表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
鋼と虎  作者: 釘崎バット
第11章 クロエとミオ6

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

121/129

第3話

 私とグスタフが工房からホームに戻って来ると、居間のテーブルには誰も座っていなかった。


 台所では、シンシアとフィロミィナが絶賛夕食の準備中。

 ソファーには、座っている猫田さん。 そして、猫田さんの胸には引っ付き虫のようにくっ付いているミオがいた。 どうやら、その状態のままミオは眠っているようだ。


「や、やあ、クロエ、グスタフ、お帰り。 早かったんだね。」

「どうしたんだ? ネコタ・・・」

 猫田さんの顔には、多少のひっかき傷が見える。 そして、大分お疲れのご様子だ。


「いやぁ、ミオをなだめるのに苦戦してね。 なんとか、機嫌は直してくれたようなんだけど・・・こんな感じになりました。」

「そ、そうか・・・まあ、ミオには気を遣ってやってくれよな。」

「ああ、そうしているつもりなんだけど・・・結局、不機嫌の原因が何だったのか良く分からないんだよね。」

「猫田さん、そのことはミオさんには聞かないで下さいね。」

「そ、そうかい? 女性って言うのは、本当に難しいなぁ。」


(う、うーん・・・ミオさんの場合は、割と分かりやすい部類だと思うので、猫田さんが鈍感すぎるんだって思うけど・・・でも、今回ばかりは猫田さんが悪いって訳でも無いしなぁ・・・状況が悪かったとしか・・・)


「良いんですよ。 とにかく、猫田さんは常にミオさんを1番に考えて行動して下さい。」

「了解だよ、クロエ。」


 そして、6人揃っての初めての夕食。

 皆が、いつもの定位置に腰掛け、フィロミィナはシンシアの隣(私の向かいでもある)に座る。


「じゃあ、フィロミィナの加入祝いってことで、今日は飲もうぜ!!」

「あんたは、毎日飲んでいるじゃないのよ。」

「まあ、そう言うなって。 じゃあ、乾杯の前にフィロミィナからひとこと貰えるか?」

「え? ああ、はい。 フィロミィナです。 皆さん、パーティに迎えていただいてありがとうございます。 恐らく、私の噂は聞き及んでいらっしゃると思いますが、それなのに誘ってもらえたのが嬉しいです。 至らぬ点も多いと思いますが、よろしくお願いいたします。」

「「「よろしくー!!」」」

「じゃあ、乾杯だ!!」

「「「「かんぱ~い!!」」」」


 そして、しばらくは楽しい飲食が続いた。 しかし、大分お酒も進んだ頃に・・・


「おい、妖魔族。」

 いつもより大人しかったミオが、突然フィロミィナに声をかけた。

 ミオの顔を見ると、既にお酒で真っ赤になっていた。


「ちょっ・・・ミオさん!?」

「はい、なんでしょうか? ミオさん。」

「オマエは、なんで『発火(イグニッション)(ポイント)』なんて呼ばれていたんだナ?」

「そ、それは・・・」

「おい、ミオ・・・」

「ネコタ黙れ。 お前は、またミオよりもフィロミィナを贔屓(ひいき)するのか?」

「ミオ~。 早くも酔っぱらってんのか?」

「グスタフも黙ってくれ。 仲間になるんだから、本人の口からちゃんと話してもらうべきだろう?」

「ミオさん・・・フィロミィナ、ごめんなさい。 ミオさん酔っぱらって・・・」

「いえ・・・ミオさんのおっしゃることも理解できます。」

「フィロミィナ・・・」

「皆さんに、どこまで信じていただけるか分かりませんが、私なりに『発火点』なんて呼ばれるようになった理由をお話しします。」


 それから、フィロミィナが話してくれたのは、こんな感じだ。


 見た目や、スタイルの良い女性が多い妖魔族の魅魔種。

 その魅魔種は、闇魔法が得意な種族で、しかも魅了の魔法(チャーム)を得意とする人が多い。

 実際、その外見や魅了の力を武器にして、そっち方面で稼ぐ人も少なからずいるそうだ。


 しかし、フィロミィナは、闇属性魔法こそ使えはするものの、初歩の攻撃魔法と若干の補助魔法しか使えず、代わりに魅魔種では非常に珍しい光属性の、しかも回復魔法が使えた。


 元々、男に(たぶら)かして生きて行こうとは考えていなかったし、得意の回復魔法を活かして、治癒士としてパーティに貢献して行きたいと考えて、冒険者の道を選ぶ。

 魅魔種の治癒士が非常に珍しいこともあってか、色々なパーティから勧誘を受けたが、所属したどのパーティも数か月もしない内に内部から崩壊してしまったのだと言う。


 そんな事が続くうちに、パーティを崩壊させる原因だとして『発火点』なんて呼ばれるようになってしまったとのことだ。


 フィロミィナは、寂しそうな顔をして最後にこう言った。


「私は、今までに所属したパーティのメンバーに恋したことも無いですし、そもそも魅了の魔法も使えません。 でも、私が男性を誑かしてパーティを崩壊させているってことになってしまったんです。」

「フィロミィナ・・・」

「こんなこと知っちゃたら、私なんかを仲間にするのはイヤですよね・・・」


「いや、そんなことはナイんだナ。」

「ミオさん?」

「そんなの、その男たちが勝手にしたことなんだろう? なのに、全部フィロミィナの所為にされて・・・可哀そうなんだナ。」

「ミオさん・・・」

「ミオは、フィロミィナの加入に賛成するんだナ。」

「ミオ・・・」

「ミオさん・・・」

「だけどフィロミィナ・・・まずは、そのエロい服装をやめるんだナ。」

「え? エロい!? 私の服装が・・・ですか??」

「おう。」

「え? 全然普通ですよ?」

「いや、妖魔族じゃどうか知らんがナ・・・世間一般では十分にエロいんだナ。」

「ええー?」

「早速明日オマエの服を買いに行くからナ。」

「えっ? でも、私お金が・・・」

「お金は、グスタフとネコタに払わせるんだナ。」

「「何だって!?」」

「お前らのためでもあるんだナ。 それとも、エロい服の方が良いっていうのか?」

「・・・分かった。 金は出してやるから、1~2着普通の服を買ってくれや。 後は、クエストの報酬が入ってから、自分の金で買ってくれよ。」

「は、はぁ・・・」


 そして、フィロミィナ加入祝いは終わり、各々の部屋に戻るため2階に上がろうとしていた時、ミオがフィロミィナに声を掛ける。


「おい、フィロミィナ。」

「はい。 何でしょうか?」

「今日は、フィロミィナもミオの部屋で寝ろ。」

「え?」

「ミオさん、そんなイキナリ・・・」

「大丈夫だクロエ。 ミオのベッドなら3人でも行けるんだナ。」

「それは、そうかもしれませんけど・・・フィロミィナもイキナリは困るでしょう?」

「そんな事は無いナ、そうだろうフィロミィナ?」

「え、ええ。 ミオさんとクロエが良いのでしたらゼヒ。 そういう女の子同士の付き合いも憧れます。」

「そうだろう。」

「あれ? じゃあ、自分の部屋は?」

「ネコタよ、ネコタの布団は居間にあるんだから、ネコタは居間で寝ろ。」

「あ、はい。 分かりました。」

「良し、じゃあ早速部屋に行くんだナ! クロエ、フィロミィナ!!」

「「はーい。」」


 ミオのベッドにて、フィロミィナを真ん中に、私とミオの3人で川の字になって横になる(今日のクーニャは、3人の枕になっている。)。

 横になって少しの間は、3人で話をしていたが、酔っていたミオは10分もしない内に脱落。

 その後は、私とフィロミィナの2人で少し話をしていたが、しばらくするとフィロミィナも眠りに落ちてしまった。


 季節は、夏真っ盛り。 ただでさえ暑いのに、3人も同じ部屋の同じベッドにいたら、そりゃあ暑いに決まっている。

 隣で眠っているフィロミィナを見ると、大分汗をかいているようだった。


(フィロミィナは、普通の人よりも暑がりなのかもしれないな。 魅魔種が露出の多い服を着ているのって、種族的に暑がりの人が多いからだったりして・・・)


 などと考えていたが、私も何だかとても暑くって、上半身を起こす。

 眠るミオを見ると、ミオもスゴく暑そうで、グネグネ動いており吐息も荒い。


 眠る2人を眺めている内に、私もなんだか体が疼いてくる感覚に襲われてきた。

 次第に、私の呼吸も荒くなってくる。


 私は、余りの暑さと疼き・・・そして、その・・・尿意を感じたため、部屋の灯りを点ける。

 灯りが灯った瞬間、部屋の空気がピンク色になっているんじゃないかと感じた。


 灯りの下でミオとフィロミィナを見ると、フィロミィナはそうでも無いと見えたが、ミオの顔は真っ赤であった。


 私は、急いで起き上がり、ミオの額に手を置く・・・凄く熱い!

 まずは、急いで部屋の窓を開ける。

 窓からは、室温よりは大分低い温度の新鮮な外気が流れ込んできた。

 そして、入って来た外気の代わりに、室内を満たしていた高温でピンク色(注:イメージです。)の空気が流れ出て行ったような気がする。


 私は、とりあえず窓は開け放ったままで、部屋のドアすら開けたまま、一旦トイレに向かう。

 居間で眠る猫田さんに、トイレに行ったのを気付かれてしまったが、それは仕方ない。


 ミオの部屋に戻ると、窓と扉をあけ放っていたお陰か、室内の温度はかなり下がっていた。

 ミオの顔色は少し良くなっており、先ほどよりもしずかに眠っている。 フィロミィナの汗も、かなり引いていたように感じられた。


「これって、もしかして・・・」


 私は、フィロミィナが『発火点』などと呼ばれることとなった原因を、見つけてしまったのかも知れないと思った。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ