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17話 仲良し4人組と今の僕

「鵜久森。アンタ、今日でパーティから抜けて」

「なっ──!?」


物語ソネット狩りが終わった直後。如月瑠花きさらぎるかから告げられ、僕は憤りを隠せなかった。


「なんでさ!!今までみんなで頑張ってきたじゃないか!!」

「みんなで?いいや、違うな。お前はただ俺たちの後ろに隠れて見ていただけだ」


夏目日向なつめひなたが鋭い瞳を僕に向ける。


「ひゅー。今言っちゃうかそれ。もう少し後かと思ってたが」


柊隼人ひいらぎはやとがポケットに手を突っ込んで、身を屈めた。


「ええー。仲良く出来ると思ったんだけどなぁ」


秋瀬睦あきせむつきだけが、僕がパーティから抜けることを残念がっていた。


──いや、まだ抜けるって決まったわけじゃないけど!!


如月瑠花、夏目日向、柊隼人、秋瀬睦の4人は童話どうわ高校1年生。僕だけ御伽おとぎ高校1年生で学校が違う、小さな塾で顔を合わせていた僕の同級生だった。

僕ら5人はある日の塾の帰り道、物語ソネットに巻き込まれて異能が覚醒した。

如月瑠花は鞭、夏目日向は斧、柊隼人はナイフ、秋瀬睦はボウガンを使う。それに加えて僕はツインソード。の筈だった。


「知っての通り、前衛は足りてるの。他に行ったほうがコッチにとってもアンタにとっても良い話な筈よ」


如月瑠花からの冷たい視線。他の3人には向けないのに。

女子1人に男子3人のグループ。4人は塾で僕が出会う前からの付き合いらしく、仲が良かった。元から僕が抜け者扱いだったのは、言わなくてもわかるけど。


「お前が居ると、4人で居る時と違って調子が狂うんだよ」


ぶっきらぼうに面と向かって夏目日向から言われ、僕はショックを受けて泣きそうになる。


「冷てぇなあ瑠花るか日向ひなたも。お前は後衛のむつきよりお荷物だってハッキリ言ってやりゃあいいのに」

隼人はやとの方が2人より冷たいと思うケド」


ケケケと笑う柊隼人に、ツッコミを入れる秋瀬睦。


──まだ抜けるって決まったわけじゃない。そう思いたいけど、現状としてはどう考えても僕がパーティから追放される雰囲気で。


「じゃ、そういうことで。さよなら鵜久森」


如月瑠花はこれ以上話すことは何もないと言わんばかりに長い髪を翻し、僕に背を向ける。他の3人とラプスも……秋瀬睦だけは、置き去りにされた僕をチラリと横目に見ながら、如月瑠花の後を追う。


「さ、最悪だ……」


確かに、前衛でやることが被って夏目日向の邪魔になっていた時もあったし、他の3人とも息が合わなくて攻撃のタイミングとかズレて迷惑かけていた時もあった──あれ?


「いや、正論だな……。ははっ、僕がお荷物だったんだ……」


僕は掌で顔を覆う。今の今までそれを我慢して受け入れていたのは向こうの方か。


「他のパーティ、か……」


こんな、落ちこぼれの僕に相応しい居場所パーティなんて見つかるんだろうか。


◇◇◇


「──はっ……!」


静かな夜。時刻は2時を回っている。僕は昔の夢を見て、魘されていたようだ。


「なんだって今更……」


もう約2年前のことだ。あの出来事がきっかけで塾にも通い辛くなって辞めたから、あの4人があれからどうなったかは知らない。今日も隣町のどこかで物語ソネットを狩っているのだろうか。


「……ああ、そうか……」


掌で額を覆う。先日、鵜久森、と如月瑠花に似た性格がキツそうな女子──赤羽根榴姫に呼び捨てにされたことがきっかけで、昔のことを思い出して夢に見たらしい。


「はぁ……。水でも飲むかな」


ベッドから降りて、1階の食堂に向かう。

すると、意外な先客が居た。


「ましろくん」


ぎくりと身を強張らせ、冷蔵庫を開けていたパジャマ姿のましろくんが振り返る。確か冷蔵庫の中には夕飯のデザートに出した苺ロールケーキのあまりが残っていた筈。


「夜食におやつは身体に毒だよ……。って、そういえば太らない呪いだったねましろくんは」

「じゃあ、食べてもいいですか!?」

「いいよ。明日の朝用にとっておこうと思ったんだけど──って、」


いつの間にかフォークも用意してもう食べてるし……。僕はやれやれと呆れながら椅子に腰掛ける。


「ましろくん。ロールケーキ、おいしいかい?」

「ええ!それはもう!!」


ニコニコ笑顔でパクパクとロールケーキを口に入れているましろくんを見ていると、自然に顔がにやけてきた。物語ソネット狩りの時だけでなく、僕の作る料理がここでは必要とされているから。


「ましろくん、もし僕が居なくなろうとしたら、どうする?」


少し意地の悪い質問をしてみる。すると、ましろくんは首を傾げた。


「決まってるじゃないですか。全力で止めます。鵜久森さんは大切なアーバン・レジェンドのメンバーなんですから」

「ふふっ……、あはは!」

「?」


僕が今欲しい言葉が、ましろくんの口から飛び出した。あまりにも素直すぎて、腹を抱えて笑ってしまう。


「い、今のは冗談だから、気にしないで」

「綺羅々さんも居るのに、鵜久森さんがアーバン・レジェンドから抜ける理由がわからないです」

「そうだね」


あのパーティを流れで抜けたのは悪かったことだけじゃない。ソロで活動していた時に綺羅々ちゃんと出会って、ましろくんと出会ってアーバン・レジェンドに入って。自分が必要とされるポジションにもつけて、結果的には良いことずくめだ。


「うん。雨降って地固まる、かな」

「?」

「って、ましろくん、それは明日の朝用にとっておいたプリンだよ!!」


冷蔵庫の奥に隠していたプリンを食べようとしているましろくんを止める。


──これが僕の、昔とは違う今の日常。


「うん。昔よりも今だね。過去を振り返ってもどうしようもないし!明日も頑張ろう!」

「なんのことかわかりませんけど、鵜久森さんが元気なら良いに越したことはないです。明日も美味しいスイーツが食べられること、期待してますからね」


ふふふ、とましろくんはちゃっかりプリンを拝借し、スプーンを口に当てている。まぁいいや。また明日もみんなの為に新しいご飯とスイーツを作るまでのこと。毎日やりがいのあるポジションにつけて、僕は今の日常に満足している。


「誘ってくれてありがとう、ましろくん」

「……?だからなんの話しです?」


スプーンを持ったまま、ましろくんは首を傾げていた。僕は鼻歌を歌いながらマグカップにミルクを注いでレンジで温める。


次は良い夢を見られますように。


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