第3話
私たちは、ロアー・リブ市からの旅を終えて、今は王都にあるエルザの伝手の家に来ていた。
てっきり、エルザたちが先に到着しているものだと思っていたが、家には誰もおらず、人が入った様子は無かった。
ただ、ここも他の城塞都市にあった伝手と同様に、誰かが時々メンテナンスを行っているのは伺えた。
「エルザたち、まだ来ていないんだな?」
「そうみたいね。 前に貰った連絡だと、アイツらの方が先に王都に到着してそうな感じじゃ無かったかしら?」
「そのはずだけどな。 まあ、数日のズレはあるだろうし、特に心配するほどじゃねぇだろう。」
「べ、別に心配なんかしていないわよ。 あいつらの事だから、どこかで飲んだくれているんじゃないの?」
「エルザさんたちの事だから、大丈夫だと思いますけど・・・私たち、これからどうしますか?」
「俺は、明朝にでも盗賊ギルドに顔出して来るよ。 一旦ここに戻って来るんで、それから一緒に冒険者ギルドに行ってみようぜ。」
「冒険者ギルドって・・・エルザたちが戻って来るかもしれないじゃないの。 その辺がハッキリするまで、クエストだって請けられないんじゃない?」
「なんか、情報があるかもだろ?」
「まぁ・・・それもそうか。」
「だろ?」
「ゲオルグさん・・・フィロミィナさんに会いに行こうとしていませんか?」
「えっ!? い、いや・・・そんな事は・・・」
「もー。」
「まあ、良いじゃないクー。 ゲオルグだってたまには・・・ね?」
「別に良いですけどね。 それならそうって、ちゃんと言ってくれないって言うのが・・・疚しさを感じるって言うか・・・」
「おい、クー。 俺は確かにフィロミィナさんのファンを自称しているけどな。 クーは、俺にとって可愛い姪っ子みたいなもんなんだ。 クーの方が大事に思っているって。」
「ホントかなぁ~?」
(おや? クーがフィロミィナに嫉妬しているのかな? いつも良い娘すぎるのが気がかりでもあったけど、ちょっと普通の女の子みたいな反応を見せてくれたのは嬉しいかも?)
翌日
盗賊ギルドに向かったゲオルグの帰りを、クーと2人で待っていた。
クーとテーブルに向かい合わせに座り、クーの淹れてくれたお茶をすすりながら、クーに話題を振ってみる。
「ねぇ、クー?」
「何ですか?」
「最近あなたって、やけにゲオルグに懐いていない?」
「そうですか? ゲオルグさんは、ツキ姉の次に一緒にいる時間が長いですし・・・ゲオルグさんは、私のことを姪だって言ってくれる時があるじゃないですか?」
「たまに言っているわね。 可愛い姪っ子だって。」
「私も、ゲオルグさんのことは、少し年の離れた親戚のお兄さん・・・みたいな感じには思っていますよ?」
「そうなんだ~。 大好きな親戚のおじさんを、横から来た美女に取られてしまったみたいな感じなのかな?」
「ええっ!! 何を言っているんですか!? そ、そんなことは・・・」
「別にダメだって言っている訳じゃないわよ? クーがそんな反応を見せてくれたことが嬉しいくらいだわ。」
「もー。」
「そう言うツキ姉はどうなの? エルザさんたちとは結構長いでしょう?」
「そうだね。 なんだかんだで、もう6年位になるわね。 だけど、私にとっては・・・やっぱり、家族だって思えるのはクーだけよ。 エルザたちは、単なる仕事上の仲間・・・よりはちょっとだけ個人的な付き合いのある人って感じかしらね。」
「そうかなあ? ツキ姉が思っているより、エルザさんたちとは仲良しだと思うけど。 ツキ姉って、エルザさんたち以外の人とパーティ組んだことってあるんですか?」
「あるわよ。 フィロミィナだってある意味そうだし、あの・・・なんて言ったっけ? なんとかのなんとか団みたいなのとか。 クーも覚えているでしょう?」
「暁の戦士団ですか? レティやデイジー・・・ミシェルたち・・・元気にしているかなぁ? って、そう言うのじゃなく、深紅が関係していない所でってこと。」
「あー、無いわね。 元々私はソロで旅していて、特にパーティを組もうなんて思っていなかったんだけどね。 エルザに猛アタックされたものだから、仕方なく・・・様子見で加入してあげたのよ。」
「ふぅん。 でも・・・こう言っては何ですけど、ツキ姉って体力無いじゃないですか。 1人だととっても危ないと思うんだけど・・・」
「私は、魔法使用がありの戦闘なら、まず負けるつもりはなかったからね。 現に、盗賊でも魔物相手でも負けたことないし。 確かに、1人で野宿とかは危ないって思うけど、そこは、気配の察知も得意だし、なんなら姿を消したりもできるからね。」
「うーん・・・規格外すぎる。」
「自分で言うのは何だけど、割かし何でも1人でできるから、他人の必要性が感じられなかったのだとは思うわね。」
「そうかも知れないけど・・・ツキ姉は、他人に興味が無いっていいますけど、そうでは無くて・・・他人との接触を避けている・・・とは違うかなぁ・・・?」
「??」
「ごめんなさい、うまく言えないです。 私の場合は、たまたま妹さんと似ている部分があったから、興味を持ってくれたんですよね?」
「うーん。 確かに、クーの場合はそう言った面があったのは否めないけど・・・別に、妹と似ていたからってだけじゃなくて、髪の毛の色のこととか、クーの悩みが私にも理解できたし、何よりもクーに魅力があったからだと思うわよ。」
「ごめんなさい。 別に嫌味を言っている訳では無いです。 それに、私に妹さんを重ねて、興味を持ってくれたことに感謝しています。 ツキ姉がいなかったら、私は今ここには絶対にいませんから。 大嫌いだった私の黒い髪に、初めて感謝したくらいです。」
「大丈夫よ。 私がクーのこと、嫌いになる訳がないでしょう? それに、クーの黒い髪・・・私は好きよ。」
「うん。 ありがとう。」
「おう、戻ったぜぇ~。」
「あ、ゲオルグさんだ。」
玄関から、聞こえたゲオルグの声に応えたクーは、席を立って玄関にパタパタと向かっていく。
「お帰りなさい、ゲオルグさん。 何かありましたか?」
「おう、カメリアはいるのか?」
「はい。 居間にいますよ。」
「そうか。 じゃ、居間で話すよ。」
「はぁい。 私、お茶淹れますね。」
「ありがとうな、クー。」
3人でテーブルに腰掛け、クーの淹れてくれたお茶をいただく。 私は既に・・・何杯目だろう?
「で、なんか目ぼしい情報あったのかしら?」
「興味深い話があったと言えばあったがね。」
ゲオルグによると・・・
千剣山脈の中にある『遺跡』に、地下施設が発見されたのだと言う。
遺跡自体は、もっと以前から存在は確認されていたのだが、地下施設への入り口は発見されていなかったとのことだ。
地下を発見したパーティは、地下施設に踏み込んだものの、強力な魔物に遭遇し、ほとんど探索は進められずに撤退したのだそうだ。
しかし、僅かな探索において、未だに良質な鉱石の採れそうな採掘場跡を発見し、また、遺物らしきものも発見したらしく、その遺跡は有望な遺跡と判断されたようで、各都市から優秀なパーティを募り、地下迷宮の調査が予定されているとのこと。
ただ、遺跡は千剣山脈の山中にあるので、遺跡の内外問わずかなり強力な魔物が出るとのことだ。
「遺跡ですか・・・ちょっと、興味はありますけど・・・」
「そうだな。 王家主導の調査がされるらしいし、一般開放はまだまだ先の事になりそうだな。」
「そうなんだ。」
「あれ? カメリアは、あんまり遺跡に興味なかったか?」
「そう言う訳でもナイけど・・・」
「けど?」
「千剣山脈の中なんでしょう? 遺跡まで辿り着ける気がしないわ。」
「ああ~、そっちか。 だが、お前の能力なら、どうとでも出来そうだがなあ? 前に1人でも千剣山脈を越えられるって豪語していなかったか?」
「どっちにしたって、しばらくは入れないんでしょう? それよりも、ギルドに行くわよ。」
「おっと、そうだな。 フィロミィナさん、元気にしているかなぁ?」
「ゲオルグさん、フィロミィナさん目当てだって本音がダダ漏れですよ。」
「え? 違う違う・・・冗談だって。」
「もー。 ホントかなぁ~?」
ゲオルグに背を向けて、拗ねたふりをするクーと、そんなクーを少し慌てながら取り繕うゲオルグ。
そんな2人のやりとりを見て、少しだけど、私の心は和んだような気がした。




