再起の金色
こちらの小説は資料集め(名称、文化、世界観の参考)及び誤字脱字チェックにAIを利用しております。
ご注意ください。
木枠の窓から朝日がこぼれ目を覚ます。
毛布に包まったとはいえ、固い床で寝たせいか体が強張る。
「~~っ! あ~、朝か」
あくびをしながら体を伸ばし目を擦る。
水差しから重ねてあったコップに水を注ぐと一気にあおった。
「ふう、昨日のだるさももうないな」
簡単に体を動かしてみるが、完全に回復している。
魔力も問題ない。
一通り調子の確認を終えたのでベッドに視線を落とす。
起きてくれることを期待して自然に音を立ててみたが、ベッドの2人は起きる気配がない。
「まあ、仕方ねえか」
神聖サクア教国からここまで来たんだ。
馬で来たとしても2週間以上は旅をしてきたことになる。
「箱入りの聖女様にはきつかったろうな」
黒パンの食べ方さえ知らないお嬢様。
その道中はさぞ大変な思いだっただろう。
「異国の街中で、暴れまわるようなこともしないだろうし。数日はここで休んでおいたほうがいいかもな」
とはいえ、俺の貯金的にも1週間後には何か稼ぐ当てがないとやっていけない。
次の目的地がどこになるにせよ、資金を増やす手段については何か決めておきたいところだ。
2人が目を覚ましたらおやっさん交えてそこも相談すべきだろうか。
「ひとまず、食堂で朝飯でも食ってくるか」
まずは空腹を満たそうとドアを開けたところで、ジャラジャラと聞きなれた金属音が近づいてくる。
階段を上がってきたおやっさんは、いつもの宿屋の主人姿。
手には朝食のサンドイッチが乗ったプレートを持っている。
「やあ、起きたようだね。朝食の準備ができたから持ってきたよ」
「持ってきてくれたのか」
「君はともかく、聖女様たちはあまり人に顔を見られないほうがよさそうだからね」
それもそうか。
俺はくるりと反対を向くと椅子に腰かけサンドイッチを受け取った。
昨日の夕飯じゃ足りなかったことを察してかほかの2つと比べると2倍ぐらいの大きさだ。
「君としては何かやりたいけれど、起こしてしまうのも気の毒ってところかい」
「まあ、慣れない旅路、それも敵に追われながらの逃走劇ってんだからな」
残り4分の3ほどになったサンドイッチを再び頬張る。
欲張りすぎたせいでうまく吞み込めず、思わず胸をたたいている俺に、おやっさんはコップをそっと差し出した。
「起こそうとしてわざとやっているのかい」
「……そんな事ねえよ」
本当にそんなつもりはなかったのだが。
金色がゆっくりと起き上がる。
「おはようさん。起き上がれそうか」
「……おはようございます。ダルヴィン殿」
温泉で会った時と比べるとずいぶんとしおらしい態度の金色に、あっけにとられる。
「殿って、急にどうしたんだ」
「どうしたといわれましても、命を救われた相手に礼を尽くすのは当たり前では……?」
居心地の悪そうな俺と、心外だと言いたげにこちらを見つめてくる金色を見て、おやっさんはくつくつと笑う。
「ダルヴィン、君はもう少し自分のやったことが他人にどう影響するのかを考えたほうがいい」
「……?」
「なるほど。トリーテ様も大概ですが、あなたもなかなかのようですね」
いったい何を指摘されているのか分かっていない俺を挟んで目配せを送りあうと、おやっさんはやれやれと言わんばかりに両手を肩ぐらいまで上げ、金色は不満げにため息を吐いた。
「そういえば君は寝ていたからまだ自己紹介していなかったね」
「こちらこそ、ご挨拶が遅れて申し訳ありません」
金色は少しふらつきながら立ち上がると優雅に一礼した。
「改めまして、サクア教団聖女近侍、ペルティ・ティオです。昨日はご助力いただきありがとうございました」
「いやいいんだ。何せあなた方をここに招いたのは私だからね」
金色はそのまま倒れてしまうんじゃないかと心配になるような勢いで顔を上げた。
「ヒーロの赤屋根店主、カウポルス・ヒーロです。また、以前はサクア教団にて大司教を務めておりました」
おやっさんは普段とは違う、どこか格式ばったお辞儀で返す。
「あなたが、カウポルス大司教様」
「こんな姿ですまないね、あまり噂になりたくないのさ」
「それは、そうでしょう」
元大司教と噂になれば、どうなるかなんて想像するまでもない。
ましてやここは治療目的で温泉に浸かろうとする人であふれかえった観光地だ。
「なあ、その大司教様が作ってくれたサンドイッチ、あんたも食わねえか」
そのまま立ち話に興じてしまいそうな金色のため、椅子を引いたところで、腹の虫の鳴く音が聞こえてくる。
思わず視線を向けてしまうと恥ずかしそうにほほを赤らめた金色が目に入った。
「……いただきます」
「これからまだまだ先は長いんだろ。飯食って体力つけなきゃな」
恥ずかしさからかちびちびと食べる金色。
聖女様はまだ起きそうにない。
金色が食べ終えたら、起こしてもらうか。
すっかり昇り切った朝日を浴びながら、背もたれに体重を預けた。




