7話 口車
「勇気と無謀は違うぞ、躾だ」
「ウッガァァァァ!」
敵わぬ敵に、死ぬと分かっていて挑めるか、それは生存本能を無視して死後を生きる矛盾した人生、それを可能にするのは生物学の分野ではない、意志だ、意志は本能を凌駕し、理性は野性を凌駕する。
「自殺とは自分に負けて自分に勝つこととも言い換えられる、それが物理的でも心理的なものでもね、人生はな、整理整頓と娯楽を詰め込む箱なのだよ、その箱は段ボールのやつもいればリュックサックやカバンのやつもいる」
「クッ殺せ!」
「まぁ聞けよ、もしかして馬鹿に説教だったか?まぁ馬に念仏唱えるよりゃ聞ける耳があんだろ?」
「ウッガァァァァ!」
「分かった分かった、長ったらしい説得や遠回りが嫌いなら素直に言うよ、嫌だねぇ!お前には利用価値があるんだ、あと君、舌嚙みちぎりったりして自殺とかさせたりしないからね?」
「ッッッ」
「弱肉強食ってのを理解してる?自分の信念を貫いて、将又信仰に従って、総合して損得利益の為に君は殺せと俺に煽って来たんだ、君はねぇ、本来ならば凌辱し、拷問し、プライドを圧し折り、自尊心を徹底的に踏み躙り倒されても良い立場、敗北者に成り下がったんだ、良いか?よく聞け、お前は今から俺に利用される駒に成るんだよ、植民地化されたんだからな」
「、、、」
そこからコニファーグループ全員は。
「やぁ、村雨くん」
「、、、何をした、こいつらに」
「人質、全力で掛かってこなきゃ、どうなっちゃうんだろ〜なぁ」
「けるな」
「あぁ?声が小さくて聞こえ」
「巫山戯るなって言ってんだ!」
「いいじゃねぇか、初めからその声出しとけや!」
瞬間、村雨の肉体に赤黒い血管が浮き出る。
「はぁ、はぁ、はぁ、っぐ(苦しい!熱すぎる!だが実感するもんが有る、それは力、ただ力!良い、素晴らしい!狂化ってのはこうも凄まじいものかぁ!)あは、あははははは!ぶっ殺してやるよ」
〔狂化〕理性はとっくの遠に吹き飛んだ、生存本能に忠実に従い自然の摂理を感覚的に理解した野性、野生の勘も過ぎ去った、今あるのは蟠を巻く様にして顕現したる本来は封印せねばならぬ狂気に呑まれ狂乱と化すもの、言うなれば。
「はぁ〜、、、今俺に有るのは、ラーテルの魂だ」
「お前ら全員に宿るラーテルは、随分と我儘なようだ」
死を厭わぬ特攻、それは生物に絶大な力をもたらす。
「本来ならば肉斬骨断とでも言うべき限界突破の技なのだろうがなぁ」
ガシ、堂嶋が村雨の足首を小指で掴みあげる。
「ウッガァァァァ!」
「どうしたって勝てないレベルが有る」
〔狂化〕それにより上限が解放、本来の限界値よりも更なる力が引き出せる。
〔捨身〕命を燃やす程の玉砕覚悟の精神性が自身により強力な理性の箍が付けられて狂化により発生するありとあらゆる生命体への強烈な殺意や殺戮衝動を抑制しながら更に効果的に狂化を運用する。
「お前では俺には勝てんぞ」
「そんなの分かってんだよ!分かった上でやってんだ、聖火の如く受け継ぐんだよ!」
灯滅せんとして光を増す、命の灯を前借りしたそれは一気に光を増していく。
「あぁぁぁ!」
「背水の陣ってやつかぁ?死ぬまで不退転を気取る気か?」
ビィン!強めのデコピンを額に受けた村雨は意識が刈り取られていた、全身の骨にヒビが入り筋肉でなんとか押さえつけ、筋肉が壊れた箇所を骨で立っていた。
「、、、」
「うぉ、良いね、さっきの奴らとはまた違う」
睡眠時遊行動とでも言うべきか、無意識のそれが立ち上がる、そして夜驚症とでも言うべきか、暴れ出す。
「(ただ無作為に体を操縦するで無く、部位に分けて動かしてる、キレてる部分は出血を抑えるために固め、折れた骨を補助、壊れた筋肉は骨が引っ張る、腹などを据えた体軸ではなく全身の関節を軸に現在進行形で最も合理的なやり方で動いてる)」
本来は疲弊疲労に尽くし、倒れ込んでも全く問題ではない程に全霊を出し尽くしていた、だがしかし出涸らしを絞るが如く、もう何も残っていないところから、さらに魂を削り取って力に変えるような、枯渇した後の残酷な一撃を放っていた。
「、、、グガァァァzzz!」
「(寝息に合わせて腹圧を上げた、発勁)むず痒いなぁ、痛くはないが痒いくらいだ、小指の先がなぁ、まだまだこんなもんか?」
最適化と同座に限界値を上げ続ける〔荒れ狂う進化の濁流〕とでも呼ぶべき無意識の村雨、しかしながらそれでも尚、小手先の児戯に過ぎない、付焼刃でしかない。
「あぁぁぁ!zzz」
そのものの見ている夢、処理されている記憶もまた闘争、寝心地などと言う暇はない、寝言には相手を超える為の理想が見えていた。
自分が粉々になることを受け入れて、一矢報いること、破滅的な一撃、だがしかし、だがしかし、だがしかし無駄に過ぎる。
「調子に乗るな、最後の一滴まで使い果たした先、体力も、気力も、血液も、寿命も、その自分を構成するすべての資源を、その一打のためだけに注ぎ込めよ」
伝統は武術に於ける型の様なもの、正史を語るに至って最適なルートだから文化に成り文字が刻まれて失敗は轍、それはレールとして脈々綿々と聖火が注がれているのだ。
「貫き通すその心意気自体に意味が有るのだから、自分はさ、型破りは、悪ではないって思ってんだ、良いものとして完成したものをそのままにしておくのは怠慢だぜ、ソシャゲで新キャラが馬鹿スカ登場して自分の大好きなキャラがインフレに呑まれていくなんて見たないから、否定したいから様々なものを試して上げていく、違うか?、、、ありゃ?起きてる?」
「、、、」
その男は立ったままほぼ死にの瀕死で気絶していた。
「不殺を誓ったからな、ふん!」
それはあの夕暮れ時、鳴く日暮を真似たもの。
ポコロポコロカツ、ピィーン!骨組がズレて下半身不随になってようが瀕死の重体だろうが、マラソンランナーとしてデスマラソン1万kmを走り切った後に世界最高峰の山を登頂出来るくらい過剰元気にさせられるほどの手解きをする。
「ゆっくり休めや」
「、、、」
、、、。
「嘘だろ、あれだけやってまだまだ余裕ってか?殺さない手加減どころか回復すらしてやがる」
「ですがまだまだ群勢は居ます、彼1人では無茶なのですよ」
、、、。
「あははは!死ねやカスが!」
そいつは自分中心に世界が回ると、そう勘違いしていた。
《己身御供》そいつは自分に自分を捧ぎ、自己のために自己犠牲する自己中心的愛想、他者への嫌悪感や不快感が自身への自己愛を高め、自己愛は更に先へ自身を進めパワーやスピード、耐久力も自分以下のカスが投げかけたものなど、食らったうちには入らないと断じ、プラシーボ効果であらゆる能力値が上がり続ける。
だがしかし、理解してしまうと、井の中に囚われてしまう、落ちてしまうのだ。
「ん〜、送信っと」
「有り、、、得ない」
手も足も出ない、堂嶋と言う存在に対して恐怖心すらもはや機能しない程の高み、怖いとか怖くないなんてのはそう言う概念が適応可能な範疇、くだらぬホラーなんだと。
スマホを片手によそ見やノールックなんてものじゃない、視界の端くれにギリギリ入れて小指で戦う。
「(なんだこいつは、意志が、意中が読めない、無気力なんだ、相手にしてる奴をゴミだとすら認識してない、だから読めないんじゃない、初めから何か関心を向ける次元にすら達してないんだ!)」
「ん〜モスキートーンがうるさい」
スパァン!堂嶋に小指で地面に適当に叩きつけられ男は瀕死で気絶する。
《唯我独尊》堂嶋の無関心・無気力レベルでも常に発揮される精神性の様なものでしかない特徴、己身御供に加えて、相手に恐怖心を付与、緊張感により速度、判断能力、集中力を削ぎ、技術力も低下、筋肉に上手く力が入らずパワー低下、、、言うなら全能力値を恐怖心により低下させるおまけ付き。
「格上だとか格下だとかの次元じゃねぇ!あの自己中野郎が一撃とか、意味分からない!あの堂嶋とか言うやつはなんなんだ一体!」
恐怖心が伝達する、空気は一気に呑み込まれ堂嶋のフィールドと化していく。
「(恐怖が場を支配したっ!?)」
「いつまで幻影なんぞ追ってやがる、お前ら如きが解釈して咀嚼可能な領域なんぞじゃあ無いぞ塵芥」
ドガァーン!堂嶋がスマホをポッケに入れ目をカット開く、瞬間一瞬にして大量の群勢を倒さないように手加減しつつ倒し尽くす。
、、、。
「なんて言う強さだ、精神的な圧力すら勝てずに倒れていった、気絶しただと?有り得ない」
、、、。
「(気体じゃない、物理的な打撃媒体に過ぎない!)オラァ!うぼ!?」
スパァン!音速の移動、キックで音の壁を蹴り打撃もまたその壁を当たり前に打ち破り身体が動くより更に速い!だがしかし、その拳は当たり前に堂嶋には届かない。
「余りにも遅いな、平均値が上がって雑兵が多少は強くなってるかもしれないがさっき戦って俺が遊びで回避した速拳君やグループ一つコニファーグループの方が楽しかったなぁ!」
コイントスの如く親指で宙に吹き飛ばし、敵は舞う。
「う〜ん、もっと、もっと来てくれなきゃ、本来なら見ることも、見上げることも許されぬ禁忌の不可侵域の俺とお前らカスは、絶対に超えられない壁があるんだからよ、歩く道を邪魔すんだったら、多少は何か発見を俺によこせよ蚊柱どもが」
普通のやつが1つを覚える間に1万を覚える、そんな才能があるとしよう、10万のやつや100万のやつすらいる、堂嶋はと言うと、そんなステージではない。
「初めから全てを兼ね備えて尚且つ上がり続け他者との格の違いが在り続ける、それがやつだ」
態々覚える必要すらない、自分の意思が全てだった、自分が欲さずとて相手以上が手に入ってしまう、態々真似るまでも無く”堂嶋の象形拳”本人が本人を本人以上に真似るだけで全てが堂嶋の想うがままに行くのだから。
「才能なんて概念は捨て去らなければあいつに勝ち目なんか無い」
「ッッッ!?」
人間は限界になると笑えてくるらしい、声が出ないでは無く、それすら忘却と化して狂うのだとか。
「笑えるよなぁ!楽しめる余裕がある奴が真面目にやらなきゃ出来ない奴より強い、そうだろう!うぼ!?」
狂笑う者どもの髄に刻み付ける。
「俺を前に狂う余裕すらもはや無いと思えよ、死なせない手加減を有り難く感謝していろ」
灰色になった髪が風に棚引いた。




