第4話
翌日
パーティメンバー全員で朝食を食べた後、私の呼びかけに答えて、シンシアを除いた皆がそのまま居間のテーブルに残っていた。
「お茶入ったわよー。」
シンシアが食後のお茶を用意してくれた。
メンバー全員にお茶が行き渡ると、シンシアも自分の席に座る。
「で、なんなんだクロエ? 話したいことって?」
「う、うん。 実は、フィロミィナの事なんだけど・・・」
「え? 私ですか? 何か気に入らない事でもありましたか?」
「いいえ、そうではないですよ、フィロミィナ・・・ただ、ちょっと失礼なことを言ってしまうかもしれないんですが・・・」
「クローエ、どうしたのよ? あなたらしくもない。」
「いいえシンシア、何かあるなら早くに話してもらった方がいいです。 そうしたら、直せるところは直しますので。 クロエ、遠慮せずに話してください。」
「うん。 先に言っておくけど、私はフィロミィナの事が嫌いとか、そう言うことは一切ありませんので・・・」
「はい。」
「後、これから話すことは、あくまでも私の感覚の話で、なんらかの物的証拠がある訳ではないんだけど。」
「はい。 是非お聞かせください。」
まず私は、フィロミィナに付けられた『発火点』という2つ名の由来、これまでフィロミィナが参加したパーティメンバーや近しい人たちの動向・・・パートナーの有無や、パートナーとまではいかなくとも、好意を持った人がいたかどうかなどによる違いを聞いてみた。
彼女の話によると、とにかく男性が一方的にフィロミィナに近づいて来るそうだ。 そして、男性が2名以上いた場合には、男性同士がフィロミィナを巡って争い出すのだという。
結婚していたり、恋人がいる男性は、フリーの男性に比べると行動は遅いが、やがてはパートナーを放り出して、フィロミィナに近づいてくる。
女性に関しては、パートナーや好きな人がいる女性は、そのパートナーがフィロミィナに近づいて行ってしまうため、フィロミィナを敵視して、険悪な関係になってしまう。
特に好きな人がいない女性からは、男性ほどではないにしても、結構な好意を向けられることが多かったそうだ。
ちなみに、パートナーの有無にかかわらず、男性でも女性でも普通に接してくれる人たちも、ごく少数はいたとのことだ。
「ありがとう、フィロミィナ。 話しにくいことを無理に言わせてしまってごめんなさい。」
「いいえ・・・」
「で、結局クロエの話したいことってなんなんだナ?」
「はい。 私の話したいことはココからです。 これは、最初にも言ったけど、根拠のある話では無いんですが、今のフィロミィナの話を踏まえて・・・後、昨晩の私の体験から立てた仮説なんですけど。」
「仮説かい?」
「はい。」
「クロエ、話してくださいませんか?」
「はい。 昨晩、私はミオさんとフィロミィナと3人で一緒に寝たんですが、その時に・・・」
私は、昨夜に感じた事(ピンク色の空気や体の火照りのことだ。)をみんなに話す。
「とすると、フィロミィナは無意識に魅了魔法の類を使っているってことか?」
「いえ、私は魅了の魔法は使えませんよ?」
「確かに、そう言っていたわよね?」
「いえ、魔法ではなく・・・恐らく、フィロミィナの汗とか・・・汗では無かったとしても、フィロミィナから発せられる何か・・・が原因だと思います。」
「あ、フェロモンとか言うヤツかしら? 聞いたことあるわね。」
「フェロモン? フィロミィナとちょっとだけ似ているのナ。」
「まあ、似ていると言えば似ているけど、それは関係ないんじゃないかい?」
「そう言えば、大昔の魅魔種には魅了の魔法を使わずとも、多くの人を誑し込むことができたって話はありましたね。 魅了の魔法は、むしろその力を得ようとした結果の産物だって話も聞いたことあります。」
「じゃあ、フィロミィナが魅魔種憧れの存在ってことになるのかしらね?」
「どうなんでしょう? 私は、魔法適正があるのに魅了の魔法が使えないとか、光属性持ちだからとかって理由で、あまり魅魔種の仲間からは好かれていなかったように思いますけど。」
「ゴホンっ。 えーっと、現状から推測すると・・・フィロミィナの力・・・仮にフェロモンとしておきましょう。 そのフェロモンは、男女問わずに発動するけれど、より男性に効果が高い。 効果としては、性欲を刺激するってことと、さらにフィロミィナに対する好感度を上げるってこと。 そしてそれらは、フィロミィナとの物理的な距離が近い程、また、フィロミィナに対する好感度が高い人ほど高い効果を発揮する。 逆に、フィロミィナに対する好感度がマイナスの人間には、効果が及ばないか好感度を下げる。 それとは別に、体質とかなんらかの関係で、フェロモンの影響を受けにくい・・・もしくは、抵抗できる人もいる・・・って感じかな?」
「うーん、まるで特殊能力ね。 それも生まれ持ったもので、自分では制御できない系かしら?」
「そ、そんな・・・私、一体どうしたら??」
「しかし、何で今まで誰もそれに気が付かなかったんだ?」
「そう言った特殊能力が知られていないってことかしらね?」
「うん。 人によっても差はあるんだと思うけど、近くで過ごすうちに段々と・・・言い方は悪いけど、本人も周りも気付かない内に浸食されていくって感じなんじゃないかな? 私たちは、前に一度クエストに同行しただけだし、グスタフも猫田さんもすでに決まった相手がいるから影響を受けにくかったんでしょう。 ミオさんと私は、同室で・・・しかも、一緒に寝たからモロに影響を受けたんでしょうね。」
「そうね。 それは、クローエの体験から確実っぽいけど、野営なんかでも少しずつ影響を受けていくんでしょうね。」
「や、やっぱりフィロミィナはキケンなんだナ・・・?」
「そんなぁ~・・・せっかく仲間にしてもらえると思ったのに・・・」
「多分知らないでいるのと、知っているのでは違うんじゃないかな? ウチで言えば、私以外は既にパートナーがいる訳だし、一番危ないのは私かもしれないけどね。」
「今のところは、状況からの推測の域を出ないけどな。」
「特殊能力って、本人が一番分かっているんじゃないの? 例えば、私はあまり高くは無いけど魔力感知を持っているってのは分かっているし。」
「私だと鉱石感知だね。」
「だが、本人が知らない・・・とか、意識していないモノもあるのかもしれないね。」
「ネコタがなんでも武器を使いこなすってのも、特殊能力なんじゃないかナ?」
「確かにな。」
「それこそ、自分には自覚は無いんだが、その可能性はあるのかもしれないね。」
「クロエの話は分かった。 とりあえずは、フィロミィナにはそういう力があるもんだと思っておこう。 そうすれば、自分では分かっていなくても、他の誰かが気付いてくれるだろうしな。 フィロミィナには悪いが、なるべく狭いところで一緒にいないようにしてもらえるか?」
「このまま、このパーティに置いてくれるんですか?」
「ええ、もちろん。 これで追い出すほど鬼じゃないわよ。 ただ、グスタフ・・・」
「な、なんだよ。」
「あなた、すでにフィロミィナのフェロモンにやられていないわよね?」
「え!? 当たり前だろう? 俺にはその・・・お前だけだぞ。」
「そう? それなら良いんだけどね。」
「ネコタもだぞ。 ミオを裏切ったりしたら・・・分かっているナ?」
「ああ、ミオを裏切るなんてことはないよ。」
「なら良し。」
「じゃあ、猫田の部屋はフィロミィナ専用ね。 猫田には悪いけど、あなたはしばらく居間生活に逆戻りね。」
「了解だよ。 例えばなんだけど、シンシアとグスタフの部屋を一緒にして、1部屋空けるなんてことは無理かい?」
「私もグスタフも荷物が多いから1部屋は無理ね。」
「そうだな。 スマン、猫田。」
「申し訳ありません、猫田さん。 新参者の私が部屋をとってしまって・・・」
「猫田で良いよ。」
「はい、ありがとう猫田。」
「フィロミィナは、なるべく毎日お風呂に入ってフェロモン(?)を洗い流す様にしてね。 お風呂に行けないときは、体を良く拭くとかして頂戴。 これは、イヤみとかではなく、私たちが長く一緒にやって行けるようにってことよ。」
「分かりました。 お風呂は好きなので、行ける時は毎日行きます! ですけど、今はお金がないんで、毎日は行けないですけど。」
「浴場の代金は、当面は私が出すわよ。 一緒に行くか、一緒に行けないときは言って頂戴。」
「何から何まで、本当にありがとうございます。 私、このパーティに誘っていただけて本当に感謝しています。」
そんな感じで、フィロミィナに関する問題と対処は、一応片が付いた。
この時に決めた色々の対策が良かったのか、私たちはフィロミィナと長期間にわたってパーティを組んで、数々のクエストに取り組んで行くことになる。
次の日、パーティ女子みんなでフィロミィナの服を買いに行ったのだが・・・やはり彼女は、薄着というか・・・開放的な服装が好みの様であった。




