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名を探している。※

桃太郎視点第1弾はこれにて終了。

早めに更新出来たことに、心の底からほっとしています。

 あれから、五年。


 私はあの暗闇とは程遠い、明るく楽しい毎日を過ごしている。


 あの暗闇から救い出して、私にこの日々をくれたのは母上だ。


 母上はとても格好よくて、逞しくて、綺麗で、可愛らしい人だ。

 

 父親も母親も早くに亡くし、村から少し外れた場所に一人で住んでいる母上。


 生活に余裕なんてあるわけがないのに、私を捨てずに育ててくれた。

 美味しいご飯に、暖かい寝床。

 なにより、一人じゃないこと。


 母上が私にくれたのは、あの暗闇の中で私が無意識に望んでいた全てだった。


 私は母上に何が出来るのだろう。


 この恩をどうやって返していこう。


 一度、私が母上にその気持ちを伝えたら両頬を摘みながら思いっきり伸ばされて、


『ガキがそんなこと気にしてんじゃない!アンタは可愛い可愛い私の子なんだから、全部当たり前に受け取ってりゃいいの!』


と、不快そうに言われた。


 可愛い可愛い私の子。


 そう言われた時、本当に嬉しかった。


 母上は私を拾ったことで失ったものは決して少なくはなかったはずだ。


 それは、私を育てるために距離を置いた村の者達との人間関係だったり。

 ……将来を共にする、夫だったり。


 たくさんのものを犠牲にして、私を育ててくれた母上。

 愛されてることはちゃんと分かっていたけれど、同時に憎まれていると思っていた。

 お前さえいなければ、と。


 でも、私の子と言ってくれた母上にそんな感情は欠片もなくて。


 嬉しくて、嬉しくて。


 涙が出るほど、嬉しくて仕方がなかったんだ。








 


 嬉しくて嬉しくて仕方がなかったその言葉に、黒くて汚い感情が混ざるようになったのはいつからだったか。



 可愛い。

 そう言われる度に、少しの嬉しさと共に感じる悔しさと怒り。


 私の子。

 そう言われる度に、全てをめちゃくちゃにしてやりたいと思う激情。



 自分の心の中に湧き上がるこの感情は一体何なのだろう。


 この感情の名を、私はまだ知らない。


 



ありがとうございました。

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