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Thief  作者: がねちん
2/20

第二話 疑いの矛先

本作品は実体験をもとに構成していますが、プライバシー保護および演出のため、登場人物名・設定・一部の内容を変更したフィクションです。

2024年の冬も終わりに近づく頃――


尋志の妻・里美は仕事を辞め、古巣へ戻った。

昔のメンバーはほとんどいなかったが、不思議と気の合う人間ばかりで、職場の空気は以前と変わらず心地よかった。


家庭でも、最初はぎこちなさが残っていたものの、里美は少しずつ落ち着きを取り戻していく。

その姿に、尋志は胸を撫で下ろしていた。


やがてゴールデンウィーク明け。

里美は一人立ちすることになった。


この仕事では「釣り銭」を自分で用意する必要がある。

一万円ほどの小銭を、家族みんなで少しずつ集めていた。


里美はそれを封筒に入れ、自分の机の近くに置いていた。


――その日までは。


「あれ?小銭が入った封筒がない」


一階から、里美の声が響いた。


尋志はすでに布団に入っていたが、呼ばれて一階へ降りる。

子供たちも含め、家族総出で探した。


だが――見つからない。


「私、おっちょこちょいだから……どこかにしまったのかも」

「ごめんね、また集めるよ」


その日は、それで終わった。



翌日。


まだ子供たちが帰っていない時間、里美がぽつりと呟いた。


「……もしかして、将太かも」


空気が、一気に重くなる。


「あの子、最近お金に困ってるみたいで……請求書も来てたし」


尋志も、同じ可能性を考えていた。


鍵は閉まっていた。

外部の人間が入った形跡はない。


だとすれば――家族の誰か。


娘の幸絵は考えにくい。

となると、消去法で将太になる。


胸が、嫌な音を立てた。


念のため、防犯カメラを確認する。

だが、怪しい人物は映っていない。


その流れで、尋志は自分の財布も確認した。


――五万円、入っていたはずだ。


それも、消えていた。



その夜。


尋志と里美は、将太を呼んだ。


「将太……正直に答えてほしい」

「お父さんたちのお金、触っていないよな?」


将太は、しばらく俯いたままだった。


そして、ゆっくり顔を上げる。


「……この状況だと、俺が疑われると思ってた」

「でも、違う。俺じゃない」


その表情には、決意と哀しみが入り混じっていた。



話を聞くと、請求書は“時計”の分割払いだった。


説明を聞き終えたとき、尋志は安堵した。

同時に、胸の奥がチクチクと痛んだ。


――息子を疑った。


その事実が、重くのしかかる。



だが。


将太が違うとなると――


次に疑うのは、幸絵になる。



「やめて」

里美がすぐに止めた。


「あの子は高校一年生よ。パパに疑われたら、どれだけ傷つくか……」


「でも、このままだと将太だけが疑われた事になる」


短い沈黙の後、尋志は言った。


「ちゃんと話す。大丈夫だ」



そして、幸絵を呼んだ。


「幸絵、正直に答えてほしい」

「パパたちのお金、触ってないよな?」


次の瞬間――


「は?私がそんなことするわけないだろ!」


怒鳴り返された。



その夜。


家族全員が、深く傷ついた。


疑った親も。

疑われた子供も。


結局、この件は――


「勘違いだった」という形で終わらせた。



だが、翌日。


尋志の中に、消えない違和感が残っていた。


(……もう一度、見てみるか)


仕事の休憩中。

防犯カメラを再確認する。


そして――


見つけてしまった。


この日から始まる、

約一年にも及ぶ“戦い”のきっかけとなる映像を。


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