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鋼と虎  作者: 釘崎バット
第10章 カメリアとクー5

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第9話

 再び5人全員が揃った、私たちの冒険者パーティ「深紅(クリムゾン)」は、早々にアローヘッド市を発ち、王都サジタリア、アローストリング市、第10国に入りレゴート市で、それぞれでいくつかのクエストをこなしつつ、2年ぶりにサウス=カプリコ市に到着する。


 2年前にクーを救出した、ブルグマンシアの施設の建物は現在でも残っていたが、周りを囲んでいた塀は取り払われ、現在は普通の集合住宅として利用されているようだった。


 私たちは、港が近い場所に宿を借りて滞在し、クエストをいくつもこなした。

 この間は、5人組の「深紅」としてではなく、エルザとパトリックのチーム「赤鬼(レッドオーガ)」と、私とクーのチーム「月光(ムーンライト)」が交互にクエストを行い、残った方は港を監視しているような状況であった。

 ゲオルグは、基本的に単独で諜報活動を行い、たまに赤鬼か月光の行うクエストに参加するといった感じである。

 なお、エルザはいつもの赤い両手斧に赤い皮鎧ではなく、両手剣に茶色い皮鎧といった出で立ちで、パトリックも全身鎧ではなく、チェインメイルを金属板で補強した鎧を着こみ、武器は戦鎚で同じだが、いつも使用していた物とは別の鎚を使っていた。


 サウス=カプリコ市でのクエストでは、現在までに2度ほど人探しのクエストを請け負い、無事に解決もしたのだが、ブルグマンシアの関与があるかどうかは分からなかった。



 サウス=カプリコ市での滞在も2か月以上経ち、すでに年は明けて3,172年となっていた。


 余談だが・・・1月3日の夜には、ルーナさま(仮)が私の所に現れるようになってから1周年だという事で、今までで一番長時間バカ話に付き合わされた。

 ルーナさま(仮)の襲来による魔力消耗にも慣れ始めていた所であったが、この「ルーナさま(仮)降臨1周年記念独演会」による魔力消耗は過去最大であり、翌4日は丸1日動けないほどの疲労っぷりであった。

 本当に油断できない女神さまだ・・・

 もう認めよう。 ルーナさま・・・(仮)は、1周年で卒業だ。


 6日の夜、宿の女部屋に深紅のメンバー全員で集まり会議が行われる。


「思ったよりもブルグマンシアの痕跡は見つからないな。」

「やっぱり、誘拐そのものは他の国の方が多いんじゃない? 第7国とか。」

「そうだな。 ここの港から商品の出荷がされているのは間違いなさそうなんだが、サウス=カプリコには、出荷までに誘拐した人間たちを集めておく施設があるだけで、サウス=カプリコを始め、第10国内での誘拐はあまり行われていない・・・なんて可能性はあるかも知れねぇな。」

「そういうこともあるのかもね。」

「よし、じゃあココを出て、一旦レゴート市まで戻って、そこから北上しようか。」

「え? レゴートから北上って!?」

「ああ、第7国に向かう。 レゴートから近いとなると・・・」

「エシャマリ市ですね。」

「クー?」

「ツキ姉、私のことを心配してくれているんだと思うけど、私は平気だよ。」

「でも・・・第7国は、避けた方が良いんじゃない?」

「前も平気だったし、本当に第7国で獣人が攫われているのなら・・・私は助けたいって思います。 それに、今はツキ姉とゲオルグさん以外にも、エルザさんとパトリックさんも一緒ですから大丈夫です。」

「う、うーん・・・もちろん、何があってもクーに手は出させないけど・・・」

「まあ、ウルススの1件からも1年半以上経ってんだ。 特にクーを探しているって話も聞かないし、大丈夫じゃないか?」

「うーん・・・」

「ツキ姉、私の我儘に付き合ってくれるんでしょう?」

「もう・・・クーには(かな)わないわね。 分かったわ、えしゃまる市? 行ってやろうじゃないの。」

「エシャマリ市ですよ、ツキ姉。」

「よっしゃ、んじゃあ決まりだな。」


 翌日から、旅に必要な買い出しなどを行い、2日後にはサウス=カプリコ市を出発、レゴート市を経由して第7国に入国。

 エシャマリ市に到着したのは、サウス=カプリコ市を発ってから20日ほど経った後だった。




 エシャマリ市の門をくぐり、まずはこの街のギルドに向かった。

 そこで、同行していた獣人族と人族の女性たちと、ならず者の遺体を引き渡す。

 その後、簡単な事情聴取を終えた女性たちが「皆さん、本当にありがとうございました。」などと、代わるがわる私たちにお礼を言って各々の家に帰って行った。


 実は、第10国から第7国に入り、程なくした場所で窓もない不自然な馬車とそれを取り囲むようにしていた如何にもな風体の冒険者たちと遭遇したのだ。

 クーが、冒険者の腕にブルグマンシアの彫り物を認めたため、エルザとゲオルグが馬車に近づこうとしたところ、問答無用で襲い掛かって来た。

 ブルグマンシアの連中は10人程度いたが、その程度では我々深紅にとっては敵ではなく、直ぐに戦いは終了した。


 生きた証人を残すために、数名は戦闘力を奪う程度にして捕虜にしていた(連中の馬車を再利用した。)のだが、彼らはエシャマリ市に到着する前に全員亡くなってしまった。

 連中の死体を調べたところ、恐らく時限式で毒か何かを注入する呪具を、首に付けられていたようであった。

 毒であれば、私の解毒魔法かクーの十六夜月で治せたのだろうが、いかんせん気が付くのが遅かったので治療できなかった。


 エシャマリ市の宿で、深紅全員の揃った会議が始まる。


「ブルグマンシアの・・・下っ端の連中には、裏切り防止用の魔法具を付けられているようだな。」

「そうだな。 以前には見られなかったものだな。」

「あの首輪ですよね? どういったものなんでしょう。」

「多分、発動するまでの時間が決まっていて、発動前に何らかの措置を行って、発動時間を延長するか解除しないといけない・・・って感じかしら?」

「そうか・・・でもそれが分かったとしてもなぁ・・・」

「何を言っているのよ、エルザ? そう言うのがあるって分かった以上、私たちには問題なく対処できるでしょう?」

「そうなのか?」

「あれって、多分呪いのアイテムの類でしょう? 呪いであれば、クーの十六夜月で解除できるはずだし、万が一発動して毒が撃ち込まれてもクーの十六夜月なら解毒できるわ。 それに毒だったら私でも解毒できるわよ。 今回死なせてしまったのは、毒に気付けなかったからね。」

「そうですね。 私が気付けなかったから・・・すみません。」

「いや、クーの所為じゃないぜ。 しかし・・・下っ端全員に魔法具、いやこれこそ呪具だが、それを全員に付けているのか? 呪具にしたって、そう簡単に造れるものか? 費用だって結構かかるだろうに。」

「そうね。 夜魔種は、そういう呪い的なものが得意な人が多そうだけど・・・大量生産できる方法があるってことかしらね? エルザが前に言っていたじゃない? 捕らえた人たちを服従させる呪具があるって。 それと同じものなのかもしれないわよね。」

「そうか、奴隷用と下っ端の制御用・・・同じものでも目的は達成できるな。」

「そうね。 呪具としては、勝手に外せないってだけで、毒の発動には魔法ではなく、なにか物理的な方法が取られているんじゃないかな? それなら、その方法を知っている人間がいれば、魔法を使えなくても出来るしね。」

「なるほどね。 それを隊長クラスとか拠点のボスとかが担っている訳だな。」

「多分ね。」

「よし、呪具が解除できるのなら、逆にそれを利用してクチを割らせることも出来るかもな。 恐らく下っ端連中の中には純粋な悪人って訳じゃなく、呪具で従わされているヤツも多いだろうしな。 呪具が解除できると知ったら、寝返るヤツはいるんじゃないか? 黙っていればいずれ確実に死ぬことは知っているんだしな。」



 次の日も私たちは、エシャマリ市のギルドに出向いた。

 やはり、エシャマリ市やその周辺の村では、行方不明者が数多くいるらしい。

 第7国だからって言うのもあるのだろうが、行方不明になっているのは獣人族の女性が多いようだ。

 クエスト掲示板には、昨日救出した女性たち以外にも、不明者の捜索依頼は掲示されていた。


 私たちは、しばらくエシャマリ市を拠点として、第10国との国境方面でのクエストをこなしつつ、第10国に向かう集団の監視を行った。

 そうしているうちに、再度ブルグマンシアの輸送隊を発見。 囚われていた人たちを救出すると同時に、輸送隊の隊長を含めて数名の捕縛に成功した。


 捕らえた下っ端は、やはり無理やりに従わせられていたようで、呪具の解除をチラつかせると、直ぐに拠点の場所を吐いた。

 輸送隊の隊長は、根っからのブルグマンシア構成員で、中々口を割らなかったが、自分の呪具の発動期限が迫って来ると、とうとう自供に及んだ。

 隊長から新たに得られた情報は、下っ端の呪具の発動期限の延長方法(これには、部隊ごとのキーアイテムがあり、他の部隊では使えないそうだ。)と、拠点のボスクラス(ラッパが色付き)よりも上位のクラスのブルグマンシアマークについてだ。

 なんでも、その上の階級は、ガイコツの背に骨で出来た羽が描かれているそうだ。



 数日後、捕縛したブルグマンシアから得た情報をもとに、私たちは連中のアジトを急襲した。

 同じく捕縛した連中から得た情報で、アジトには多くても20名もいないことは分かっていたので、私たちだけで行けるだろうってことになったので、深紅単独で行った。


 最初に、攫われた人たちが監禁されている場所を避けて、私の強力な雷魔法「轟雷」を3発ブチ込んだ。

 私の先制魔法攻撃により半壊した建物から、あわてて飛び出して来る悪党共を、エルザ、パトリック、ゲオルグの3人が出て来た端からどんどん倒していく。

 私は、轟雷の後は遠くから白光によって3人をフォローする。


 クーは、監禁されている人たちを救うために、エルザたちとは反対側から、まだ崩れていない建物側に侵入する。

 クーには、捕虜を取ることは考えずに、とにかく敵に情けを掛けないように言い含めてある。 ただし、この拠点の長を見つけた場合は、可能ならば生かして捕らえるようにと伝えた。


 事前に拠点内部の位置情報や、敵の数を把握できていたため、私たちの襲撃は大成功だった。

 私たち自身の損害はゼロと言ってよく、囚われていた人たちは全員無事に救出できた。 

 唯一、拠点の長については、エルザが追い詰める所まで行ったのだが、長は自らの命を絶ってしまった。 隷属の呪具による死を知っている以上、捕らえられて拷問などを受けるのは合わないと思ったのだろうか。


 エシャマリ市に戻り、誘拐された人々と解放。 以前に捕えていたブルグマンシアと、今回新たに捕らえたブルグマンシアをギルドに纏めて引き渡し、宿に戻り眠りについた。



 翌朝、私たちの泊まる部屋のドアを激しく叩く音で目が覚めた。


 ドアを開けると、宿の主人がいた。

 彼の話によると、早朝にエシャマリ市ギルドの使いがやって来て、私たち「深紅」のメンバー全員でギルドに来て欲しいとのことであった。


 呼び出しに応じてギルドに行くと、昨日救出した女性たち以外に、以前に助けた人たちも集まっており、ギルド長自らも出て来て感謝の意を示された。

 さらに翌日には、なんと!! ギルド主催でパーティーまで開いてくれた。


 エシャマリ市に近いブルグマンシアの拠点は潰してしまったため、エシャマリ市(この)近辺は、しばらく安泰になったと思われたので、数日後にはエシャマリ市を離れることになった。



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