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鋼と虎  作者: 釘崎バット
第10章 カメリアとクー5

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第3話

 私の誕生会が終わってから、何度か街道の野獣駆除などのクエストに参加した。

 エルザとパトリックのいない現在の私たちは「深紅(クリムゾン)」を名乗っておらず、臨時のパーティ名「月光」(もちろん、クーの命名だ。)として活動していた。


 クーは「遠当て」を目にした冒険者たちから、腕が伸びているんじゃないか思われていたらしく(そういえば、アッパー・リブの時もそんなことを言っていた奴らがいたような気がする。)、いつからか「長腕」とか「伸腕」とか呼ばれ始めていた。

 ちなみに私は、白い髪や光属性魔法からか「白銀」とか、もっと凄いのだと「白銀姫」と呼ばれるようになっていた。 まあ「氷嵐の魔女」よりは幾分マシかもしれない。 姫だしね。


 7月5日、王都での冒険者生活の最後として、少し重めのクエストを請けることになった。 5日になったのは、月イチのルーナさま(仮)襲来により、4日は私が憑かれ・・・もとい、疲れていたためだ。


 王都の北西方向、徒歩で3日ほど進んだ距離にある、ちょっとした森に棲みついているという魔物の討伐だ。

 このクエストは、私たち3人以外にも4人組と5人組、2つのパーティが参加しており、総勢で12名の集団になっていた。

 もっとも、パーティ同士で協力しようなんて雰囲気はまるで無いのだけど。


 私たち以外のメンツは、女性治癒士が1人いるだけで、後はむさ苦しい男ばかりであった。

 ゲオルグの方が大分おっさんだけど、他の連中に比べたら遥かに紳士に見えてしまう位のしょうもない連中ばかりに見えた。

 治癒士の女性は、妖魔族・・・それも美女が多くスタイル抜群な魅魔種であり、褐色肌に紫色の髪を持つ、妖艶な美女といった感じで、パーティのメンバーに随分と愛されているようだった。

 治癒士本人にはその気は無い様で、迷惑そうにしているように見えたが。



 王都を発って2日目の夜のことだった。


「ねえキミ、クーちゃんだっけ? 『伸腕』とかって呼ばれているよね? 可愛いねぇ、年はいくつ? 彼氏はいるのかい?」

「クーちゃんは、トラ獣人? 超カワイイじゃん!」

 他のパーティの奴らが、クーにちょっかいを出していた。


「クエストの最中ですよ? やめてください。」

「そんなこと言わないで、せっかく一緒のクエストをやる事になったんだし、仲良くしようぜ?」


 クーはまだ13才で成人前だが、体はかなり成長して身長は既に私よりも高く、胸もますます育ってきている・・・いや結構デカい。 胸以外・・・腰回りも立派だ。

 可愛らしかった顔つきも、少しキレイ寄りになりつつあり、パッと見には成人しているように見えなくもない。


「おい、お前らやめておけよ。」

 珍しいことに、ゲオルグが止めに入った。

 なるべく人の印象に残らないように、余計な事には介入しないようにしている彼にしては珍しい言動だ。

 ただ、同じように他人と拘わらない私とは違って、ゲオルグは人間観察を怠らない。


「なんだよ? おっさん。」

「うちのクーに、ちょっかいを出さない方が身のためだぜ?」

「なんだと? グレンとか言ったか? そのグレンさんが俺たちをどうこうできるってか?」

「まあ、それは否定しないけどな。」

「なんだと!?」

「お前ら・・・この殺気に気付かないのか? それ以上クーにちょっかいを続けるんなら、クーの保護者に殺されるぜ?」

「保護者って『白銀姫』とか呼ばれている、あの陰気な女のこと・・・!?」

 私の方に向き直ったクズ冒険者は、私の顔を見るなり言葉を詰まらせ、顔を背けた。


「ほらな。 魔物の相手をする前にケガなんかしたくないだろう? 頼むから、これ以上は止めてくれよな?」

「チッ! なんなんだよ・・・色は白いが『白銀』よりも『ドス黒』の方が合っているぜ。」

「ちょっと!! 私の大事なお姉ちゃんへの暴言は許しませんよ!!」

「おい、早く行こうぜ。」

「畜生っ・・・覚えていやがれっ!」

 いかにもザコっぽいセリフを吐いて、クーにちょっかいを掛けていた男たちは引いて行った。


「リア姉、短気を起こさないでくれてありがとう。」

「ええ、まあグレンが割って入ってくれなかったらヤバかったけどね。 グレン、ありがとね。」

「お、おう・・・巻き添え食って死にたくなかったってだけなんだけどな。」

「ゲオ・・・いえ、グレンさん・・・」

「まあ、あんなクズどもに、俺の()()()()()()を汚されてたまるかってのが本音なんだけどな。」

 グレンはクーの頭を撫でながら、少し照れたように言う。

 私を筆頭に、深紅のメンバーは、皆クーにメロメロだ。


「ねえグレン? 明日くらいには、例の場所に着くのよね?」

「そうだな。」

「今更だけど、危険な魔物ってなんなの?」

「え? リア姉知らなかったの?」

「うん。」

「さすがは白銀姫さまだぜ。 どんな魔物でもお前にとっちゃあ関係ないってか?」

「まあ、そうだけど・・・で、どんなヤツなのよ?」

「イマイチはっきりとはしていないんだが・・・割と大きい蛇っぽいって話だな。 森の近くには沼とか・・・湿地もあるみたいだし、アナコンダとかかな?」

「アナコンダって、どの位の大きさですか?」

「確認されているのでは、3メートルくらいから大きいもので7~8メートル位になるんじゃなかったかな? 目撃情報では30メートルとか言っている話もあるけどな。 さすがにそれは盛りすぎって感じだろう。」

「そ、そうなんですね。 7~8メートルでも結構コワいですね。」

「どっちにしても、他の連中は信用できないからね。 私らでどうにかするつもりでいましょう。」

「そうだな。 カメリアがいればなんとかしてくれるだろうしな。」

「まあね。 クーは絶対に守るわ。」

「えー? 俺は?」

「あんたはついでだけど、クーのためにも守ってあげるわよ。」

「なんか、前にもこんな話したかもな。」

「もー、リア姉は・・・ツンツンしているけど、意外とテレ屋さんですよね?」

「「えっ!?」」

「ほら、リア姉もグレンさんも結構仲良しに見えますよ?」

「いや、そんな事は無いんじゃないかしら?」

「そうだぞ、クー。 それはそれで恐ろしいぜ。」

「あはははは・・・」


「あのぅ・・・お話し中に申し分けございません・・・」

 例の妖魔族美人治癒士が声を掛けて来た。


「あ、えーっと・・・治癒士の?」

「はい。 フィロミィナと申します。」

「私はクーです。 フィロミィナさん、どうかしましたか?」

「クーさん、すみません。 お塩を切らしてしまいまして・・・少し分けていただけませんか?」

「あ、はい。 どうぞ。」

 クーは、今日のスープ作りに使っていた塩の入った小瓶を治癒士に渡す。


「すみません。 すぐにお返ししますので・・・」

「あ、いいですよ。 私、予備も持っていますので、差し上げます。」

「そんな・・・申し訳ないです。」

「王都に戻るまでには、あと何日かかかりますし、ご迷惑でなければ貰ってください。」

「ありがとうございます、クーさん。 この御恩は忘れません。」

「大袈裟ですよ、フィロミィナさん。」

「本当にありがとうございました。 それでは失礼します。」

 お礼を何度も言いながら、褐色美人治癒士は自分のパーティの所に戻って行った。


「スゴい美人さんだったね。」

「そうだなぁ・・・イイ女だったぜ。」

「そうね。」

「リア姉は別格としても、エルザさんといい、フィロミィナさんといい・・・私が知っている中では三大美女です。」

「まあ、カメリアが美人なのは認めるけどな・・・しかし、なんでかカメリアのことは女としては見れないんだよな。」

「なんですって?」

「いやいやいや・・・だってお前、俺がお前をやらしい目で見てたら嫌じゃないのか?」

「それもそうね。」

「だろ? カメリアはなんか・・・絵とか彫刻とかを見ているみたいでな。」

「リア姉は、ルーナさまの生き写しですからね。 女神さまですよ? 女神さま。」

「女神さまねぇ・・・」

「何よ、文句あるの?」

「いや、別に無いでございますよ、女神さま。」

「ふん。」

「さあ、明日はいよいよ現場入りなんですから、リア姉もゲオルグさんも寝ちゃってください。」

「じゃあ、俺は眠るぞ。 見張り頼んだぜ、クー。」

「はい。 ほら、リア姉も早く眠ってください。」

「分かったわ。 あの男どもが寄ってきたらすぐに起こしなさいよ?」

「うん、ありがとうリア姉。」


 無事に夜が明け、魔物の目撃情報がある森に向かう。


 クーにちょっかいを出してきたパーティは、私たちから距離を取って前を歩いている。

 褐色美人治癒士のいるパーティは、逆に私たちの後方にいるが、どうもギクシャクしているように見える。


「なんか雰囲気悪くないですか?」

「そうだなぁ・・・前にいる連中はともかく、フィロミィナさんの所はなんかあったんかな?」

 フィロミィナのパーティは、彼女以外は男ばかり4人であるが、どうもその男たちが、なにやら(いさか)いを起こしているように見える。

 フィロミィナは、俯き加減に連中の少し後ろをトボトボと歩いている。


「別に良いんじゃない? 邪魔さえしないでくれれば何でも一緒よ。」

「まあ、そうなんだけどな。」

「でも、これじゃあパーティ同士の連携どころか、1パーティとしても機能しなく無いですか?」

「連中もプロなんだし、いざ戦闘ってことになれば、なんとかするんじゃねぇか?」

「そうね。 それに魔物なら私1人で十分よ。」

「そうだけど・・・リア姉、他の皆が危ない時には助けてあげてね?」

「そんな義理はないんだけど・・・」

「リア姉? そんな事言わないで・・・ね?」

「クーに言われたら仕方ないけど・・・魔物の討伐と、私たちの安全を優先するからね。 余裕があれば助けてあげるけど。」

「う、うん。 そうだね。」



 そんな話をしていると、目的地が見えて来た。

 現場の森まで1キロメートルほど手前で、一旦休憩を挟むことにしたのだが、クーに近寄って来たパーティの連中は「先行して様子を見て来る。」とか言って、森に向かって行ってしまった。


「大丈夫かな?」

「クーに良いとこを見せたいんじゃないの? もしかしたら、手柄を1人占めしたいのかもね。」

「そんなぁ・・・」

「まあ、目的地が一緒だったってだけで、協力して戦おうって訳でもないしな。 それより・・・」

「そうね。 こっちのパーティの方が問題ありだわね。」


 フィロミィナのパーティの男たちの言い争いが激化していた。 ともすれば、武器を取って争い始めそうな勢いも見える。


 全く、この段階でなにをやっているんだか、あきれるばかりだ・・・



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