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24話 眠れる森の美女(前編)

(ーーあれ?わたくしは一体……)


確か、荊で囲われた屋敷に着いた直後。それからの記憶がない。


(あ、あら?なんだか身体がーー)


身体が思うように動かず、来夢は慌てる。

視界にティアラを付けた美しい女性が入ってきた。


「あら、ライムは元気ね。わたくしも嬉しいわ」

(う、嘘ーー!?)


煌びやかな部屋に取り付けられた鏡に映った姿ーー今の自分は赤子になっていると気付かされる。


「今日はライムの誕生パーティよ」


王妃らしき女性は隣の王様らしき男性に声をかけた。


「まさかあのカエルに言われた通り、本当に女の子が生まれるとはな」

「今日は貴女に祝福を授ける為に国内の魔法使いたちを12人も招待してるの」

「おいおい、ライムはまだ1歳だぞ。そう言ってもわかるものか」


しかし、我が子に語りかける妻が微笑ましくはあるのか、冠を付けた王様は笑みを浮かべている。


(待って、待ちやがれですわ!)


つられて笑っている場合ではないが、鏡の中の自分は笑ってはしゃいでいる。


(落ち着きなさい、わたくしーーカエルの予言、12人の魔法使い……。眠り姫の物語ソネットかしら?)


王妃たちが喋っていた内容から、物語ソネットを導き出す。


(いえ、落ち着いている場合かしら!?)


自分が知っている眠り姫の今後の展開。姫は突如現れる13人目の魔法使いに呪いを授かってしまう。


(展開がわかっているのに、どうすることも出来ないなんてーー)


王室の扉をノックする音。入れ、と王様が声をかけると、近衛兵が入ってくる。


「パーティの準備が整いました。招待した魔法使いも12人、揃っております」

「うむ。行こう、我が妻よ」

「ええ」


(こ、このまま呪いをかけられるのを待つなんて、あんまりですわーー!!)


◆◆◆


来夢は王妃に抱かれたまま、祝宴の席に招かれた12人の魔法使いの姿を見ることになった。


(! 綺羅々さん……!!)


12人目の魔法使いの席に、綺羅々が座っている。綺羅々はまさか来夢が赤子になっているとは思わず、気付いていないようだ。

長々と祝辞を述べた王様が、手にした盃を上げる。


「ーー乾杯!」

「ーーふふ。どうしたの?手を伸ばして。気に入った魔法使いでもいるのかしら?」


王妃に抱かれ直された。綺羅々がこちらに気付く様子はない。


(綺羅々さんが12人目の魔法使い……)


もし、これで12人目の魔法使いが来ていない展開であったら絶望的であったが、まだ救いはあるようだ。

金色の皿で食事をする12人の女魔法使いたち。彼女たちは食事を終えると、次々と王妃の前に参列した。赤子の来夢に祝福を贈る為に。


「では、私からは徳の贈り物をーー」

「ーー私は美の贈り物を」

「私からは富の贈り物を……」


来夢は赤子の身で贈られてくる魔法を次々と受け取ることしか出来ない。

早くも、12人目の魔法使いの綺羅々が王妃の前に跪こうとした、その時。

室内の扉が乱暴に開かれ、その音に皆が振り返る。


「ーーどーうしてー、私だけが呼ばれてないのかしらー?」

(なっ……!?ぶ、ブラックローズさん!?)


別れて久しいブラックローズが、黒ずくめの魔法使い衣装に身を包んでこちらを睨んでいる。どうやらブラックローズが13人目の魔法使い役のようだ。


「ふーー私からもその小娘に、祝福を授けてあげましょう。王女は15歳になると、紡ぎ車の錘が指に刺さって死ぬわ!」


13人目の魔法使いーーブラックローズが叫ぶと、黒い靄が赤子の来夢の身体を包んで拡散した。


「私だけをパーティに呼ばなかった報いよ!ざまぁないわね、あははは!!」


高らかに笑い声を上げ、ブラックローズは静まり返った室内からブーツの踵を鳴らして出ていく。


「ーーい、一体どうすれば……!」

「待って!あたしがまだ魔法かけてないってば!」


我に返り狼狽える王妃の目の前で綺羅々が手を挙げる。綺羅々は手にした杖を掲げ、宣言した。


「この呪いを取り消すことは出来ないけど、呪いの力を弱めることが出来る!王女さまは死ぬのではなく、100年間眠り続けた後に目を覚まします!」


(綺羅々さんナイスーー! ですが、100年!?100年も眠ってしまうのかしらわたくし!?)


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