜。彼女はヘイザの頬を、慈しむような、それでいてどこか艶めかしい仕草で撫でる。


「緋桜の紹介で仲間になったキクコも大活躍だったでござるよ! 幽霊故の物理無効にサポート特化の白魔法はいいでござるなぁ」


「キクコはんも最初の冒険は楽しかったと言っていたでありんすよ。でもヘイさんもいけずでありんすなぁ」


「え、なんででござるか?」


「逢瀬の前に違う女子の話をされたら、妬いてしまいんす。どうか今はわっちだけを見てほしいでありんすよ」


「うっひょー!」


 ヘイザは獣になった。




 一方でジャックもまた夜の街へ来ていた。

 奴隷であるジャックには給金などはないのだが、ヘイザは依頼を終え報酬を受け取ると「お前も男だし、一発やってこい」とお小遣いを貰っていたのだ。

 その額、金貨三枚。

 緋桜のような高級な女には手が届かないが、安い店なら女を買いつつ、その後でちょっと豪勢な夕食を食べることもできるだろう。


「……奴隷だけど、いつか必要になるかもしれないし貯金しておくか。金貨九十枚……いや五百枚くらい溜めれば、自分を買い戻せるかもしれないしな」


 手元にある三枚の金貨を見下ろして、ジャックは自分に言い聞かせるように言う。至極真っ当な判断だったがしかし店頭に出て客引きをしている色っぽい女性を見ると、それが鈍りそうになる。


「そうだ……貯金するのが正解なんだ……絶対に正解なんだ! で、でも一発……くぅぅ、あああああああああああああああああああ!」


 ずっと家族から虐げられてきて、捨てられてからは奴隷へ落ちたジャックにはそういう経験は一切ない。十代のジャックには色恋への興味も年相応に旺盛であった。


「誰かと思えばヘイザが買ったっていう奴隷じゃないか」


 一人悶えていると、ジャックに一人の冒険者が話しかけてきた。


「あ、貴方は、どなたです?」


「三級冒険者パーティー、エターナル・レストのリーダーのベネディクトだ。ヘイザとはまあ飲み仲間だな。で、なにか困っているようだがどうしたよ?」


 見ず知らずの人間ということもあって最初は警戒していたジャックだったが、パーティーのリーダーだけあって気さくなで話しやすいベネディクトに押され、気付けば思春期の恥ずかしい悩みを吐露していた。

 ジャックの話を聞いたベネディクトは頷くと、


「ふむふむ。貯金はしたいけど、女とも一発やりたいか。ありがちっちゃありがちだな」


「どうしたらいいっすかね?」


「そういう時はオナニーだ!!」


「ぶふぉおお!」


 三級冒険者から飛び出した、あまりにも直球過ぎるアドバイスにジャックは思わず噴き出してしまう。いきなりそこそこ有名な冒険者が道端で「オナニー」と叫んだことで通行人がぎょっとしていた。


「いや、そのですね。自分の右手を恋人にするのは飽きたから、そういう店に行きたいって悩んでるんですけど……」


「右手を恋人、か。オカズはなにを使ってる? どういう風にやってる?」


「おかっ!? い、言えるわけないでしょうそんなこと!」


 流石にそういう行為を一度もしたことがないと主張するのは嘘丸出しなので否定しなかったが、幾らなんでもそんな恥ずかしいプライベートまでは赤の他人には言えなかった。


「言わずとも反応で大体分かった。どうせ気になる裸の女でも想像して、ただ手を前後させているだけなのだろう。だが俺から言わせれば、まだまだ修行が足りん」


 それから十八禁小説ではないので詳しくは記述できないのだが、ベネディクトは自家発電のテクニックや極意を延々と語り始めた。

 最初は嫌々聞いていたジャックだったが、熱のこもったベネディクトの指導に次第に真剣な眼差しで聞き入っていく。


「そうか! 自家発電はそんなに奥深いものだったのか! まてよ? イカをファウストだと思い込んだ要領で、理想のパツキン美女を妄想で生み出せば擬似的にエッチだってできるんじゃねえか!?」


「ふっ、ジャック。どうやら妄想力に関しては、天性の才覚があるようだな。ならその長所を伸ばして、持ち味をイかせ。それがセイコウの秘訣だ」


「は、はい師匠!」


 ジャックは自然とベネディクトのことをそう呼んでいた。ベネディクトも驚くことなく自然とその呼称を受け入れていた。

 男同士、暗黙に了解し合う関係というものが存在するのだった。

 そうしてジャックは金貨三枚を使わずに、自家発電のため宿屋へ戻っていった。




 最後にキクコであるが、


「食べる事も人と触れ合う事もできない幽霊でも、舞台はただ見し放題、演奏会もただ聞きし放題だけなのが役得ですねえ」


 一人のんびりと趣味の舞台鑑賞をしていた。

 法律違反ではない。観劇のチケットに大人一枚や子供一枚はあっても、幽霊一枚なんてないのだから。

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― 新着の感想 ―
そもそも死んでいる身では法律適用外だろうしなあ
そのうち幽霊禁止の法律できそう
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