第11話
私たちは、誘拐された少女の捜索クエストの遂行中に発見した、誘拐組織のアジトである洞窟を望める場所までやって来た。
アジトへの突入作戦はこうだ。
まずは、ミオが捕まったフリをして囮になる。 ここまでの案内をさせていた2人のうち、下っ端の方を使い、ミオを捕らえて来たように見せる。
シンシアとフィロミィナは、アジトの洞窟の入り口が見える場所に隠れる。
私とグスタフは左、猫田さんは右側に大きく迂回して、入り口に近づく。
ちなみに、案内人のもう1人(偉そうな方)には眠ってもらっている。
ミオたちが、入り口手前30メートルほどまで進んだところ、アジトからは、見張り役と思われる男が出て来て、ミオを捕らえた役の下っ端と少し会話をしていた。
その間に、アジトからはさらに3名が出て来た。
私は、グスタフに小声で話しかける。
「これで、4名確認。 まだ洞窟内に5~6名はいるってことだけど・・・」
「ああ、だがこれで十分だろう。 外に出たヤツらは、シンシアの魔法で一網打尽だ。 そうしたら、突入だな。」
「分かった。」
グスタフは、入り口を挟んで反対側にいる猫田さん、入り口の手前にいるミオに手信号で合図を送り、最後に後方にいるシンシアにも合図を送った。
シンシアが頷く。 直後にシンシアは立ち上がり、魔法を発動させた。
洞窟の入り口付近に風の刃が吹き荒れた。
洞窟から出ていた連中は、突然の強風に混乱し手傷も負っていたが、戦闘不能にまでなった者はいない。
「チっ・・・シンシアのヤツ、手加減しすぎだっての。 行くぞ、クロエ!」
「はい。」
私とグスタフが駆け出すころには、早くも猫田さんが入り口に駆け寄っており、片鎌槍丙の拾式で2人を突き伏せる。
続けて猫田さんは、3人目を仕留めにかかるが、ほぼ同時にミオが飛んできて4人目に強烈な飛び蹴りを浴びせた。
猫田さんとミオは、ほぼ同時に残りの2人を倒してしまった。
「皆、ごめんなさい。 ちょっと威力を抑えすぎたわ。」
「シンシア! その話は後だ。 猫田!! まだ行けるな?」
「もちろんさ、リーダー。」
「俺と猫田が先頭。 ミオとクロエは続いてくれ。 シンシア、フィロミィナは、外の連中を頼んだぞ!!」
「「「「「了解!!」」」」」
私たちが、洞窟に突入してから、程なくして戦闘は終了した。
洞窟内には、事前情報通りに、5名の悪党がいたが、グスタフや猫田さんの敵では無かった。
監禁されていた人たち8人(全員若い女性で、半分は獣人族だった。 残りは人族2人、妖精族1人、後は翼人族が1人だった。)も全員救出した。
「ねえ、なんか獣人多くない?」
「そうだな。 割合が高いように思うな。」
「私、この国に来てから初めて翼人族を見たよ。」
「ミオもほとんど見たことないナ。」
「翼人族は、基本的に山岳部とか、高いところに住んでいるからな。 人間の都市ではあまり見ないが・・・とは言え、王都にはさすがに居ただろう?」
「いやぁ・・・王都って殆ど素通りだったから見ていないよ。 気が付かなかっただけかもしれないけど。 アローヘッド市にもいないよね。」
「全くゼロかは分からないけど、聞いた事はないわね。」
「とりあえず、暗くなる前に町に戻ろうぜ。 救出した皆さんに加えて、捕虜も沢山いるしな。」
町に戻る道すがら、捕まっていた女性たちの話を聞いたところ、獣人の1人は、例のクエストに出ていた行方不明の少女らしいことが判明した。 残りは、王都やその近くの村の住人らしい。
翼人族は、元々は千剣山脈の山中で育ったらしいが、街に憧れて山を下りて来た所を攫われたとのことだ。
町についた頃には、夜に差しかかっていた。
ギルドで、捕虜とした誘拐犯と被害者を一旦引き渡し、詳しい話は翌日にってことになった。
もちろん、この町出身の獣人少女は無事に家に帰った。
宿で1泊し、翌日の昼手前くらいにギルドに向かうと・・・何やらギルド職員の皆さんの動きが慌ただしい。
ギルドには、昨日救出した女性たち・・・この村出身だった娘以外の7人が揃って待っていた。
ギルド職員の動きに、彼女たちも不安げな表情を浮かべていた。
私は、その女性たちに話しかけてみた。
「何かあったのですか?」
「いえ、良くは分からないのですが、私たちがここに呼ばれて来た後に・・・誘拐犯の方に何かあったようなんですけど。」
「脱走した・・・とかでしょうか?」
「分かりません。 だけど、逃げ出したのだとしたら・・・コワいです。」
「・・・・・」
それから、しばらくの間、女性たちに話しかけながら、慌ただしく行き来するギルド職員らを眺めていたのだが、ようやく1人の職員が私たちの元にやってきた。
職員は、集まっていた私たちに、待たせてしまっていることを詫びると、グスタフとシンシアだけを連れて行ってしまった。
10分もしない内に、グスタフたちは戻って来た。
「フィロミィナ、ちょっと手を貸してもらえるか?」
「私ですか!? はい、分かりました。」
グスタフは、フィロミィナを連れて再度奥に消える。 フィロミィナと入れ替わるように、シンシアが残った。
私たちは、シンシアを中心に集まる。
「オイ、シンシア。 何があったんだナ?」
「そうだよ。 話してよシンシア。」
「ええ、話すからちょっとこっちに・・・」
シンシアは、私たちを部屋の隅に集めて、小声で話す。
「昨日捕らえた誘拐犯のほとんどが、朝になったら死んでいたのよ。」
「なんだと!?」
「ちょっと、ミオ・・・静かに。」
「お、おう。 悪かったんだナ。」
「シンシア、どういうことなんだい?」
「あいつら、黒い首輪みたいなのを付けていたの覚えてる?」
「うん。 全員かは分からないけど、首輪を付けていた人がいたのは覚えてる。」
「その首輪がどうしたんだい?」
「どうやら、毒が仕込んであったみたいね。 時間で発動するらしいわ。」
「なんでそんなこと分かるんですか?」
「生き残ったヤツが話したそうよ。 その生き残りってのは、他のヤツらよりも偉そうなヤツなのよ。 あの森で襲って来た連中のリーダー格と、洞窟にいたヤツらの1人。 そいつらが吐いたわ。 次は自分たちの首輪が発動するからってね。 カラクリを話したから何とかしてくれって。」
「それでフィロミィナですか?」
「ええ、彼女は解毒魔法が使えるでしょう? 首輪を外すことは容易じゃないけど、毒が発動した直後なら解毒できるでしょう?」
「なるほどね。」
「じゃあ、もうしばらくはかかりそうですかね? あっちの女性たちが不安がっているから、大丈夫だって伝えなきゃ。」
私とミオとシンシアで、7人の女性たちに、誘拐犯たちは逃げ出したわけではないので、心配しなくて大丈夫だと言い含めた。
もちろん、殆どが死んでしまったと言うのは伝えなかったケド。
グスタフたちがギルド職員と戻ってきた後、女性たちの今後の話をする。
その多くは、王都やその周辺の町の出身者だったので、この町の冒険者たちが、ギルド発注のクエストとして、護送をしてくれることになった。
翼人族の女性は、千剣山脈出身だと言うし、王都に住居や馴染みの場所がある訳では無い(流石に、彼女1人のために千剣山脈までの護送はしてくれない。)。
当の本人は、王都もだけど、他の大きな街にも行ってみたいと言っており、ロアー・リブ市に向かう私たちに付いてくることになった。
まあ、何というか・・・誘拐されたってのに、度胸があると言うか・・・
パーティ全員が、翼人族とつき合いが全くと言って無かったので、もの珍しさもあり本人が望むなら・・・という事で、旅に同行することになったのだ。
という事で、私たちは旅の仲間(?)に、翼人族の少女「セオナ」を加え、目的地であるロアー・リブ市を目指すことになった。




