第1話
キュートラ騒動(後に一部からは「キュート乱」と呼ばれる。)の後、私たちのパーティ「星夜の灯火」のスポット治癒士の募集に応じてくれた治癒士は1月ほどの間に3人いた。
その3人の治癒士それぞれと、シザース高地でのクエストに同行してもらった後、ホームにてパーティ会議があった。
「皆は、誰か気に入ったヤツいたか?」
「そうねぇ・・・私は、2番目の人が良かったと思うわ。」
「2番目って、あの妖魔族の女かナ?」
「フィロミィナさんですね。 魅魔種の・・・」
「ああ、光と闇の2属性持ちの彼女だね。」
「相反属性持ちは珍しいが、光と闇って特に珍しくないか?」
「そうね、中々聞かないわよね。 妖魔族で光属性持ちっての自体が珍しいかもね。」
「あ、あの女は良くないかもしれないナ。」
「どうしてですかミオさん? なにか問題がありましたか?」
「いや、あの女・・・服装がエロい上に、エロい目でネコタを見てやがったんだナ。」
「そうかなぁ? そんなことは無いと思いますけど。 確かに服装は少し露出が多いような気がしますけど。」
「フィロミィナ女史が、自分を見ていたってことは無かったと思うよ。」
「おい、ネコタはミオのいう事に逆らうんじゃないナ。」
「あ、はい・・・」
妖魔族の魅魔種は、少し濃い目の肌を持ち、見目麗しい人が多く総じてスタイルも良い。 そして、自慢のスタイルを見せつけるかのような格好をしている人が多いようだ。
寿命は人族よりも長く、150才以上生きるらしいが、特筆すべきは、人族で言う20代くらいの見た目でいる時間が非常に長いと言うことで、とっても羨ましい特性を持っている。 そして、何故だか圧倒的に女性比率が高いのも特徴である。
ちなみに、数少ないという男性も、見た目は麗しいとの噂だが、魅魔種の純血を保つために、同族内で囲われているケースが多いそうで、街中などで魅魔種の男性を見かけることはまず無い。
能力的には、闇属性魔法の適性を持つ者が非常に多く、一般的には魔法士のイメージが強く、治癒士は珍しい。
「しかし、そんな稀少な能力を持つヤツがフリーとは・・・なにか問題があるんじゃないか?」
「そうねぇ・・・実は彼女、王都では『発火点』って呼ばれていたらしいのよ。」
「発火点? 物騒な2つ名だな・・・」
「どうしてですか?」
「ほら、彼女も魅魔種らしく、顔もスタイルも良かったでしょう? それなものだから、パーティ内の男が、彼女を巡って争い出すんだって・・・」
「それは・・・マジで物騒だな。 パーティ崩壊の発火点ってことかよ。」
「ほらナ? やっぱりあの女はダメだナ。」
「でも、フィロミィナさん本人はすごく良い人だと感じましたけど?」
「確かにな。 ちょっと高慢なヤツが多い魅魔種にしては控えめな感じだったし、回復魔法も十分なモノだと思えたが?」
「ええ、そうね。 回復魔法以外にも、闇属性の魔法も使えるしね。 ただ・・・」
「どうしたシンシア?」
「彼女に色目を使ったら、あなたを殺すわ。 いいわねグスタフ?」
「お、おう・・・肝に銘じておくぜ。」
「ちょうどウチのパ-ティには、フリーの男性はいないんだし、平気じゃない?」
「クロエ・・・分かったナ。 クロエが言うんなら仕方ないんだナ・・・けど・・・」
「けど?」
「ネコタは、あの女を見るのも禁止ナ?」
「ミオ、さすがにそれは無理だろう?」
(ミオさんほどカワイイ人でも、浮気の心配とかするんだなぁ。)
「よし、じゃあフィロミィナで決まりって事でいいか?」
「「「異議なし。」」」
「仕方ないのナ。」
「じゃあシンシア、悪いがフィロミィナに話付けて来てくれないか?」
「え? 私?」
「おう、俺は無実の罪で殺されたくねぇからな。」
「分かったわ。 クローエ、明日私に付き合ってもらえるかしら?」
「うん、分かった。」
翌朝
朝食の後、私とシンシア2人でギルドに向かった。
ギルド内を見渡してみるが、フィロミィナの姿は見つけられなかった。
「フィロミィナ・・・いないみたいね。」
「そうだね。 私、ちょっとカレンさんに聞いてくるね。」
私は、受付カウンターにカレンの姿を認めたため、彼女の元に向かった。
「カレンさん、お早うございます。」
「クロエさん、いらっしゃい。 何か御用かしら?」
「はい。 フリー治癒士のフィロミィナさんを探しているんですが、ご存じありませんか?」
「ああ~、発火点ね。 今日はまだ見ていないかな? だとすると、彼女が来るとしたらお昼ごろだよ。」
「あれ? そうなんですか?」
「うん。 クエストが決まっていない時は、昼ごろまで寝ているみたいよ。」
「へ、へぇ~。」
「話してみると、スゴい控えめで人当たりも良いんだよね。 なんで発火点なんて2つ名が付いたのかしらね?」
「ですよねぇ。 私もフィロミィナさんは凄く良い人だって感じましたから。 それじゃあ、昼頃に出直します。 フィロミィナさんが先にいらっしゃったら、星夜の灯火が探していたので、ここで待っていて欲しいって伝えていただけますか?」
「分かったわ。」
「それじゃあ、一旦引き上げますね~。」
私はシンシアと合流して、一旦ギルドを後にした。
「昼まで寝ているかぁ・・・」
「うーん、魅魔種・・・って言うか、妖魔族は全般的に夜の方が強そうなイメージはあるよね。」
「そうね。 クローエ、昼までって結構時間あるけど、一旦ホームに帰る?」
「いえ、久しぶりに図書館に行ってみたいと思います。」
「あら、図書館? じゃあ、私も一緒に行ってもいいかしら。」
「シンシアは、本好きだものね。 図書館は良く行くんでしょう?」
「いいえ、行かないわね。 誰とも分からない人が触ったものは、本であってもあまり触れたくないんだけど・・・でも、どんな蔵書があるかちょっと気にはなっていたのよね。」
「あー。 エルフあるあるだね。 シンシアでもそう言うのあるんだね。」
「そうなのよね。 エルフのダメな所だって自分でも分かっているんだけどね。 エルフの気質っていうか・・・そういう所は、私もやっぱりエルフなんだって思うわ。」
「生まれついてのものだってのは仕方ないかもね。 それでも、シンシアは大分一般寄りだって思うけどね。」
「私もそのつもりなんだけどね。」
そんな話をしながら歩くうちに、図書館に到着した。
図書館の受付には、レンさんがいた。
「レンさん、お久しぶりです。 久しぶりに来ちゃいました。」
「クロエさん!? お久しぶりですね。 もういらっしゃらないのかと思っていました。」
「いやぁー・・・ちょっと色々とありましてね。」
「ああー、ウワサ聞きましたよ。 キュートラ事件ですよね。 あの時の連中が、あんな大事件を起こすなんて驚きました。」
「そうなんですよねぇ・・・」
「ところで、そちらのエルフのお姉さんは、クロエさんのパーティの方ですか?」
「ええ、ウチの参謀兼お母さんのシンシアです。 シンシア、こちらは図書館司書のレンさんです。 以前に私が調べ物していたときにお世話になったんですよ。」
「ダレがお母さんか!! ゴホンっ、えーっとレンさん? ウチのクローエが大変お世話になったようで、ありがとうございます。」
「いえいえ、大したことは・・・それで、本日は何かお探しの本がありますか?」
「えーっと、特にコレってのは無いんですが、少し時間が空いてしまったので、読みたい本を探すって感じです。」
「そうですか。 それでは、時間の許す限りゆっくりして行って下さい。」
「はい。 ありがとうございます。 じゃあ、行こうシンシア。」
「あれ? そんな感じ?」
「え?」
「いえ、なんでもないわ。 それじゃあレンさん、失礼するわね。」
それから、2時間ほど図書館に滞在したが、シンシアは早々に何か気になる本を見つけたようで、すぐに閲覧場所に陣取ると、ひたすら読みふけっていた。
知らない人が触れた物はイヤだって言っていたのに、やはり知識欲の方が上回ってしまうんだろうか?
私はしばらくの間、本のタイトルを眺めて歩いていたが、鉱石関係の本を発見したので、その内1冊を手に取り、閲覧場所で少し読み始めたのだが、あっという間にお昼近くになってしまったので、シンシアに声を掛けて図書館を出る。
もちろん、図書館を出る前には、レンさんには挨拶はしたよ。
「うーん、やはり本はいいわね。 図書館か・・・蔵書の量も多いし、私もヒマみて通おうかしら?」
「やっぱりエルフは知識欲には勝てないんだね。 私も前の調べ物の時から、結構本読むの好きになったんだよ。 ただ、中々時間がね・・・鍛冶もやらなくちゃだし。」
「クローエは、そうよねぇ・・・ところで、お昼はどうする? 先に食べて行く?」
「いえ、このままギルドに行きましょう。 フィロミィナさんを待たせるのもなんだし、もし、フィロミィナさんが加入を了承してくれるのなら、一緒にお昼食べるのも良いんじゃない?」
「そうね。 それじゃ、ギルドに行きましょうか。」
正午を過ぎた頃に、ギルドに到着した。
「お、クロエちゃん。」
「え、エイミーさん・・・」
「そんなに警戒しないでよ~。 この間の件は、エイミーお姉ちゃんが悪かったってばぁ~許してよぅ~。」
「いえ、許すも何も・・・エイミーサンニハ、カンシャシカナイデス。」
「なんかぎこちないんだよなぁ・・・」
「ところで、カレンさんは交代ですか?」
「そうだよ、私と交代。 発火点のことだよね? あっちの奥にいるよ。」
「あ、ホントだ。 ありがとうございます、エイミーさん。 カレンさんにもよろしくお伝えください。」
フィロミィナが、隅っこの方で隠れるように座っているのが見える。
私は、早速フィロミィナに向かって足を進めた。
「エイミー?」
「は、はい・・・シンシアさん。 その節は・・・」
「まあ、粗相は無かったら大目に見てあげるけどね、アンタは飲酒の適量を知りなさい。」
「はい・・・面目ありません。」
「フィロミィナさ~ん、お待たせしちゃいました。」
「えーっと、クロエさん・・・でしたね。」
「はい、クロエです。 以前は、私たち星夜の灯火のクエストに、手をお貸しいただいて、ありがとうございました。」
「いえ、大したお役にも立てずに、ごめんなさい。 それで、何か用があるって受付の方に聞いたんですけど・・・」
「えーっと・・・シンシアー!! 早く来てよ!!」
「ゴメン。 お待たせしちゃったわね。」
「いえ、こちらこそすみません。」
「フィロミィナさん、単刀直入に言わせてもらうわ。 私たちのパーティへの正式加入をお願いしたいんだけど、どうかしら?」
「そうですか・・・やっぱりダメですか・・・」
「え?」
「え?」
「何言っているのよ、私はパーティへの加入をお願いしたんだけど?」
「そうですよ、フィロミィナさん。 ぜひ、私たちにお力をお貸しください。」
「えっ!? 本当ですか!?」
「そうよ。 ぜひお願いするわ。」
「うっ・・・良かったぁ~~・・・」
「フィロミィナさん?」
「私、以前にいた王都で、とんでもない2つ名を付けられて、王都に居づらくなってしまって・・・」
「フィロミィナさん・・・」
「アローヘッド市には来たばかりなのに、もうその2つ名が広まってしまっていて・・・近づいてくるのは遊び目的の男ばかりで、もうパーティに誘ってもらえるなんて思っていなくて・・・正直言って、お金もあんまり残っていなくて、どうしようかと・・・」
「うちのメンツには男が2人いるけど、どちらも売約済みだから、あなたに言い寄るなんてことは無いから安心しなさい。 もし、変な気を起こしたら私が成敗してやるわ。」
「シンシアさん・・・」
「シンシアでいいわよ。 私もフィロミィナって呼ぶけどいいかしら?」
「もちろんです。 クロエさんも、フィロミィナって呼んでください。」
「分かりました。 私もクロエって呼び捨てで呼んでくださいね、フィロミィナさん。」
「はい、クロエさん。」
「あんたたち・・・冗談で言っているのかしら? さん付けは止めなさいって話でしょう?」
「「あ・・・」」
「じゃあ、フィロミィナ。 早速だけど、お昼一緒にどうかしら?」
「はい。 よろこんで!! し・・・シンシア、クロエ。」
こうして、私たちのパーティ「星夜の灯火」は、妖魔族の治癒士フィロミィナを新たに仲間に加え、6人編成になったんだ。




