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Thief  作者: がねちん
13/20

第十三話 距離が消える時

本作品は実体験をもとに構成していますが、プライバシー保護および演出のため、登場人物名・設定・一部の内容を変更したフィクションです。

ツツジが花開く頃


尋志は、ついにシーフと接触する決意を固めた。


タイミング、話し方、最初の一言――頭の中で何度もシミュレーションを繰り返していた。

その準備は、すでに始まっていた。


去年の暮れ。尋志は、ある頼み事のために後輩と会っていた。


八月、シーフが現れた際に撮影した顔写真。それをもとに、一枚のチラシを作成していた。


――この男性を探しています――


あえて「犯人」や「事件」という言葉は使わない。人探しの形式にし、連絡用のスマホを一台専用で用意した。


この番号に電話が来る=事件に繋がる。

そんな仕組みだった。


掲示板への掲示許可も取っていた。だが、交番の反応は微妙で、一旦保留にしていた。


まず、シーフの部屋の様子を確認する。

車はない。

だが、部屋の明かりはついている。


確証はない。

それでも――行くしかない。

インターホンを鳴らす。


尋志は階段で待機し、里美が先に出る。威圧感を与えないための配置だった。


ピンポーン。


現れたのは、シーフの妻・紗梨。

突然の訪問に、明らかに戸惑っている。


しばらく里美が対応し、タイミングを見て尋志が降りていく。


「突然すみません。少しお聞きしたいのですが――旦那さんはご在宅ですか?」


「今は出かけてますが……もうすぐ帰ると思います」


不安そうな視線。

尋志はチラシを差し出した。


「この男性を探しています。旦那さんに似ていませんか?」


紗梨はしばらく黙り込む。


「……似てるかもしれないけど、ちょっとわかりません」

「でも、腕の形は似てるかも……」


動画も見せる。反応は、やはり曖昧だった。

だが――

表情が、少しずつ変わっていく。


「この話は、一人で抱えられるものじゃありません」


尋志は静かに言った。


「今すぐ、お母さんに電話してください」

「三十分後、ご実家で話しましょう」


三十分後。

紗梨と母親は、すでに待っていた。


「旦那さん、せっかちそうですね」

「探しに来るかもしれない。時間がない。話を始めましょう」


ご近所にバレないよう配慮し、玄関の中へ入り、尋志は経緯を説明した。


紗梨は驚きながらも、どこか納得している様子だった。

――思い当たる節があるのだろう。


その時、母親がぽつりと口を開いた。


「あの子ね……うちが許可してないのに、うちの苗字を名乗ってるのよ」


その一言で、空気が変わった。


尋志は、わずかな違和感を覚える。

(アイツ……まさか?)


話が進む中、紗梨のスマホが何度も鳴る。


おそらく、シーフだ。


時間がない。確認すべきことは、まだある。

その時だった。


一台の車が、猛スピードで近づいてくる。

尋志は直感した。


(来たな……)


尋志と里美は、ついに対面する。

諸悪の根源――シーフこと、渡邊一義。


彼は、何を語るのか。


そして――尋志の懸念とは。


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