22話 勝負の行方
先手を取られ、僕は瞬時に利き手の剣を振るい相手の剣撃を防いだ。あぶないあぶない。相手は本気だ。
「む。やりますね」
襲撃が上手く決まらず、相手は不服げに眉を顰めた。
僕より身軽な相手は次々と刃を繰り出してくる。けど──どれも剣撃が軽い。受け止めさえすれば押し切れるものばかりだ。
相手は異世界で魔物相手に戦ってきたんだろうけど、僕だって物語相手に剣を磨いてきたんだ。最初は手加減しようと思ったけれど、相手の瞳は少しでも隙を突こうと真剣だった。
僕だってプライドはある。ここで、女の子に負けてなんかいられない。
「守りばかりですね。攻めを見てみたいです」
「言ったな……!後悔しても知らないよ!」
軽い刃を押し除けてお互いに距離を置く。僕が真っ向から両手を振り下ろし切りかかる。相手は正面から受け止めた。
「っ……!」
僕の刃を受け止めた相手の体勢が膝を中心に崩れる。押し除ける力が足りず、相手は身を引くことで刃を避けた。
「はあっ!」
間髪入れずに畳み掛ける。相手は刃を避けるのに必死になった。僕の刃が掠めて銀色の髪が数本宙に舞う。
「ふっ、ざまぁないわね!」
「それ、外野が言うセリフですの?」
ブラックローズさんと来夢ちゃんが外野で会話をしている内に、形勢は逆転して僕が優勢になっていた。相手に焦りが見える。女の子相手に本気を出しすぎたかな。どうしよう。引くに引けない。
「っ!ホーリージャッジメント!」
「うわあっ!?」
攻めを止める頃合いを見計らっていたら、相手の片手から眩い光が放たれた。剣技の最中に魔法ってそんなのアリ?!
「──ホーリーホワイトさん、それはちょっと反則じゃないかなぁ。鵜久森さんは魔法が使えないんだけど」
ましろくん、ナイスツッコミ。
「っ……。すみません。貴方を甘く見過ぎていました」
息を切らして相手──ホーリーホワイトちゃんは刀を鞘にしまい、頭を下げた。
確かに、僕には迫力があるとか威厳があるとかそういう風には見られないけど、だからって甘く見られると傷つくって言うか……。
「危なかったわね。人間だから無傷で済んだけど、魔物だったら今ので滅んでたわ」
「そんなにすごいんだ、今の技……」
ブラックローズさんの解説に綺羅々ちゃんが驚きを隠せない。
え。そんな技を僕に向けて使ったの?僕もびっくりだよ。
「──約束だよ。小瓶の封印を解いてもらおうか」
ましろくんも外野から見ていただけなのにちゃっかりしている。
「……はい」
ホーリーホワイトちゃんはしゅんとしつつも掌の小瓶に魔力らしいものを通す。淡い光が集まり、パッと弾けて消えた。
蓋を開けると、虹色の光が溢れ、光の玉となりブラックローズさんの胸元に吸い込まれる。
「ああ、私の!聖女の力が戻ってきたわ!」
ブラックローズさんは力が戻ってきた喜びで数回飛び跳ねた後、気合いを入れて結界をその場に張っていた。
「試しに切り付けてみなさい」
言われるがまま、僕は結界に向けて双剣を振り下ろした。刃が通らず、ブラックローズさんの手間で弾かれる。
「ふっ。コレが聖女の力よ」
『結構優秀なバリアだね。どうだい、アーバン・レジェンドに入らないかい?』
「昨日も言ったけどお断りよ。次は元の世界に戻る方法を探します」
ブラックローズさんが物語退治に居れば、綺羅々ちゃんの安全とかで色々楽出来ることもありそうなんだけどなぁ。本人が嫌なら仕方ないや。
「おや。それは当面、無理だと思いますよ」
ホーリーホワイトちゃんがブラックローズさんに声をかけ、ブラックローズさんから笑顔が消えた。
「なんでよ?」
「私も、いつか帰る為に色々と試したのです。しかし、帰るゲートは見つからず……。今に至るわけです」
「ちっ……!」
ブラックローズさんの視線の先にはましろくん。ましろくんは手を振って断っている。
「ああ、先に言っておきますが、流石に異世界のゲートを探せっていう依頼はムリですからね!最初から断っておきます。あっ、今回の依頼は鵜久森さんが解決してくれたので、報酬は鵜久森さんに渡してください」
「え?!僕に?」
幾らになるんだろうとワクワクしながら手を出すと、ブラックローズさんが一万円札を手渡してきた。
「聖女の力、イコール一万円……」
「月影ましろがまけてくれたのよ。思わぬ収入なんだから、いいでしょ」
ばつが悪そうにブラックローズさんはぷいっとそっぽを向く。
「……一緒に帰りませんか、野薔薇さん」
「嫌よ。私を裏切った教団なんかに、誰が帰るもんですか!」
そうですか、とホーリーホワイトちゃんはブラックローズさんを一瞥し、僕たちに背を向ける。銀髪のポニーテールがふわりと靡いた。
「また……、近いうちに召喚の儀が始まると思います。その時はよろしくお願いしますね」
今回、彼女が僕に挑んできたのも小手調べも兼ねてのことだろう。ああ、僕も魔法剣とか、ましろくんに手伝って貰わずに自分で出来たらカッコいいのになぁ。
「おつかれ!カッコよかったよ、うぐ!」
「ほんと!?」
綺羅々ちゃんから癒しの一言が貰えて、僕は天にも昇るような気持ちになった。僕にとっての聖女はやっぱり綺羅々ちゃんだよ。
ここのところあまり良い見せ場がなかったから嬉しいなぁ。
僕は双剣を十字に振って風を切り、鞘に収めた。
よーし!これからもパーティのアタッカーとして頑張るぞ!




