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鋼と虎  作者: 釘崎バット
第9章 クロエとミオ5

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第10話

 ギルド嬢エイミーにお礼をするために、ミオと一緒にギルドにやって来たものの、キュートラ事件のことが冒険者たち(ミオのファン)に広まっていたらしく、ギルド内が騒然としてしまったため、一般冒険者は滅多に入ることはない特別個室に案内されてしまった。


 ギルド2階 特別個室にて


「おい、エイミー!! さっきの話、何でオマエが知っているんだナ!?」

 部屋に入るなり、ミオはエイミーに詰め寄る。


「なんだよ、キュートラちゃん。」

「はうっ・・・!!」


 ミオの尻尾の毛が逆立ち、身震いをする。


「お・・・オイ、そのキュートラやめろ。 その言葉を聞くと、ゾワゾワしておしっこ漏らしそうになるんだナ・・・」

「お前、間違っても特別個室(ここ)で漏らすんじゃないぞ。」

「お、おう・・・」

「昨日の夕方辺りから、冒険者どもが次から次にギルドに押し寄せて来たんだよ。 キュー・・・ミオが男に振られたってのは本当か?・・・ってな。 今日だって、その話を聞きに来た冒険者がごまんといただろう? こっちは良い迷惑だったんだぞ。」

「ナ・・・なんでだ? それにミオは振られたワケじゃないナっ!!」

「そうなのか?」

「え、エイミーさん・・・ミオさんも・・・一部始終を見ていた第3者として、私からお話しさせてもらっても良いですか?」

「そうだね。 ミオから聞くよりかは、クロエちゃんから聞いた方が話が分かりそうだね。 じゃ、クロエちゃんお願い、エイミーお姉ちゃんに話してもらえる? ミオもそれで良いだろう?」

「お? おう。 ただ、クロエはミオの妹だけどナ。」

「はい・・・それではお話しします。」


 私はエイミーに、キュートランガードとの遭遇から始まった一連の出来事を話した。


「ほう・・・その男って、半年くらい前に星夜の灯火に加入した人族でしょ? 確か『ネコタ=サアン』だっけ? あの明るい黄色の髪の毛の人。」

「え!?」

「あれ? 違ったっけ?」

「いえいえいえいえ・・・そうです。 その猫田さんです。」


(「ネコタ=サアン」なんて・・・猫田さん、そんないい加減な名前で冒険者登録していたんだ・・・し、知らなかった・・・)


「しかし・・・ミオがそんなに簡単に落ちるなんてね、意外だわ~。 あんまりギルドでも見かけなかったけど、ちょっとイイ男だもんね、ネコタ氏は。」

「ネコタは、ちょー強いんだナ。」

「お~・・・男に興味がなさそうだったお前がなぁ・・・ちょっとチョロすぎるような気もするけど・・・これはマジっぽいな。」

「ま、まあナ・・・ミオは身持ちが固いからナ。」


 それから、ミオによるお惚気話がしばらく続く。

 私も知らなかったような話も結構あったけど・・・ミオの思い出補正が大分入っているんじゃないかと思った。 だって、あの朴念仁の猫田さんだよ?


 最初は、エイミーも黙って聞いていたが、次第にお腹いっぱいになってしまったようで、話を元に戻した。


「だけど、ミオの気持ちにまだちゃんと答えてくれていないんだろ? ネコタ氏・・・ソレでお前は本当に良いのか?」

「うん・・・ネコタには、ちょっと事情があるんだナ。」

「なんだよ、事情って。 女に恥をかかせても仕方ない事情なのかよ?」

「それは・・・言えないんだナ。」


(あー、猫田さんの記憶がちょっと戻りつつあるかも・・・って話か。 そういえば私もどんな記憶かは聞いていなかったな。)


「なんだとお!?」

「エイミーさん、私もそのことは詳しくは知らないんですけど・・・その・・・よっぽどの事情なんでしょう。」

「・・・まあ、冒険者なんて脛に傷を持つヤツばかりだしねぇ。 まあ、今回は聞かないで置いてやるか。」

「おう。 そうしてくれ。」


 一応、事情聴取は終わったのだろうか?

 それからしばらくの間、ミオとエイミーは、お互いに相手の恥ずかしい過去を暴露し合っていた。

 私は(2人とも、本当に仲良しさんだったんだなぁ・・・)なんて思いながら聞いていた。


「んで、ミオよ。」

「あ?」

「豪華な夕食は、いつ奢ってくれるんだ?」

「は? ミオがエイミーにか?」

「そうだよ。」

「なんでだ? 理由がワカラン。」

「お前が、シザース高地から帰ってこなかった間にな、クロエちゃんは私の妹ってことになったんだよ。 それでお前は、私ら姉妹に心配かけたんだから、そのお詫びに奢れって事だが?」

「ナ!? お前に奢るカネなんてないんだナ!! それにクロエは、今でもミオの妹なんだナ!!」


 私は、思わず立ち上がってしまったミオの手をそっと取り、ミオに上目遣いでやさしく語りかける。


「ミオさん・・・私は、ミオさんの事は大切なお姉ちゃんだと思っていますけど・・・ミオさんが私に沢山心配をかけたのは事実です。 エイミーさんはその時、不安定になっていた私を助けてくださいました。 だからミオさんは、エイミーさんと私に豪華なディナーをご馳走しなくてはいけないのです。」

「え? クロエ!?」

「ほらな? 分かっただろミオ?」

「く・・・クロエに言われたら・・・仕方ないナ。 ・・・明日でいいかナ?」

「よっしゃ。 じゃあ、明日な。 仕事上がりの時間に、私を迎えに来いよ。」

「何様のつもりだ? オマエ・・・」

「良いじゃないですかミオさん。 エイミーさんの言うとおりにしましょう。」

「さすがクロエちゃん。 じゃあ明日ね?」

「はい。 あの・・・それで・・・これは、私からの気持ちです!」

 私はエイミーに、今日ギルドに来た目的である、30センチ弱の長さの包みを渡す。


「私にくれるの?」

「はいっ! 喜んでもらえるかは微妙だと思ったんですけど、私にできる最高のお返しは、コレくらいしか思いつかなくって・・・」

「ありがとう。 中を見てもいい?」

「は・・・はいっ!」


 エイミーが包みを開く・・・その中身は、私が打った短刀だ。

 兄がミオに渡したものと違って、美しい金象嵌の鞘ではなく黒塗りの鞘だけど。


 エイミーは、鞘から柄を引き抜いてみる。

 現れたのは、黒鋼製の刃渡り15センチほど、濃灰色の刃だ。


「黒いけど・・・キレイなナイフだね。 もしかして、クロエちゃんが造ってくれたの?」

「はい。 女の人に贈るにはどうかとも思ったんですけど・・・他に思いつかなくって・・・」

「ううん、ありがとう。」

「はい。 その子の名前は『乙の九式』です。」

「え? おつのきゅーしき?」

「エイミー・・・クロエの付ける名前は、ちょっと変わっているんだナ・・・」

「ああ・・・変わってはいるけど、私は良いと思うな。」

「エイミーさん、良かったら号を・・・いえ、その子にちゃんとした名前を付けてあげて下さい。」

「ありがとうクロエちゃん。 おつのきゅーしきだから、『おっきゅん』だね。」

「え・・・エイミー・・・? オマエもなのか・・・?」

「大事にするね。 クロエちゃん。」

 エイミーは『おっきゅん』を胸に抱いて、にっこりと微笑んでくれた。


 特別個室を出て、ギルド長エリオット他ギルド職員にお詫びをしつつ、冒険者の集まる広間に出る。


「じゃあなミオ。 クロエちゃんもありがとね。 私、明後日は休みの日だから、明日はたっぷりと女子会楽しもうね。」

「じょ! 女子会? 私、女子会初めてです!! 楽しみにしています!!」

「そうなの? じゃあ、クロエちゃんに真の女子会というものを教えてあげるね!!」

「はいっ!!」


 相変わらず冒険者たちからの視線が痛い・・・そりゃそうか、まだ彼らはキュートラ事件の顛末を知らないんだもの・・・

 それに、もしかするとこの中にもキュートランガードの元構成員がいるかも知れない。


 ミオは相変わらず、冒険者からの視線をまったく気にしていないようだった。

 これって・・・実は、普段から他人の視線を浴びまくっているミオは、他人の視線が集まることが当然になってしまっているから・・・平気なんだろうか?

 だとしたら・・・私が、ミオを守らなくてはならないと気を張っていたんだけど、特に何事もなくギルドを後にした。



 ちなみに、グスタフは要件(治癒士の募集依頼)が済んだ様で、既にギルドにはいなかった。


 翌日の夕刻、ギルドにエイミーを迎えに行き、ミオの奢りで豪華な夕食をいただく。

 エイミーは、かなりのお酒好きだったようで、高級なお酒をバンバン注文し、ミオの財布が空になるまで・・・いや、それ以上に飲みまくった。

 自棄になったミオもお酒をカブ飲みして、2人ともベロベロになってしまう。

 ミオの持っていたお金で足りなかった分は、結局私のお金で補填することになってしまった。


 私も、いつもよりかはお酒を飲んでいたのだが、お酒に強い私は、どんどん酔っぱらっていく2人を目の当たりして、普段よりもむしろ冷静になっていた。


 酒宴を終え、会計を済ませてお店を出る。

 しかし、この日はこれだけでは終わってくれなかった・・・お店を出た後、またしても事件は起こってしまうのだった・・・



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