第9話
新ホーム購入の話で盛り上がった後、千剣山脈の遺跡についての話がグスタフからあった。
未だにほとんど未踏破でありながら、私たちの持ち帰った遺物やスタージェント製の道具類、まだ採掘が可能と見込まれる採掘場から、かなり有望なダンジョンであると判断されたのだろう。
近々、第9国王家主導による調査部隊が派遣されることになったそうだ。
第1次調査団には、王国騎士団からの選抜メンバーの他、王都と4つの城塞都市のギルドから有力冒険者パーティが調査に向かうらしい。
ただし、遺跡までの道のり自体が険しいため、多少道の整備を行ってからとなるらしい。
グスタフは、遺跡の調査に、遺跡の地下ダンジョンの発見者である、我々「星夜の灯火」に声がかからなかったのを嘆いていたが、広大(と思われる)なダンジョン調査は、第2次調査以降も予定されているようで、2次調査か悪くても3次調査には入れてもらえるように、ギルド長に掛け合ったとのことだった。
「ああ・・・あの採掘場の1人占めは出来ないかぁ・・・岩犬が出て来なければ、もっと色々採れたかも知れないのにねぇ・・・ザンネンだよ。」
「そうだナ。」
「それでなぁ・・・今回のシザース高地での1件で、俺たちのパーティにも治癒士が必要だって思い知らされたんだよな。」
「そうね。 今まではポーションとクローエの魔法に頼っていたけど、長期・高難度のクエストには、やはり治癒士は必須だわね。」
「そうだね。 うちはグスタフにミオさん、猫田さん・・・それにシンシアの魔法・・・攻撃力は結構高いと思うけど・・・私は、剣も魔法も中途半端だからなぁ・・・回復も『大地の息吹』しか使えないし・・・」
「クローエ、あなたは自分の事を過小評価しがちだけれど・・・正直言って、あなたは結構万能な能力を持っていると思うわよ?」
「ありがとうシンシア・・・だけど、私は本当の万能者を知っているからね・・・万能には程遠いよ。」
「クロエ、上には上がいるもんだけどな・・・お前は十分にスゴいよ。 お前みたいに、1人でなんでもやれるヤツってのは、そう多くないんだぜ。 もっと自信を持て。」
「そうだゾ、クロエ。 ミオなんか魔法も使えないんだナ。」
「そうだよ、自分も魔法使えないぞ。」
「うん。 ありがとうみんな。」
折角の楽しい雰囲気を壊してしまった。 反省、反省・・・
「それで、治癒士の件なんだが、反対意見が無いようなら探してみようと思うんだが・・・どうだ?」
「「「「異議なし。」」」」
「よし、なら決まりだな。 誰か知っているヤツがいたら紹介して欲しいが・・・そう都合よくは行かんか・・・とりあえずは、ギルドでスポットを募ってクエストに同行してもらって、有望なのがいれば正式に誘ってみるって感じか?」
「次は、どんなクエストをやるの?」
「そうだな・・・まずは、やはりシザース高地だろうな。 採取とか討伐とか。 で、良い治癒士が見つかったら、沿岸部の小さな町を回りながら・・・とりあえず、ロアー・リブ市辺りまで回ってみようかと思っている。」
「なんでだ?」
「ああ、まあちょっとな・・・知人から頼まれ事があるもんでな。」
「ふぅん・・・」
食事が終わり、皆自分の部屋に戻る。
「ミオさん? もう寝ちゃいましたか?」
「うんにゃ、起きているんだナ。 なんかまだ眠れない感じだナ。」
「今日1日で、色々ありましたからね。」
「そうだナ。」
「ミオさんは、猫田さんの事・・・本当に良いの?」
「うん。 ネコタは、ミオが初めて認めた男だからナ。 ミオの勘を信じているんだナ。 だけど・・・」
「だけど?」
「クーニャたちを見捨てたミオが、誰かを好きになっても良いのかナ?」
「ミオさん・・・」
「もし、ネコタがミオを恋人にしてくれたとしても、家族は・・・きっとミオのこと許してくれないよナ・・・」
「ミオさん、そんなことはありません。 亡くなったご家族だって喜ばないハズがありません。」
「そうかナ?」
「はい。 ミオさんが好きな男性と一緒になるのをご家族は喜ばない訳ないですよ。 ぜひご結婚して・・・ミオさんの子供が出来たら・・・可愛いんだろうなぁ。」
「それは・・・まだちょっと分からないケド・・・クロエも同じだろう?」
「えっ!? ま、まあ・・・そうですけど・・・私はミオさんみたいに異性にモテないですし・・・私には、兄も姉もいますから。」
「いやぁ・・・クロエは可愛いゾ。 今までは、お姉ちゃんが男を近づけないようにしていたからなんだナ。」
「ええ~? そうですかぁ~?」
「そうだゾ。」
「でも・・・まぁ、私はまだそう言うのは早いかなって思います。 色々とやりたいことありますし・・・」
「まあ、オマエも好きな男が出来れば分かるんだナ。」
「そうなのかも・・・知れませんね。」
「あ、そうだミオさん。」
「あ?」
「明日ギルドに行きましょう。 エイミーさんにちゃんとお礼をしないといけません。」
「え? なんで?」
「実は、ミオさんたちが戻って来なかった間に、エイミーさんには色々とお世話になったんです。 ミオさんは、エイミーさんと仲良いんですよね?」
「そうなのか? じゃあ、ミオもお姉ちゃんとしてエイミーに礼を言っておかんとならないナ。」
「はい。 じゃあ、明日に備えて寝ましょうか。」
「おう。」
「お休みなさい。 ミオお姉ちゃん、クーニャさん。」
「え? クーニャ?」
「あ! すみません・・・ミオさんがいない間に・・・その・・・クーニャさんにも色々話を聞いてもらっていたもので・・・」
「そうか・・・じゃあ、今日からも3人で一緒に寝ようナ。」
「はい。」
翌日、早速グスタフが治癒士の募集のためにギルドに向かうとのことであったため、私とミオも一緒に3人でギルドに向かう。
ギルドに入ると、ギルド内はいつも以上に賑わっていた。
そして、その場にいた沢山の冒険者とギルド職員の視線が我々に集まる。
驚いたような顔をしている者、涙ぐんでいる者、ニラんでいるような者・・・様々な表情が見える・・・
「お? なんだ、なんだ? 俺たちの帰還を皆が歓迎してくれているのか!?」
「そうなのかナ?」
(いや違うでしょう!! 多分、キュートラ事件のことが知れ渡っているんだ・・・だって、皆ミオさんを見ているもの・・・)
「おう! エイミー!! ミオの妹が世話になったみたいだナ!」
皆の視線を他所に、ミオは受付に出ていたエイミーに向かってズカズカと進んでいく。
皆の目が、顔が、ミオの動きを追って動いて行く。
「ミオ~、お前やっと帰って来たかと思えば・・・早速大事件を起こしやがって・・・」
「はぁ? 何のことだナ?」
「何のことって・・・お前、街中で男に告って盛大に振られたらしいじゃないか。」
「ナ!?」
「ちょっと! エイミーさん!!」
「お、クロエちゃん。 元気になったみたい良かった。」
「オイ、エイミー。 今言ってたのって・・・」
「ミオさんも・・・エイミーさん、ここじゃなんですので・・・」
「そうだね。 じゃあ、奥行こっか?」
エイミーに連れられて、私たちは奥にある個室に入る。
3人で個室に入った後に、何か気配を感じたので、個室のドアを開けて外を見ると多数の冒険者が聞き耳を立てていた・・・
「ちょっと、アンタたち何やってんの!? 散れ散れっ!!」
エイミーの一言で、個室の周りにいた冒険者たちは散り散りに逃げ去るが・・・ドアを閉めるとまたすぐに戻って来る。 そんな事が何度か繰り返されている内に、ギルド長エリオットが個室にやって来た。
「エイミーさん、ここでは落ち着いて話も出来ないでしょう。 2階の部屋を使ってください。」
「さっすが、ギルド長! 分かってるぅ~~~。」
「エリオットギルド長・・・先日は色々と・・・その、ありがとうございました。 今日もなんか騒ぎになってしまって・・・」
「いいえ、クロエさん。 今は、その・・・他の人が仕事にならないようですので。」
「ですよねっ・・・ほんっとうにスミマセン。」
「おう、クロエ! 行くゾ。」
「あ、はい~。 それではエリオットさん、失礼しますっ。」
ギルド長エリオットに言われた通り、私とミオ、エイミーの3人は2階のギルド長の部屋の隣にある特別個室に向かう。
この特別個室は、本来はVIP用らしいので、普段なら私たちのような一般冒険者が簡単に入れるところではないのだが・・・改めて、ミオの注目度の高さを思い知らされた。
特別個室を前に立つと、そのちょっと豪華なドアに、私は威圧感を感じざるを得なかった・・・




