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Thief  作者: がねちん
3/20

第三話 侵入者

本作品は実体験をもとに構成していますが、プライバシー保護および演出のため、登場人物名・設定・一部の内容を変更したフィクションです。

子供たちを疑ってしまった、翌日――


尋志は、防犯カメラの映像を再確認していた。


鍵は閉まっていた。

外部からの侵入は薄い――そう思い込み、前日は細かく確認していなかった。


だが今は違う。


(何か、見逃している気がする……)



最近の防犯カメラは、スマホで確認できる。

だが操作性は完璧ではない。


倍速再生はできず、指でスクロールするしかない。

そのため、細かい動きはどうしても見逃しやすい。


慎重に――

何度も指を止めながら映像を追っていく。


そして。


何気なく止めた、その瞬間。


――映っていた。


「……誰かが、窓から出ていく?」


リビングの大きな窓。

そこから外へ出ていく、若い男の姿。


時間は、深夜0時。


「将太……か?」


一瞬、そう思った。


だが、違和感があった。


鼓動が一気に速くなる。

手のひらに、じわりと汗がにじむ。


巻き戻し、もう一度。

さらに、もう一度。


三度目の確認で――確信した。


「違う……将太じゃない」


「じゃあ、誰だ……?」



泥棒――?


その可能性が、一気に現実味を帯びる。


映像の男は若いが、身長も体格も違う。

服装も一致しない。


さらに確認すると、男は窓から出る十五分ほど前から、家の中を物色していた。


だが――


「どこから入った……?」


侵入の瞬間が、どこにも映っていない。



その時だった。


スマホが震えた。


里美からの着信。


この時間に電話が来るのは、珍しい。


「もしもし?」


「あ、パパ?今大丈夫?」

「なんか……警察の人が来てるんだけど」


「警察!?」


あまりにも出来すぎたタイミングに、尋志は思わず声を上げた。


「俺も話がある!」

「将太でも幸絵でもない。泥棒だ――家に入ってる!」


電話は、そのまま警察官に代わった。



「ご主人、お忙しいところ申し訳ありません」

「近くで事件がありまして、防犯カメラのご協力を――」


「それより聞いてください。うちにも泥棒が入っています」


一瞬の沈黙。


「……わかりました。詳しくはご帰宅後に伺います」



その日の夜。


警察が五人、自宅に来た。


指紋、足跡――徹底的な現場検証。


尋志は、ここ数日の経緯をすべて話した。


防犯カメラも確認する。


だがやはり、侵入口がわからない。



しばらくして、ひとりの警察官が口を開いた。


「……入り口、わかりました」


「風呂場の窓です」


「風呂!?」


尋志は思わず声を上げた。


「高さもあるし、隙間なんて……」


「隣の家の室外機に足跡がありました。踏み台にしたんでしょう」



風呂場は死角だった。


滑り出し窓。

見た目では、人が入れる隙間などない。


「入れるはずがない」


その思い込みが、隙になっていた。



被害額も明らかになった。


里美の釣り銭、約一万円。

里美の財布から五千円。

そして――


尋志の財布から、五万円。



だが。


そんな金額は、どうでもよかった。


「俺は……こんな奴のために……」


我が子を疑った。


将太の顔。

幸絵の怒った声。


それが、頭から離れない。


怒りが、込み上げてきた。



その日から三日間。

尋志は、ほとんど眠れなかった。



家族を集めた。


「……すまない。疑ってしまった」


震える声で、頭を下げる。


将太は言った。


「いいよ。疑いが晴れただけで十分だから」


幸絵も、少し強い口調で笑った。


「パパ、気にしないで。犯人は許さないけどね」


責める言葉は、なかった。


それが、余計に胸に刺さる。



その瞬間、尋志は決めた。


(この犯人は――自分で捕まえる)



翌日から、動き出す。


可能性はゼロじゃない。


動けば、確率は上がる。

だが動かなければ――ゼロのままだ。



こうして始まった。


約一年に及ぶ、執念の追跡。


命をかけた戦いが、いま幕を開ける。

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