第11話
「おい、ネコタ氏~。 あんたは、ミオの事をどう思っているんだよ~?」
「え? もちろんミオの事は好きだよ。」
「おう? ホントだろうナ、ネコタ~?」
「じゃあ、もう付き合っちゃうんだなネコタ氏~?」
ミオとエイミーと私の3人で、お酒を伴った豪華な夕食を済ませた後、ミオは歩くことも出来ないほど泥酔していたため、私がホームまで背負ってきた。
エイミーは、あれだけ飲んでいたのに、意外にも普通程度には歩くことはできたため、私たちのホームまで同行してもらった。
ホームでミオを降ろした後に、私はエイミーを家まで送るつもりだったのだが、エイミーが「自分の家が分からな~い」などと言い出すし、すでに夜になってしまっていたため、グスタフたちが今夜はエイミーもホームに泊まって行くように勧めたのだ。
そうして3人での女子会は、星夜の灯火+エイミーとしての飲み会に発展してしまった。
ミオは見るからに酔っぱらって見えたが、エイミーは顔こそ真っ赤であったものの、テンションが少し高いだけのように見えたので、グスタフが軽く飲もうか(私は止めたよ)とお酒を出してきたのが運の尽きだった。
グスタフたちからは、少し酔っぱらった程度に見えていたエイミーだったが、次第に猫田さんに絡み始める。
その内に、ミオも目を覚まして猫田さんに詰め寄る。
エイミーは、片手にお酒の入ったグラスを持ち、もう片方の手は猫田さんの肩に回している。
ミオは、猫田さんの胸辺りに抱き付いている感じだ。
両手に花状態の猫田さんだったが、猫田さんの顔は今まで見た中で最高に困った顔をしていた。
猫田さんから、度々私たちに向けて救難信号が送られてくるが、私もグスタフもシンシアも猫田さんを救う手立てを見出すことが出来ずに、只々、行く末を見守るしか出来なかった。
「おい、クロエ。 エイミーって、あんななのか?」
「知らないよ。 今日初めて一緒に飲んだんだし・・・」
「あんなに酔っぱらってるミオを見たの初めてだわ・・・クローエ、何かあったの?」
「ごめん、シンシア・・・グスタフも・・・実は・・・」
私は、やむを得ず先日のキュートラ事件に端を発した、ミオと猫田さんの事情をグスタフとシンシアに話した。
「なるほどな・・・ギルドでのあの感じ・・・皆ミオの事を見ていたんだな。」
「そうだったの・・・ミオ、頑張ったのね。」
「うん・・・それで、皆がシザース高地から戻るのを1人で待っていた間にエイミーさんに随分とお世話になっててね。 そのお礼にってことで、今日3人で豪華な食事の女子会・・・だったんだけど。」
「クローエ・・・」
「シンシア、女子会ってこんなに恐ろしいものだったんだね・・・」
「いや、私の思っている女子会とは大分違うけど?」
「そうなの?」
「ええ、ちょっと小洒落たお店でお洒落なお料理とか食べて・・・女しかいないから、愚痴を言い合ったりとかはあるんだけど・・・こんな飲んだくれのオッサンみたいな飲み方は・・・」
「そうなんだね・・・」
「おい、シンシア・・・猫田を助けなくて大丈夫なのか?」
「じゃあアンタが助けてあげなさいよ・・・」
「いや・・・俺にはちょっと無理そうだな。 しかし、考えてみれば、そもそもネコタが悪いだろう。」
「それはその通りだけどね。」
「お、クロエも言うなぁ・・・」
「でも、あんなにしょんぼりした猫田を見続けるのも・・・なんだか可哀そうに思えて来たわ。」
「そうだよな。 猫田は十二分に報いを受けただろう・・・なあ、クロエ?」
「そうだね・・・でも、どうしたらいいのかな?」
「仕方ないわね、ちょっと気が引けるけど・・・魔法で眠らせましょう。」
「シンシア!?」
「おい、本気かシンシア!?」
「仕方ないでしょう。 クローエ、エイミーは明日仕事休みだって言っていたのよね?」
「う、うん、そう言ってた。」
「それなら大丈夫ね。 スリープ!!」
「え? 決断はやっ!!」
シンシアが眠りの魔法をかけると、ミオとエイミーは一瞬で眠りに落ちた。 猫田さんは、グッタリしていたが、眠りの魔法には耐えたようだった。
とりあえず、居間の床に毛布を敷いて、気持ちよさげに眠るミオとエイミーを転がしておく。
「シ・・・シンシアの魔法かい? 助かったよ・・・ありがとう、シンシア・・・」
猫田さんが、か細い声でシンシアにお礼を言っている。
「ええ、これ以上暴れられても困るからね。 でも、猫田・・・実際のところアナタが悪いのよ?」
「ああ、それは分かっているよ。」
「ねえ、ミオさんたちどうするの? 部屋に運んだほうが良いよね? グスタフ、お願いできる?」
「まあ・・・しゃあないな。」
「待ってグスタフ、このまま居間に転がしておきましょう。」
「シンシア!?」
「だって、ミオの部屋に放り込んだとして・・・大惨事になるわよ? それに、吐しゃ物が喉に詰まったりでもしたら・・・命にかかわるわ。」
「そっか・・・でも、ここでもそれは同じじゃない?」
「そうよ。 だから猫田、あなたがここに残ってミオたちを見ていなさい。 静かだったら、呼吸があるかも確認しなさい。 いいわね? 私たちが起きて来るまでは寝ないでよ。」
「ああ、分かったよ。」
「クローエ、グスタフ、捨ててもいいような紙とか布とかをもっと探してきてくれる? 床を汚されたら堪らないから。」
「分かった。」
そして、居間のテーブルを脇に寄せて、居間の床一杯に紙や布を敷き詰める。
その上に、改めてミオとエイミーを転がしておく。
2人とも、すごいイビキを搔きながらも、気持ちよさげに眠っている。
猫田さん1人に見守りを任せるのもどうかと思ったので、私も少し寝たら交代すると言ってみたんだけど、猫田さんは
「いや、自分に任せてくれ。 これは自分が1人で担うことだよ。 それに考えたい事があるから大丈夫だよ。」
と言って、断られてしまった。
きっと、ミオの事を真剣に考えてくれるのだろうと思い、猫田さんに任せることにした。
「じゃあ、猫田。 私たちは寝るわね?」
「任せたからな、ちゃんと寝ないで見ていろよ?」
「猫田さん・・・ミオさんたちの事、よろしくお願いしますね。」
「ああ、自分に任せておいてくれ。 お休み、みんな。」
私たち3人は、眠りにつくため2階に上がった。
居間のソファーに腰掛けた猫田さんは、床で気持ちよさそうに大いびきを掻いて眠っているミオたちを見つめながら、過去の記憶(?)の断片を探っていた。
「・・・あの黒髪のトラ獣人・・・顔立ちまでは思い出せないが、いつも笑っていたような気がする。 なんとなく、ミオを彷彿とさせるんだよな・・・記憶が・・・混ざってしまっているのだろうか?」
「「ぐおおおぉぉぉぉ~~~!! ぐがああぁぁぁ~~~!!」」
「彼女は、やはり自分を救うために・・・」
「「ぐおおおぉぉぉ~~~!! ごがあああぁぁぁ~~~!!」」
「そうなんだとしたら・・・」
「ぐおおおおぉぉぉ~~~!! ギリギリギリギリ!!」
「もし、ミオにそんなことをされたら・・・いや、それ以前に自分のような不審者が・・・って、歯ぎしりってこんなにうるさいんだな?」
「ギリギリギリ!!」
「あれ!? いつの間にかミオのイビキが聞こえなくなっている!!」
猫田さんは、慌ててミオの元に駆け寄る。
「おい! ミオ!?」
「う・・・?」
猫田さんがミオに触れると、ミオはムクリと上半身を起こした。
「良かった・・・大丈夫かい?」
「ネコタか? ・・・全然ダイジョーブ・・・じゃないナ・・・気持ち悪い・・・吐きそうだナ・・・」
「おい、ここでは止めてくれ! シンシアに殺されるぞ!!」
猫田さんは、ミオを抱えて急ぎトイレに向かった。
トイレから戻って来たミオと猫田さんはソファーに並んで座る。
トイレで胃の内容物を出して来たミオは、泥酔状態から多少脱したらしい。
「今何時なんだナ?」
「えーっと・・・夜の2時過ぎだね。」
「そうか・・・」
「ミオ、眠った方がいいんじゃないか?」
「うん・・・だけど・・・その前に・・・とっても問題があるんだナ・・・」
「どうした?」
「おしっこ漏れそうだナ・・・」
「何だって!? さっきして来なかったのか?」
「だって・・・ネコタもいたし・・・」
「大変だ!! 1人で行けるかい?」
「いや・・・申し訳ないが、それはムリだと言っておこう。」
「何を冷静に言っているんだ!? 早く行くぞ!!」
猫田さんは、再度ミオを抱えてトイレに向かう。
大惨事を回避し、トイレから戻った2人は再びソファーに並んで座る。
「・・・・・」
ミオは、両手で顔を覆いプルプルと小刻みに震えている・・・
「どうしたんだいミオ?」
「くっ・・・屈辱なんだナ・・・ネコタにトイレを見られるなんて・・・!!」
「仕方ないだろう、ミオがトイレの穴に嵌りそうになるから・・・」
「責任をとれっ!!」
「責任?」
「ネコタは、ミオの一番恥ずかしいところを見たんだゾ!?」
「じゃあ、その責任を取ってミオと付き合うことにするって言ったら・・・ミオは、それで良いのかい?」
「そ、それは・・・あんまり良くないかもしれないナ。」
「だろう?」
「うん・・・・・・しかし、エイミーのヤツ・・・イビキも歯ぎしりもうるさいんだナ!!」
「ミオも大イビキ掻いていたけどね。 歯ぎしりはエイミーさんだけだったが・・・」
「え? ミオもイビキしてたの?」
「ああ、結構大きな・・・ね。」
「な、なんてことなんだナ・・・そんなところまでネコタに晒してしまうとは・・・」
「ミオ・・・」
「なんだナ?」
「今ここにいる自分は、本当の自分なのかも分からない。 本当の自分は・・・もしかしたら、凄い犯罪者とかってこともあるかもしれない。」
「・・・・」
「そんな不審者でも構わないって言うのかい?」
「うん。 ミオが認めたんだゾ? もっと自分を信じろネコタ。 それでもネコタが自分を信じられないって言うんなら、ミオの目を信じろ!!」
「そうか・・・そうだな。 ミオのことなら信じられるかな?」
「そうだろう。」
「あと、もう1つ。」
「なんだ?」
「ミオは、自分よりも先に死ぬなんてことはしないでくれよ?」
「おう。 ネコタよ、お前がミオに守られるなんて事にならないように精進しろよ。」
「そうだな。」
「じゃあ、改めまして・・・ミオ、正式に自分とお付き合いしてもらえますか?」
「おう!!」
ミオは、飛び切りの笑顔で猫田さんに飛びついた!!
「おい、ミオ・・・ちょっと痛いんだけど?」
「黙れネコタ。 ミオをこんなに待たせたんだ、少しくらい我慢しろ!!」
「そうだな。」
「おい、ミオ、ネコタ氏・・・」
「エイミー!?」
「エイミーさん?」
「お、起きたのかナ?」
「うん・・・頭が超痛い・・・だけど・・・」
「お、おう・・・」
「大丈夫かい? エイミーさん・・・そうだ、水を・・・」
「・・・おしっこ漏れそうだ・・・」
「おい、ネコタ!!」
「エイミーさん、もう少しだけ我慢してくれよ!!」
今度は、エイミーを抱えて猫田さんは三度トイレに向かった。




