第2話
エイミーが作ってくれた食事が終わり、私とエイミー2人で後片付けをする。
「エイミーさん。 今日は本当にありがとうございました。」
「いやいや、全然だよ。 これからも時々様子見に来るからね。」
「いえ、そんなにご迷惑をおかけする訳には・・・」
「いやいや、ミオのヤツがクロエちゃんを放っておくんなら、私がクロエちゃんのお姉ちゃんの座を貰っちゃおうかなってネ。」
「エイミーさんって、ミオさんと仲良しなんですか?」
「そうだね。 クロエちゃんが来てからは、ミオはクロエちゃんにベッタリだったけど、それよりも前はね。 たまーにだけど、一緒に遊んだりもしていたんだよ。」
「そうだったんですね。 すみません、私のせいで・・・」
「いやいや、クロエちゃんのお陰でミオも元気になったからね。 クロエちゃんには感謝していたんだよ。」
「・・・・・」
「アイツはバカで、明るく振る舞ってはいたけど・・・時々なんか暗い過去かなんかを思い出しているような時がね・・・でも、クロエちゃんと一緒に居るようになってからはね、本当にただの明るいバカになったように思うんだよね。」
「ミオさんは、バカなんかじゃないです。 とっても素敵なお姉さんです。」
「いや、ミオはバカでしょ? アイツまともに字も書けないでしょ?」
「いいえ、ミオさんは文字だってちゃんと書けますよ! まあ、あんまり得意な方では無かったかもしれませんけど・・・」
「あーあ、クロエちゃんはすっかりミオの妹だねー。 これじゃあ、私の妹にできないじゃないか。」
「エイミーさん・・・」
「まあ、ミオがいない間だけでもさ、私がお姉ちゃんになるからね。 だから、また一緒にご飯食べようね。 そんで、ミオが戻ってきたらミオに自慢してやるんだから。」
「はい。 ありがとうございます、エイミーさん。」
「また来るからね。」と言って、エイミーは帰って行った。
それから3日間・・・エイミーは、1日おきにホームにやってきては、他愛のない話をしながら、一緒にご飯を食べてくれていた。
しかし、グスタフたちが出発してから既に17日目、私はもういてもたってもいられなかった。
「もう待っているだけなんて出来ない!」
私は、意を決してギルドに向かう。
グスタフたちを探すために、シザース高地の探索クエストを発注するためである。
ギルドに到着した私は、一直線に受付に向かう。
受付は何箇所かあるが、今の時間エイミーは受付に出ていなかった。
私が向かった受付に立っていたのは、爬虫人族のゲッコー種であるカレンだ。
「あら、クロエさんいらっしゃい。 本日はどういったご用件でしょうか?」
「カレンさん、クエストの発注をお願いしたいんです。」
「クロエさんがクエストを発注されるのですね? では、こちらの用紙に依頼内容と報酬を記載して下さい。」
「はい。 ありがとうございます。」
私が、クエストの発注書の記載を行っていると、奥の事務室の方がなにやら騒がしかった。 しかし、今の私はそれどころではないと発注書の記載を続ける。
バンっ!!
事務室のドアが勢いよく開け放たれると、ギルド嬢エイミーが勢いよく飛び出してきた。
「エイミー? どうしたの? 騒がしいわよ。」
「ゴメン、カレン!! ちょっと行ってくるね!!」
「ちょっと、エイミー? どこに行くって? 仕事中よ。」
「私、クロエちゃんのところに行ってくるからー・・・って、あれ? クロエちゃん?」
「エイミーさん?」
「ちょうど良かった!! クロエちゃん!! 奥に来てっ!!」
「え? いえ、私今・・・」
「いいから、早く来てっ!!」
「え? いや・・・あのっ・・・」
「いいからっ!!」
エイミーに腕を掴まれた私は、強引に事務室内に連れ込まれてしまった。
とりあえず抵抗を諦めて、エイミーに引かれるまま身を預けていると、やがて階段を上がりギルド長の部屋の前に連れてこられた。
「ギルド長、エイミーです。 クロエちゃんを連れてきました。」
エイミーがドア越しにギルド長に声を掛けると、ドアの向こうから「どうぞ。」と声がした。
私は、エイミーに促されるまま、ギルド長の部屋に入る。
「失礼します・・・」
「これは、クロエさん。 良くいらしてくださいました。 どうぞお掛けください。 しかし、随分早かったのですね。」
「あ、はい。 ちょうどクエストの依頼をしに来たところでしたので・・・私になにか御用ですか?」
「ええ。 先ほど第4国のクラスト市冒険者ギルドから伝書鳥で連絡が入ったんです。」
「第4国の・・・? まさか!?」
先日ギルド長から聞かされた話が頭をよぎる・・・グスタフたちがクラスト市ギルドから連絡を入れて来たのか、それとも冒険者登録証が届けられたのか? 淡い期待と、大きな不安が襲い掛かかり、私の膝が震え出す。
「そうなんです。 グスタフ君たちから連絡が入ったのですよ。 彼らは無事です。」
「え・・・?」
「ですから、星夜の灯火の皆さんは無事だったのです。 良かったですねクロエさん。」
「みんな・・・無事・・・なんですか?」
「そうだよ、クロエちゃん!! みんな生きていたんだよ! 良かったね~~!?」
「う・・・うわーーーん!!」
「クロエちゃん?」
「良かった・・・良かったよぉ~~!!」
私は、人前にも関わらず大号泣してしまった。 こんなにも泣いたのは、生まれ故郷の里が燃えてしまったあの日以来ではないだろうか?
私が泣き止んだのち、クラスト市ギルドから届いたという手紙をギルド長から渡される。
その内容は、クエストの依頼品であるイノシシ王「ケーニヒ・エーベル」の発見に手間取り、シザース高地のかなり南方、それも第4国側まで行ってしまったとのことだった。
そこで目標とは別の手強い魔物に遭遇してしまい、戦闘中にミオを庇った猫田さんが大怪我を負ってしまう。
手持ちのポーションだけでは治癒しきれなかったので、その場所から最も近かったクラスト市に向かい、猫田さんの治療を行った後にクラスト市ギルドから連絡を入れた・・・とのことである。
なお、猫田さんの治療は無事成功したとのことで、この手紙を出した後にはアローヘッド市を目指して出発するとのことであった。
「クラスト市からアローヘッド市までは、大体10日前後はかかるでしょうから、手紙の書かれた日から考えると、あと1週間くらいと言ったところでしょうか?」
「そうなんですね。 ありがとうございました。 ギルド長、本当にご迷惑をお掛けしてしまい申し訳ありませんでした。 エイミーさんも本当にありがとうございました。」
「いえいえ、当ギルド所属の優秀なパーティが無事だったのです。 私も嬉しいのですよ。」
「私も、ミオが無事だったのが確認できて嬉しいよ。 今度、ミオに高いご飯でもご馳走してもらわないとね。」
「はい。 エイミーさんには、是非私からもお礼をさせてください。」
「気にしないでクロエちゃん。 クロエちゃんの分もミオに払わせるからさ、エイミーお姉ちゃんと一緒にご馳走食べに行こうよ。」
「はいっ!」
そうして、私の不安だらけの日々はようやく終わった。 実際に皆の顔を見るまでは完全には安心できないけど・・・
皆が戻るまでの1週間は、再度鍛冶に勤しもうと思う。 私の鍛冶製品を欲してくれた、レンブラント商会とガルシア商会に1つでも多く納品するためと、今回色々と迷惑をかけたエイミーに、なにか造ろうと思ったからだ。
鉄鉱石はストックが無いし、自分で取りに行く時間はないので、まずはこれから市場で鉄鉱石を探しに行くことにする。
今日は、久しぶりにクーニャさんに聞いてほしいことが沢山あるから・・・
ギルドを後にした私は、急いで市場に向かった。




