聖女の思いと傭兵の夢
こちらの小説は資料集め(名称、文化、世界観の参考)及び誤字脱字チェックにAIを利用しております。
ご注意ください。
朝の香りと遠慮がちに体を揺さぶる感触。
何度か名前を呼ばれている気もいたします。
昨日は2回も大規模な治癒術を使ったせいか、眠気が張り付いて中々拭えません。
「……ペルティ?」
「トリーテ様、そろそろお目覚めください」
「ペルティ!」
朝日が目に入り、少し頭が働き始めたことで気が付きました。
ペルティが起き上がって、優しく体をゆすっている。
いてもたってもいられず、抱きついてしまいました。
「トリーテ様。また、感謝しなければならないことが増えてしまいました」
予想通りの反応だったのでしょう。
ペルティは勢いよく抱きついた私を難なく受け止めました。
「それは私のセリフです」
「ふふ、それではまた、お互い様ですか」
「ええ、そうしましょう」
十分にペルティが元気なことを確かめると、そっと離れる。
何かを言いたそうにこちらを見ているダルヴィン様と目があった。
その隣にはカウポルス様も座っている。
「おはようございます。ダルヴィン様、カウポルス大司教様」
「おはよう聖女様、できれば普段は宿屋の主人として扱ってもらえるとありがたい」
「おはようさん。よく寝れたみたいだな」
思いっきり伸びをして、眠気を払いたいところですが、殿方の前でははしたないでしょうか。
口を右手で隠しながら小さくあくびをする。
「朝飯をおいておくから食べ終わったら書斎へ来てくれないか。今後の話をしよう」
「はい、何から何までありがとうございます」
「宿屋の店主だからね、これぐらい当たり前さ」
カウポルス様はすくりと立ち上がるとジャラジャラと音を立てながら部屋を後にする。
テーブルの上を見ればサンドイッチが1つ残っていた。
「もしかして、寝坊してしまいましたか」
「トリーテ様、寝坊ではございませんが、朝のお祈りの時間はとうに過ぎてしまっております」
私はどうやら寝坊してしまったようです。
そういえば、ここにくるまでお祈りを捧げる暇さえなかったように思います。
用意してくださったサンドイッチを食べたら、お祈りの時間にいたしましょう。
ところで、ナイフとフォークはどこにあるのでしょうか。
起き上がったものの、テーブルの前できょとんと何かを探している聖女様に金色が手づかみで食べるものですと教えてからしばらく経ち。
日が高くのぼり、もうお昼になろうかという頃、聖女様はようやく祈りを終えた。
コンコンコン
昨晩招かれたおやっさんの書斎のドアを叩く。
最初は私室かと思っていたが、よく考えればベッドもなければタンスもなかった。
「お待ちしておりました」
「やっぱりその格好なんだな」
やはりというべきか、おやっさんは大司教としての服装で俺らを迎え入れた。
「カウポルス様、改めて昨日はお力を貸していただきありがとうございました」
「いや、礼を言われるほどのことではございません。そもそも私の元へ訪れるよう願ったのですから」
「それでも、来たのは私の意思でございます」
部屋の入り口付近でドアを開けた側と訪ねた側がどっちが感謝を伝える側か押し問答をしている。
教団のお偉いさんはこんなことばかりをやっているのだろうか。
行く先々で頭を下げあう見るからに高貴な身分とわかる服装をした一団を想像し、思わず笑いが溢れる。
「もうお互いにありがとうでいいだろ、さっさと次の話に行こうぜ」
「それも、そうですね」
「では、そうしましょう」
2人は同時に謝辞を述べて一礼するとようやく部屋の中へと進む。
「なあ、教団のお偉いさんって全員あんな感じなのか」
「そうだったら、良かったのですが。あの御二方は善性と卓越した技量で今のお立場に就かれた稀有な存在なので」
聖女様に続き、昨日座った席へと再び座る。
ゆったりとした楕円形のテーブル、席は5つほど空いているが聖女近侍という立場ゆえか、金色は座らずに聖女様の後ろに控えている。
「さて、まずは私が掴んでいる情報と聖女様がたをお招きした理由についてお話しよう。入ってきてくれ」
ようやく話が進むのかと思った矢先、おやっさんが誰かを招く。
書斎の奥のドアから仕立てのいい執事服を身につけた青年が現れた。
「彼はパーキーシー・デルフィクス、プラルドゥー山脈の向こうにある国から来た」
「ハジメましテ」
遠い国から来たからだろうか。どこか聞きなれない訛りが混じっている。
「ワタシ、故郷ハ魔術使えル人少なイ、だカら科学、発展させてきタ」
「かがく……?」
「そウ、魔術使わなくテも炎起こし、水運ブ」
「魔術なしで炎を……?」
火打石と枯れ草、木の棒なんかがあれば火を起こすことはできるだろうが、炎と呼べるような大きな火を起こすとなると、それはもはや災害ではないだろうか。
「炎使テ、鉄の玉飛ばす道具、作らレた」
「それは……!」
後ろで控えていた金色が思わず口を挟む。
「だろうな」
「知テいるか」
「なんせ、そいつのせいで死にかけた奴がいるもんでな」
金色を親指で指し示す。
金色はその時の恐怖からか、震えを抑えるように自身の肩を抱いた。
「なるほど、すでにそこまで浸透しているのか」
魔術なしであれほどの脅威となる武器を作るとは。
かがくってのも侮れないものらしい。
「ほんラい、科学は生活豊かにするタめ。銃も狩リ道具」
「銃ってのがその武器の名前なんだな」
「でモ、いつのマニか人に向けル、当たり前」
それから、パーキーシーは必死に山の向こうで何が起きたか語り出した。
10年続いた戦争、滅んだ国も2桁にのぼり、死体も山のように積み上がる。
凄惨な過去。
「そしテ、次はこっち側二向かっテ来る」
「いや、なんで神聖サクア教国が手を組んでるんだ? そもそもあの国はプラルドゥー山脈に近いってわけでもないだろ」
「航路、開拓さレた。ワタシも船で渡タ」
確かに、教国は海に面していた。
だが、なぜ言われるがままに迎え入れて手を組んでいるのか。
「そういう、ことだったんですね」
先程まで黙っていた聖女様が、悲しそうに口を開いた。




