21話 聖女ホーリーホワイト
「それ……! 私の聖女の力!!」
「悪い癖ですよ、野薔薇さん。話しは最後まで聞かないと」
小瓶に手を伸ばすブラックローズの手をホーリーホワイトは軽々と避ける。
「この小瓶には私の力で封印が施されています。それを解かなければ割れません。──議会を開いて可決したりで持ち出すの、結構大変だったんですからね」
「アンタたちが勝手に私から取ったのが悪いんでしょうが!!」
「野薔薇さんがワガママで仕方なかったと聞いたのですが」
「私は私の力をあんな触手うねうねした怪物を召喚する為に使いたくないって言っただけじゃない!!」
「別に私も触手うねうねが好きなわけではありませんが、教団が私をこの世界で拾ってくれた恩は返さなければなりませんし……。話しを戻しても良いですか?」
ホーリーホワイトは改めて小瓶をテーブルの上に置く。
「──個人的な事情で申し訳ないのですが、この小瓶の封印をかけて、私と勝負していただきたいのです」
「個人的な事情?」
「ええ。そちらの方、双剣を使うのでしょう?私と戦ってください」
「……え!? 僕!?」
ホーリーホワイトの視線を受けて、鵜久森が驚き、ガタンと椅子を押しのけ立ち上がる。ブラックローズが呆れた表情で額に手を当てていた。
「そういえば、戦闘狂だったわこの子。向こうの世界でも前線に出たがる変わった聖女だって騒がれていたのよ」
「せ、戦闘狂って何を使うんだい?」
ましろが恐る恐る聞くと、ホーリーホワイトは窓の外に視線を送る。
「それは──裏の森でお披露目すると致しましょう」
◇◇◇
晴れ渡る空の下、鵜久森とホーリーホワイトが向き合って立っている。ましろたちは少し離れた場所から応援する形になった。
「……まあ、ここなら他の誰かに見られる可能性は低いけど……」
鵜久森は物語の顕現領域以外では滅多に出さないスペルカードを顕にし、双剣を呼び出す。
(女の子と戦うことになるなんて……。気が引けるなぁ……)
「──っていうかましろくん!普通こういう時に戦うのって君じゃないかなぁ!?」
「ふふふ。ボクもそう思いますけど、ボクは後方支援型の能力なんで」
「インフィニティ・オンラインの時に剣使ってたよね!?」
「あれはアルパイン・グリーンのステータスがあってのことですよ。剣を普段使いしてないボクじゃ、たぶん彼女の相手にも及びません」
思いきり観客側に立っているましろを、鵜久森は少し恨みがかった視線で見つめる。
「ではこちらも。武器のお披露目と参りましょう」
ホーリーホワイトは胸元に利き手を当てると、体内から光と共に日本刀を引き出した。
「これは彼方の世界で異国の方が、私に預けて下さった刀」
「すご……。あれブラックローズも出来るの?」
「出来るけど、力を消費するのであまりやりたくはありません。それになんだか気恥ずかしいし」
「そういう問題ですの?」
ホーリーホワイトは鞘を腰に装着し、刀を抜いて構える。鈍く光る刀身がホーリーホワイト自身を映し出した。
「手加減は無しで、よろしくお願いします」
(ええー!? 女の子だから手加減する気満々だったんだけど!?)
鵜久森が心の中で悲鳴を上げる。
「では──」
先手はホーリーホワイト。身を屈めると瞬時に鵜久森の懐に入り込んだ。




