第12話
ロアー・リブ市に向かう途中の町で請けた、行方不明者の捜索クエスト。
そのクエスト自体は、捜索対象であった行方不明の少女を発見し、無事に親元に返すことが出来たのだが、副産物として誘拐組織のアジトを発見した上、アジトに一緒に捕えられていた7人の女性を救出した。
その中にいた、翼人族の少女「セオナ」が、ロアー・リブ市に向かう私たちに、何故だか同行するってことになってしまった。
ロアー・リブ市への道中。
とりあえず、セオナに話題を振ってみる。
「セオナさんは、今おいくつなんですか? あ、私は16才なんですけど。」
「私はですねぇ~、15才なんですぅ~。 クロエさんの方がお姉さんですねぇ~。」
「へ、へぇ~。 どうして故郷を出られたんですか?」
「成人を機にですねぇ~、大きな街に出てみることにしたんですねぇ~。」
「へ、へぇ~。 そうなんだ。」
(もっと年上かと思っていたけど・・・しかし、間延びした話し方をする人だな? 翼人族ってこんな感じなのかな?)
「あ! そう言えば、フィロミィナっておいくつなんですか? 差し支えなければ・・・」
「私ですか? 私は54才です。」
「何っ!? 俺よりも年上なのかよ!?」
さすがのグスタフも、フィロミィナの年を聞いて驚いたようで、素頓狂な声を上げた。
「そうなのですか?」
「ってことは、シンシアの次に年長ってことか・・・魅魔種ってのは、1番良い年代が長いって言うのは本当なんだな。」
「ちょっと、年の話はあんまりしないでほしいわね。」
「なるほどナぁ・・・フィロミィナは、人生経験豊富なんだナ。」
「えー? でも、私は随分実家暮らしが長かったものですから。 母から少しは外の世界を見て来いって、家を追い出されたんです。 もう3~4年前のことですけど。」
「50まで実家暮らし・・・お父さんは何か言って無かったの?」
「魅魔種は、男性が極端に少ないんですよね。 ですから特定の妻を持って、一緒に暮らす男の人って、まずいないんですよ。」
「純血を守るためだったか? 男にとっては、夢のような話だが・・・ある意味では、種馬扱いってことなんだよな。」
「皆さんはぁ~、色々な種族なのにぃ~、仲良しさんなんですねぇ~。」
「そうですね。 シンシアは妖精族のエルフ種、ミオさんは獣人族のトラ種、フィロミィナは妖魔族の魅魔種。 私とグスタフは人族ですね。」
「あれ? 自分は?」
「あ、そうでした。 猫田さんも、人族(?)ですよね。」
「ク、クロエ?」
「種族が違うのにぃ~、仲良しなのは羨ましいですねぇ~。」
「そう? 種族間で争っているって訳でもないし、混成パーティって普通じゃないかしら? 私から言わせれば、むしろ同族とされているドワーフ種との方が険悪よ。」
「私の故郷はぁ~、翼人族しかいなかったですからねぇ~。」
「翼人族は、人間の中で唯一翼を持っているからな。 居住する地域が、他の5種族とは違うんだよな。」
「はぁ~。 そうなんですねぇ~。」
特に戦闘訓練を積んできた訳ではないセオナは、本当に只の女の子であったが、過酷な山育ちであるからか、体力はあった。
翼人族は、飛べるってほどではないにしても、滑空なんかを行うため、腕や上半身には筋肉が付いている。 他は細いんだけど、足も細いながらも筋肉質だ。
そして、なんやかんやで目的地であるロアー・リブ市に到着した。
もう9月も終わりの頃であった。
「やっと到着ね。 まだ暑いけど、泳ぐって時期ではなくなったわね。」
「そうだな。 とりあえず、宿を探すか。」
「宿を決めたら、グスタフは私に付き合ってよ。」
「なんだ? 何か用があるのかクロエ。」
「アローヘッド領事館に行くんだよ。 忘れたの? 前にグスタフの所為で領事館の職員さんに、ご迷惑をお掛けしたんだからね。」
「そりゃあ、その件については俺が悪かったけど、今更もういいだろう。」
「ダメダメ。 こういうのは、ちゃんとしておくべきだよ。」
宿を決めた後、私はグズるグスタフを連れて、アローヘッド領事館に向かった。
領事館に向かうクロエとグスタフの後ろ姿を見送る残りのメンバーたち。
「まるで娘に叱られて、嫌々付き合わされるお父さんみたいね。」
「そうだね。 クロエの方が大人な面もあるのかも知れないね。」
「クロエは、ミオの自慢の妹だからナ。」
「いいですよね。 お父さんがいる・・・ああいうの憧れます。」
「私も早く子供が欲しくなっちゃうわ。 ミオはどうなの?」
「え? ミオは・・・まだ良く分からないナ。」
「そうなの? まあ、まだ若いから分からないか。 でも、グズグズしていると、年なんてあっという間にとっちゃうわよ。」
「私はぁ~、成人したばっかりだからぁ~。 でもぉ、恋人は欲しいかなぁ~。」
「あ!? セオナ!? 忘れていたわ・・・あなたはこれからどうするつもりなの?」
「え~とぉ・・・皆さんはぁ~、この後はどうなさるんですかぁ~?」
「そうね。 私たちは、明日にでもギルドに行って・・・クエストの内容にもよるんだけどね・・・ここでの用が済めば、アローヘッド市に戻ることになるわね。」
「アローヘッド市ですかぁ~。 千剣山脈は近いんですかぁ~?」
「んー、そうね。 第9国の主要都市の中では、千剣山脈に近いのはアローヘッド市かアッパー・リブ市のどっちかになるわね。」
「帰りは、王都経由かい?」
「多分そうするんじゃないかしら?」
「王都にはぁ~、行ってみたいですねぇ~。 アローヘッド市もぉ~、興味ありますぅ~。」
「え? それって私たちと一緒に行きたいって事かしら?」
「ダメですかぁ~?」
「う、うーん。 グスタフと相談してみないとだけど・・・」
「でも、セオナさん1人をここで放っておくのは、気が引けますねぇ。」
「ミオは、どっちでもいいけど・・・セオナ、お前、金持っているのかナ?」
「少しはありますけどぉ~、街で働きたいって思ってますぅ~。」
「翼人族は珍しいんだろう? 働き口はありそうだけどね。」
「見世物みたいなのは嫌ですぅ~。」
「ま、そりゃそうなんだナ。」
「ロアー・リブ市はもう良いのですか?」
「あ~。 潮風は私向きじゃなかったぁ~、みたいな感じですぅ~。」
「なるほどね。 他の皆さんと、王都に向かった方が良かったかも知れないね。」
「いえいえ~。 潮風はニガてだってことが分かりましたからぁ~。」
結局、セオナは王都にも同行し、その後はアローヘッド市まで付いてくることになる。
これは後の話であるが、彼女をアローヘッド市冒険者ギルドに連れて行った際に、ギルドでは寿退職される職員がいたようで、翼人族という珍しさも手伝ってか、すんなりと冒険者ギルドの見習い職員として採用された。
その後は、セオナを頼ってアローヘッド市にやって来る翼人族が少なからずいて、彼女を中心に、小規模だがアローヘッド市の翼人族コミュニティが形成されて行くのだ。
翌日
グスタフとシンシアは、野暮用があるとか言って別行動。
私は、どうしても気になって仕方が無かった「千年武器店」に向かう。
一応、今回の旅の目的地がロアー・リブ市であるという事だったので、ダガーを3本だけ用意はして来た。 だけど、前に卸した武器が全部売れ残っていたらどうしよう。
前に売ったものが、売れなかったから引き取ってくれなんて言われたらショックだ。
ミオは、猫田さんと生魚料理を食べ歩くとのことであったので、1人で向かうつもりだったのだが、フィロミィナが一緒に行くと言うので2人で向かった。
で、グスタフやミオたちとはお昼頃にギルドで落ち合う事になっている。
フィロミィナと2人で歩く。
「フィロミィナは、何か欲しい武器でもあるの?」
「特にそう言う訳では無いんですが、ミオと猫田を2人きりにしてあげようかと・・・思ったんですが・・・」
「ああ~。 セオナだね。」
「そうなんですよ。 あの娘も誘ったんですけど・・・あの娘ったら、ミオたちの食べ歩きに便乗したいらしくて。」
「あははは・・・まあ、仕方ないね。 だったら、フィロミィナもミオさんたちと一緒でも良かったんじゃない?」
「いえ、私はクロエと一緒に行きたかったんです。」
「え? 私をフィロミィナに惚れさせるつもりですか?」
「そうじゃないですよ。 クロエは大人っぽいところがありますけど、まだ16才なんですから、誘拐だのって話がある中、1人にさせる訳には行かないと思ったのですよ。」
「そっかー。 ありがとう、フィロミィナ。」
「いいえ。」
フィロミィナと楽しく会話しながら歩いているうちに、目的の千年武器店に到着。
開店時間を迎えたばかりの店先には、店主である老ドワーフさんが店先のお花にお水を与えていた。
店主さんは、私には気付いていない様子だ。
私は、多少(いや、かなり?)緊張しながらも、思い切って店主さんに挨拶をする。
「おはようございます!」
「はい、いらっしゃい。 武器をお探しかな? それでしたら・・・」
「店主さん。 私のこと、覚えていらっしゃいませんか?」
「お嬢さんは・・・」
どうやら店主さんは、私のことをすぐには分からなかったみたいだ。
まあ、半年ほど前に1度しか会っていないのだから仕方ないけど、ちょっとだけ残念に思った。




