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Thief  作者: がねちん
15/20

第十五話 前科

本作品は実体験をもとに構成していますが、プライバシー保護および演出のため、登場人物名・設定・一部の内容を変更したフィクションです。

家族が食事を終え、風呂場から親子の笑い声が聞こえる時刻。

その頃、尋志はマンションの階段を登っていた。


先に到着していたシーフと妻は、車の中で泣いていた。取り返しのつかない事を、ようやく理解したようだった。


部屋に入れてもらい、尋志が最初に指示したのは、ゴールデンウィークに侵入した際に身につけていた物を全て出すことだった。

服、ズボン、靴、バッグ——。


首元のチョーカーのようなネックレスと、大きなボディピアスは、犯行時と変わらない装飾品だった。


Tシャツ以外は全て出てきた。シーフは「シャツは船にあるかもしれない」と言った。


(マズイな……)


それらは全て証拠になる。

警察に提出してくれ。尋志はそう伝え、自分では一切手を触れなかった。


だが、Tシャツが出てこないとなると、ダルマ丸に捜索が入る可能性がある。


そして尋志は、これまで心に引っかかっていたことを、シーフにぶつけた。


「家の中を見る限り、そこまで困ってるようには見えない。 それなのに、なんで泥棒なんかした?」


シーフは、うつむいたまま答えた。


「……遊ぶ金が欲しかっただけです」


あまりにも軽い答えだった。尋志は違和感を覚えたが、それ以上は追及しなかった。


「もうすぐ警察が来る。最後に一つだけ聞かせてくれ」


怯えきった様子で、シーフが顔を上げる。


「君さ・・前科ないか?」


わずかな沈黙のあと、シーフは答えた。


「……あります」「同じような事をして、捕まりました」


「やっぱりな……」


尋志は、小さく息を吐いた。

経験上、色んな人種を見てきた。

無理に苗字を変えたところが、尋志は引っかかっていた。


その直後だった。玄関の外が騒がしくなり、ドアが開く。


「は〜い、そのまま皆さん動かないでね〜」


場の緊張とは不釣り合いな、軽い口調だった。


先頭の刑事は、そのまま真っ直ぐ尋志に近づいてくる。


「はい、じゃあ質問ね〜。名前は?住所は?年齢は?職業は?」


その様子に、妻の里美が苛立ちを見せる。


「いや、お巡りさん。俺、犯人じゃないんだけど」


「え?……じゃあ誰が?」


尋志は、無言で顎をしゃくった。その先には、部屋の隅で震えているシーフの姿があった。


ほどなくして応援の警察官も到着した。その中に、見覚えのある顔があった。


近所の交番の警察官だった。これまで何度も、シーフが現れる時間に合わせてパトロールしてくれていた人物だ。


「あ……長澤さん?」


すぐに気づき、声をかけてくる。


尋志は軽く頭を下げた。


「すみません、勝手なことをしてしまって」

「でも、自分で掴んだ証拠で、自分で捕まえただけなんで……」


すると警察官は、穏やかに頷いた。


「そうですか。無事で良かったです」「今回は仕方ないですよ」


その言葉に、少しだけ肩の力が抜けた。


だが、もう一人の警察官は違った。


以前、シーフの妻の実家付近で顔を合わせたことのある若い警察官。

先に入ってきた警察官が、無機質な口調で言う。


「そっちの聴取、お願いします」


そしてすぐに、後から来た警察官が、尋志へと向き直った。


「名前は?住所は?電話番号は?」


(またか・・)


「あのさ……俺、犯人じゃねぇからな」


思わず声が強くなる。


警察官は一瞬だけ首をかしげ、そして思い出したように言った。


「あ……こないだ会いましたね」


その態度に、尋志も里美も、苛立ちを隠せなかった。


やがて一通りの確認が終わり、シーフは署へと連行されていった。その途中、長澤家に立ち寄り、犯人と共に現場の写真撮影が行われた。


その様子を見ながら、尋志の中で以前より考えていた一つの決意が固まっていく。


——行動に移すか・・


その後、長澤夫婦も署へ向かい、深夜まで調書作成に協力することになった。


だが、この出来事は終わりではなかった。


シーフの悪行は、まだ続いていた。


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