表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
鋼と虎  作者: 釘崎バット
第10章 カメリアとクー5

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

115/127

第8話

 深紅のメンバー全員が揃っての夕食の後、エルザとクーは、同じベッドで並んで横になる。


「そう言えば、アタシとクーで一緒に寝たことって無かったよな?」

「そうかもですね。」

「まあ、カメリアがお前の事を手離さなかったからな。」

「私は・・・実は、エルザさんは私との距離を少し開けているのだと思っていました。」

「そうか? 距離を取っていたか・・・それは無かったとは言えないかもな。」

「・・・・・」


「実は、アタシには兄と姉はいるんだよ。 だけど、兄姉は皆アタシの事が好きじゃないみたいでな。 とにかく邪険にされていたんだよな。」

「エルザさん・・・」

「だもんでさぁ、アタシは仲の良い兄弟姉妹ってのが信じられなかったんだよな。 お前とカメリアの仲が良いのも、本当の姉妹じゃないからだって思ってた。」

「・・・・・」

「でも、お前と一緒にしばらくいてさ、カメリアじゃないけど、お前のこと妹みたいに思えてきてな、こんな妹が欲しかったなぁ・・・なんて思ったりしてさ。」

「・・・・・」

「だから、自分の身を顧みないお前を、姉として冒険者の先輩として、お前に真っ当な冒険者の心構えってのを叩き込もうと思ったんだが・・・」

「・・・・・」

「カメリアは、違ったんだな。」

「はい・・・ツキ姉は、そのままでいいって言ってくれました。 でも、今の私は弱いですから・・・私は強くなります。 そしていつかは・・・エルザさんだって・・・追い越しちゃい・・・ます。」

「そうだな。 お前の思いを遂げるには、アタシなんぞは軽く倒せないとならんよな。」

「は・・・い・・・」

「かなり眠たいみたいだな。 もうお休みクー。」

「はい・・・お休み・・・なさい・・・」


 エルザは、眠ってしまったクーの頭を優しく撫でながら、しばらくクーの寝顔を見守っていた。



 翌日


 エルザから、第6国での話を聞かされた。

 第7国から第6国に入り、最初に立ち寄ったのはシュルマという都市。

 そこから、王都ヴァルゴニアに入る。 ヴァルゴニアでは、約2か月位は何だかんだと理由を付けられて、歓待の宴や秩序神を始めとした神々の神殿を案内されたりと、肝心の要件を果たせる状況にはさせてもらえなかったそうだ。


 まあ、ある程度は想定内であったので我慢しつつ、ようやくホーリーオーダーとの接触を果たすことができた。


 ホーリーオーダー現団長にも面会することが出来たらしいが、基本的に秘密主義のホーリーオーダーから、ブルグマンシアの情報は中々引き出すことが出来ず、協力も得られなかったが、何度も通い続けて、多少の信頼と情報を得ることが出来たのだそうだ。



「前にさ、ブルグマンシアからの供述の中に、誘拐するのは女性で、しかも獣人の女性が最優先・・・みたいな話があったのは覚えているか?」

「ああ、確かそんな話はあったな。」

「それはな・・・」

「誘拐された獣人たちは、南方大陸ディアボリクスに輸出されているからでしょう?」

「カメリア、なんで知っているんだ!?」

「だって、第10国から輸出されていて、第7国や第9国・・・特に第7国での事件が多いでしょう? そして、南方大陸は獣人が少ないって聞いているし。 そんなのスグに予想はできるじゃない?」

「いくら獣人が少ない土地だからと言って、獣人を集めてどうするか考えたのか?」

「さあ・・・南方大陸は、寒い土地が多いから、寒さに強い種族・・・白熊種とか? そういうのが居る程度で、他の大陸では大多数を占める犬系や、特に猫系の種族が少ないのでしょう? 人族や妖魔族の中に一定数はいるであろうケモミミやケモシッポ好きが犬猫系の獣人族を求めているんじゃないの?」

「お前は・・・鋭いんだかボンクラなんだか分からん奴だな・・・」

「何ですって?」

「確かにケモミミなんかが好きな人族は結構いるけどな。 獣人って、単純な身体能力で言えば人間の中では上の方だろ? 犬猫系なら大抵は身のこなしに秀でているし、クーみたいな虎種なら、加えて力も生命力も強い。 それに人間の中では、魔力に恵まれていない種族だ。」

「それは、確かにそうだわね。」

「対して、ディアボリクスで覇権を握っている妖魔族は、闇魔法の得意な種族だし、特に夜魔種はエルフ種にも劣らない魔力自慢の種族だ。 その夜魔種の中に隷属の魔法具・・・呪具って言った方が良いかもな。 その隷属の呪具の作成に長けたヤツらがいるんだと。」

「なるほどな。 魔法具・・・いや呪具だと物理的な力では簡単には壊せないし、仮に無理やり壊したら、その呪いが発動しちまう。 獣人なら身体能力が高いから、力仕事なんかには向いているし、魔法が使える者が少ないから呪具を魔法でどうこう出来にくいってことか?」

「そうなんじゃないかな?」

「けど、なんで女なんだ? いくら力が強いっていっても女よりは男の方が基本的には上じゃないのか?」

「さあな、そこまでは分からん。 ハーフ獣人を増やそうと言うのか、男の獣人だと捕まえるのも運搬するものリスクが高いとか・・・それか、集団で反乱されたら困るとかか? もしかしたら、カメリアが言っていたように、ケモ娘好きのゲス男が大勢いるのか。」

「じゃあ、私の考えは当たっているじゃないのよ。」

「あれ? そうなるのか?」

「ゲスな話になるが、最初は愛玩用で、飽きたら強制労働ってか?」


「・・・・」

「クー? 大丈夫?」

「許せない・・・ディアボリクスもだけど、そんなヤツらに提供するために獣人を捕まえている人たちが・・・」

「人を誘拐して、売り物にしようだなんて人間は、皆クズしかいないわ。」

「クー、すまないな。 同じ妖魔族として恥ずかしいことだ。」

「パトリックさんが謝ることなんてないです。 私は妖魔族が悪いなんて思っていません。 種族がどうのって話じゃないです。 その考えと行いが全てです。」

「それで、どうするつもりなのエルザ? さすがに南方大陸に乗り込むって話ではないでしょう?」

「胸糞悪い話だが、さすがに乗り込むわけには行かんよな。 まずは、囚われた人間を1人でも多く助けるのと、ブルグマンシアに加担するヤツを1人でも減らすしかないな。」

「そうね。」


「でさ、ホーリーオーダーからの全面協力は得られなかったんだけどさ、アタシらの持っていた情報が効いたみたいでな、サジタリアとアローストリング、2つの都市に潜伏しているホーリーオーダーとは接触できる算段を得られた。」

「マジか!?」

「ああ、ただし秘密厳守だぜ? それに協力してくれるって訳じゃない。 こっちが得た情報を渡すための・・・って感じだが。」

「なによソレ。 いいように使われているだけじゃない?」

「まあ、当面はな。 だが、ホーリーオーダーと接触できる手段を得られただけでも、今回は十分だと思っている。 これから信用度を上げて行いけば、もう少し良い状況にはなるんじゃないかな?」

「そう思いたいけどね。」


「それで・・・カメリア。」

「何よ?」

「例の黒い剣なんだが・・・」

「ダメだったんでしょう?」

「ああ、すまない。 その剣を持っているヤツが、何処にいるのかは分からん。」

「まあ、そうでしょうね。」

「怒らないのか?」

「別に・・・秘密主義のホーリーオーダーが、団員のことをペラペラ話す訳は無いって、私でも分かっているわよ。」

「そうか、悪いなカメリア。 分かったのは、黒い剣を持っている団員の名前が『マシス』って言うらしいことだけだ。」

「へぇ~、そう。 マシスねぇ・・・マシスですって!? 名前が分かったの!?」

「え!? ああ、多分・・・だけどな。 そいつは結構団員内でも結構有名なヤツらしくてな。 入団してから数年程度らしいが、変わった剣と剣術の使い手で、めちゃくちゃ強いらしいぜ。 第6国でアタシらの監視役だったホーリーオーダーに中に、ちょっとチョロいヤツがいてな。 口を滑らしまくりだったんよ。」

「そ、そうなのね・・・ありがとうエルザ。 今回は名前だけでも十分すぎるわ。」

「良かったねツキ姉。 探している情報が聞けて。」

「そうだね・・・それで、エルザ? 今後はどうするつもりなの?」

「まずは、第10国にもう一度行ってみたいと思っている。 レゴートとサウス=カプリコだな。 あとは、ロアー・リブとアローストリング・・・その辺を周りながら冒険者稼業を行いつつ、ブルグマンシアの情報探しだな。」

「そうなのね。 分かったわ。」

「おう。 それで、明日にでも発ちたいんだが・・・行けるか?」

「もちろんよ。」

「はいっ! もちろんです!!」

「俺もそれでいいぞ。」

「もちろん俺もだ。」

「よし、じゃあ今日は各自足りないものを揃えて、早くに寝てくれよな。」

「「「「了解!!」」」」


 さっそく、ゲオルグとパトリックが買い物に出かけ、続いて出かけようとしていたエルザを呼び止める。


「エルザ。」

「何だよ?」

「あなたにコレを上げるわ。」

「何だよ、改まって・・・ってコレ!?」


 エルザは、私がエルザに握らせた物を見て驚いた表情を浮かべる。

 エルザの手の中には、赤の中に一筋の金色が流れる組紐があった。


「コレって、お前らの・・・お揃いのヒモじゃないか!?」

「そうよ。 組紐って言うのよ。」

「私たちの旅の途中で、アッパー・リブ市に寄ったときに買ったんです。 ツキ姉の発案なんですよ。」

「そうか・・・ありがとうカメリア。 嬉しいぜ。」

「そう? それなら買った甲斐があったわ。」

「ああ、さっそく使わせてもらうよ。 ありがとうな。」


 なんか、エルザは照れた感じであったが、組紐で自分の赤髪を縛ると、意気揚々と屋敷を出て行った。


 そして、翌日


 私たち「深紅」は、久しぶりに5人揃って旅に出る。

 まず目指すのは、サジタリア、アローストリングを経由して第10国のレゴート市だ。


 馬車に揺られながら、私はエルザから聞いた、黒い剣を持つホーリーオーダーの事を考えていた。


(黒い刀を持つ、変わった剣術の使い手「マシス」か・・・って、アレ!? 確かこの国では剣の鞘のことを「シース」って言うわよね? まさか、真鞘兄さまは自分の名前の「鞘」の部分をシースにして、真シース・・・それでマシス!? 私のカメリアもツバキをこの国の言葉に変換しただけだけど・・・兄さまも似たような発想だったのかも!? これであのホーリーオーダーが、真鞘兄さまである可能性が一段と高くなったわね。)


 さすが、半分とはいえ血の繋がった兄妹だ・・・なんて、私は思ってしまった。



評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ