表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
鋼と虎  作者: 釘崎バット
第9章 クロエとミオ5

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

107/123

第12話

 翌朝、ミオのベッドで目覚めた私が部屋から出ると、ちょうどシンシアも部屋から出て来た所だった。

 廊下でバッタリと出会った私たちは、お互いにぎこちない笑顔を浮かべ、挨拶を交わす。


「お、おはようシンシア。」

「ええ、おはようクローエ・・・ちゃんと眠れたかしら?」

「うん。 結構ガッツリ寝ちゃったみたいだよ。」

「そう・・・私も意外なほどに良く眠れたわ。」


「・・・・・・」


「そ、それじゃあ・・・居間に行ってみる?」

「・・・そうね。 ほぼ確実に大惨事になっていそうで、ちょっと怖いわ。」

「うん、そうだね・・・でも行かないと。」

「そうね、行きましょう。」

 意を決して私とシンシアは1階の居間に向かう。


 1階から漂う異様な臭気は・・・無かった。


 居間に付くと、床に敷き詰めていた布や紙は跡形もなく、昨晩端に寄せたテーブルは元の状態に戻されていた。


 テーブルには、頭を抱えて突っ伏したまま、何かブツブツ呟いているエイミー。 その向かいには猫田さんが座っており、猫田さんの膝の上には、猫田さんに抱き付いたまま眠っているミオがいた。


「・・・お、おはようございます猫田さん・・・」

「・・・やあ、クロエ、シンシアもおはよう・・・」

「おはよう猫田・・・大丈夫?」

「ああ、少し眠たいけれど・・・問題ない、大丈夫だよ。」

「そう・・・それはなによりだったわ。」

「ああ、心配かけたね。」


「猫田・・・何があったのか聞いてもいいかしら?」

「グスタフが揃った後でも構わないかな?」

「ええ、そうね・・・2度手間になるしね。 それじゃあ、私グスタフを起こしてくるわ。 ちょっと待っていてね。」

「ああ、すまないね。 ありがとう、シンシア・・・」


「エイミーさん? どうしたんですか?」

「これは夢だ・・・夢だ・・・夢なんだよ・・・私があんなことを・・・夢だ、夢、夢、夢・・・」

 エイミーは、殆ど聞き取れないほどの小声でありながら、高速で何かを繰り返し呟いている。


「エイミーさん? ひいっ!?」

 エイミーは、私の呼びかけに答えて一度は顔を上げたが、すぐにまた頭を抱えて俯いてしまった。

 一瞬だけ目に入ったエイミーの顔は真っ青で、その瞳には全く光が無かった。

 私は、エイミーの瞳の中に『深淵』と呼ばれるものを見てしまったように感じた・・・


(あの明るいエイミーさんに一体何があったの!? 猫田さんは!? ミオさんは!? ああっ!! グスタフ早く来てぇ~~!!)



 少し経つと、シンシアがグスタフを連れて居間に戻って来た。

 皆がテーブルに着く・・・グスタフと私は自分の定位置に、シンシアは自分の場所にエイミーが突っ伏しているため、グスタフの向かい・・・猫田さんの席に座る。

 猫田さんは、朝のままミオの席で眠っているミオを抱いたまま座っている。


「ミオは・・・起きないのか?」

「ああ、まだ大分寝足りないようだ。 寝かせておいて構わないだろう?」

「おう・・・まあ良いけどな。 猫田は大丈夫か? ずっとそのままだと重くないか?」

「問題ないよ、ミオは軽いからね。」

「そ、そうか・・・」


「じゃあ、早速だけど・・・猫田、昨日私たちが2階に上がってから一体何があったのか話してもらえるかしら?」

「ああ、昨日皆がいなくなった後・・・深夜2時くらいだったかな? ミオが目を覚ましたので、少し2人で話をして・・・自分がミオに交際を申し込んだのさ。」

「本当ですかっ!?」

「あ、ああ・・・本当だ。」

「で・・・ミオさんは承諾したんですか?」

「ああ、有難いことにね。 先日は、クロエにも迷惑をかけてしまって・・・申し訳なかった。」

「そうですかぁ~・・・それなら良かったです。 猫田さん、おめでとうございます。」

「ありがとう、クロエ。」

「そうなのね。 おめでとう猫田。」

「猫田よ・・・ちゃんと責任取るんだぞ。」

「シンシアもありがとう。 ミオのことは自分に任せてくれグスタフ。」


「そうだゾ、グスタフ。 ミオはネコタに責任取ってもらうからナ。」

 いつから起きていたのか、突如ミオも会話に加わる。


「そうか・・・おめでとうミオ。」

「おう、ありがとうナ。 グスタフもシンシアをしっかり守れよナ。」

「お、おう・・・」


「それだけなの?」

「ああ、そうだけど? まあ、ごく簡潔に話したからだけど・・・それが全てだよ?」

「いや・・・猫田? エイミーはどうなっているのかしら?」

「あ・・・ああ、エイミーさんか・・・それは、ミオと話した後に・・・」

「ネコタ氏!?」

 今度は、エイミーが起き上がり猫田さんの話を遮った。

 エイミーの顔には、焦りと悲壮感のようなものが感じられる。


「エイミーさん、もう大丈夫かい?」

「ネコタ氏!! 何を普通に皆に話そうとしているんですか!?」

「え!? だって、シンシアが聞いてくるから・・・」

「ネコタ氏~、誰かに話したら、私もネコタ氏に責任取ってもらいますからねっ!?」

「おい、エイミー!! 何を言っているんだナ!!」

「うるさいぞ、ミオ!!」

「なんだとお!?」

 ミオとエイミーは同時に飛び上がり、テーブルの横で両手を組み合って力勝負を始めた。


「猫田・・・あなたエイミーに何をしたのよ?」

「いや、特に何をしたって訳では・・・」

「ネコタ氏ぃ~~!!」

「すまないシンシア・・・これ以上は話す訳には行かないようだ。」

「そ、そうみたいね。 じゃあ、聞かないことにしてあげるわ。 エイミーも朝食食べて行くでしょう?」

「は、はいぃ~! お願いします、シンシアさ~ん!!」

「エイミー!! いい加減手を離すんだナっ!!」

「お前が離せってんだよっ!!」


 シンシアが、朝食の準備を終えて食卓に戻ってくる頃には、ミオとエイミーは疲れ切ってソファーに並んで座っていた。


「ミオ、エイミー、準備できたからテーブルにいらっしゃい。」

「お、おう。」

「シンシアさん、ありがとうございます。」

「お前ら、ケンカしないで食えよ。」

「おう、エイミーが大人しくしていればいいんだナ。」

「なんだとぉっ!?」

 再び、2人は同時に立ち上がる。


「ミオ、食事は楽しく食べないとな。」

「はいっ!」


「エイミー、座って。」

「はいっ!」


 ミオは猫田さんに、エイミーはシンシアに(たしな)められると、2人はスゴスゴと席に着いた。

 それからは、しばらく静かな時間が流れた。


「それでは私帰りますね。 お迷惑お掛けしました。」

「ええ、まあ・・・迷惑はかけられたけどね。」

「おい、シンシア。」

「でも、またいらっしゃい。 今度はお酒飲んでいない時にね。」

「はい、本当にスミマセンでした。」

「じゃあ私、エイミーさんを送ってきますので。」


 エイミーと私がホームから出る際に、エイミーは猫田さんに近づき、再び「ネコタ氏ぃ、アノ事誰かに言ったら、本当に責任取ってもらいますからね。」って言っていた。

 猫田さん、一体エイミーに何をしたんだろう?

 エイミーの家に向かう途中で、私は「アノ事」とは何なのか聞いてみたけど、エイミーは物憂げな顔をするだけで教えてはくれなかった。



 それからは、治癒士のスポット募集に応じてくれた人が現れるたびに、シザース高地での討伐クエストや採取クエストに向かった。

 私は、クエストの合間に鍛冶を行い、猫田さん用の新しい槍、片鎌槍「丙の拾式」を制作したほか、ガルシア商会の納品するために十文字槍の穂先を作成した。


 キュートラ事件から2か月ほど経った後、私たちのパーティ「星夜の灯火」は、スポットに応じてくれた治癒士の中から1名を正式メンバーに迎えて、沿岸部の町や村を回りつつ、ロアー・リブ市を目指す長い旅に出発することになったんだ。


 ~第9章 クロエとミオ5 終わり~



評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ