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鋼と虎  作者: 釘崎バット
第9章 クロエとミオ5

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第8話

 キュートラ(ミオ)を巡って巻き起こった大事件が一応終息を迎え、ホームに戻る道すがら・・・


「クロエ、さっきはすまなかった・・・」

「・・・・・」

「キミが叱ってくれなかったら、自分は取り返しのつかない過ちを犯したままだったかもしれない。」

「・・・・・」

「クロエ・・・君が怒るのは無理もないとは思っているが・・・返事をしてもらえないかな?」

「おい、クロエ。 ネコタになんか言ってやるんだナ。」

「だって・・・猫田さんは、私の大好きなお姉ちゃんを傷つけたんだよ? それに・・・結局答えを先送りにしているじゃないですか? そんなのって・・・」

「まあ、それはクロエの言うとおりだけどナ。」

「おい、ミオ・・・」

「ミオさんは、それで良いの?」

「クロエ・・・そうだナ・・・例えば、ネコタが今ここでクロエに恋人になってくれって言って・・・クロエは、ネコタの事が嫌いじゃないとしたら、すぐに恋人になるのか?」

「それは・・・」

「それに今回は、ちょっとミオの勘違いっていうか・・・早とちりがあったんだナ。」

「・・・・・」

「ネコタは、ミオのことを考えるって言っているから・・・今はそれで良いんだナ。」

「そうですか? 本当にそれで良いの?」

「おう。 それに・・・ネコタは少しだけど、記憶が戻っているみたいなんだナ。」

「えっ!? 本当ですか? 猫田さん??」

「あ・・・ああ、本当に断片的なものなんだが・・・」


「分かりました。 私的には納得できたわけじゃありませんが、ミオさんがそう言うのでしたら、私はこれ以上余計な口を挟みません。」

「おう。」

「ありがとうクロエ、自分は・・・ちゃんと考えてすぐに答えを出すよ。」

「そうですか。」


「猫田さん、顔ボロボロじゃないですか。」

「ああ、自分が悪かったんだ。 仕方ないよ。」

「その通りですけど・・・」

「・・・・・」

「大地の息吹・・・」

 私は、猫田さんに回復魔法をかけた。

 猫田さんの頬の腫れが引いて行く。 そして私は、猫田さんだけに聞こえるように、耳元でささやく。


「猫田さん、答えを先に延ばしたって何も変わりませんよ?」

「?」

「だって、ミオさんに好きだって言われて、断れる男の人なんていないんですからね。」

「・・・クロエの言うとおりかもしれないね。」


「おーい、クロエ、ネコタ!! 早く帰ろう!! ミオはお腹空いて来たゾ!!」

「はい、ミオさん!!」

「ミオ、さっき饅頭を何個も食べていなかったかい?」

「よけーなお世話だナ、ネコタ。」


 帰り道で、3人相談した結果、とりあえず今日の出来事は、シンシアたちにはしばらくは伏せておこうという事になった。



「あら、おかえりなさい。」

 ホームに戻ると、グスタフたちは既に帰ってきており、シンシアは絶賛料理中であった。

 しかし・・・なんか豪勢で、量も半端なかった。



「おー、なんか凄いナ・・・良いことでもあったのかナ?」

「ええ、まあね。 とりあえず座って待っていて頂戴。 もうすぐ出来るから、話は食べながらにしましょう。」

「おう!!」

「了解だ、シンシア。 いつもすまないね。」

「シンシア、私も手伝うよ。 これ運んでも大丈夫?」

「ありがとうクロエ、お願いできるかしら?」

「はい。」



 食事の準備が整い、皆が自分の席に着く。

 グスタフとシンシアは、なにかとても気分が良さそうだ。 私たちがいない間によほど良いことがあったのだろうか?

 ミオは、普段通りに見える。 あんな事があったのに、本当に気にしていないのか?

 猫田さんは、普段通りを装ってはいるが、やはり少し違和感を隠しきれていない。

 かく言う私は、いつも通りに・・・出来ているだろうか?


「よし、じゃあ早速食おうぜ。」

「そうね。 とりあえず乾杯しましょうよ。」

「何に乾杯するの?」

「まあ、いいじゃねえか。」

「勿体ぶるねぇ・・・まあ、いいけど。」

「じゃあ行くぜ!」

「「「「「乾杯~~!!」」」」」


 乾杯の後は、しばらくは豪勢な食事を楽しむ。

 グスタフたちは、今日久しぶりに訪れたギルドでの出来事を。

 私たちは、3人での街歩きの話をする。 もちろん、事前の密約のとおりにミオと猫田さんの一件については黙っている。


「そろそろ、この豪華すぎる料理のカラクリを教えてくれないのかい?」

「そうだな、お前らも気になっているようだしな。 シンシア。」

「分かったわ。 実はねぇ・・・今日ギルドに行ったときに、嬉しい話があったのよ。」

「なんなんだナ?」

「それがねぇ~。」


 シンシアの話によると・・・

 あの千剣山脈での遺跡で拾った、スコップやツルハシのご先祖様みたいなものの鑑定がやっと終わったとのことだった。

 結局アローヘッドでは手に負えなくて、王都に送って鑑定したようだが・・・なんと!! あのスコップ等はスタージェント製であることが判明したのだと言う!!


 スタージェントとは。 魔導帝国時代に造られていた合金の呼び名で、軽い上に非常に頑丈、武器にも防具にも理想的な素材であり、鍛冶師垂涎の金属である。

 別名『星銀』とも呼ばれることから、銀をベースに加工しているのではないかと思われるが、現在ではその製法は失われており、新たに作り出すことが出来ない。

 スタージェント製の武器防具は、教団や王家、それ以外にも魔導帝国時代から続いている旧家などに少数ながら現存するものがある他、遺跡から発見されたこともある。

 また、過去には遺跡からスタージェントのインゴットが見つかったこともあり、それを使って新たなスタージェント武器が打たれたらしいけど・・・魔導帝国時代のモノほど良質なものは造れていないようだ。


「スタージェントは、鍛冶師憧れの素材の1つなんです。 ああっ・・・私も拾っておくべきだった・・・」

「クロエの鉱石探知では分からなかったのかしら?」

「そうですね・・・私の注意は壁に向かっていましたし・・・それに、スタージェントは自然の鉱石ではないらしいので・・・もしかしたら鉱石感知にはかからないのかも・・・元々鉄鉱石を鍛えて造った鋼はもちろん、加工済みの金属には反応しませんので・・・原理は私にもよく分かりませんが。」

「でもまあ、王家に残っているスタージェント製の武器よりは、スタージェントとしての純度は低くて、低品質らしいけどな。 だが、貴重な素材には違いないし、かなりの高値がついたんだぞ。」

「いくつかは戻してもらえないかなぁ?」

「悪いが、それは出来ないそうだぞ。」

「だよねぇ・・・」


「そう言えば、スコップ以外の・・・『遺物』とやらもあったんだろう? そっちはどうなったんだい?」

「ええ、遺物の方は教団に召し上げられちゃうから・・・用法も分からないし、これから何年も研究することになるから・・・一応、1つは遺物だとは認められたので、ご褒美は出るんだけど。」

「そうなのか? ケド、あんまり嬉しそうじゃないナ?」

「ええ、若干の報奨金と、発見者としての栄誉を称えるってことで、教団から特別な記念品みたいなのが贈られるそうよ。 とても豪華絢爛な・・・ね。」

「え? それってすごいんじゃないの?」

「ええ、価値は計り知れないでしょうね・・・だけど、発見者名とかが刻まれる、世界に1つだけのものなんですって。」

「それはまた・・・一体いくらくらいになるのだろうか?」

「そうなんだがなぁ・・・1品もので、名前まで刻まれるってことは・・・現金化できないってことだ。」

「「「ああ~・・・」」」

「欲しがる好事家なんかはいるかもだけどね・・・もし売ったのが教団にバレでもしたら・・・売らないにしても、盗まれでもしたらと思うと・・・恐ろしいわ。」

「なるほどね。 下手に家に置いておくわけにもいかないね。」

「そうなんだよ。 だから、栄誉だけ頂戴して、その記念品は第6国の遺物資料館に飾るって話になった。 実際、過去の発見者もほとんどは、その資料館に飾ってもらっているらしい・・・」

「意味ないじゃないかナ・・・」

「まあ、今後何年も俺たちの功績は残るって話だな・・・」

「でも、まあスタージェントスコップだけでもかなりのものだから、5人で分けても結構な額にはなるわよ。」

「あ、それなんだけど、私はスコップ拾ってないし・・・貰えないよ。 私が拾った鉱石だって換金していないんだし。」

「いや、クロエのお陰で真っ直ぐにあの採掘場に行けたんだし、クロエの貢献度は十分にあるぞ。 だから5等分でいいんだ。 皆もいいだろう?」

「おう、ミオはもちろんだ。」

「自分もだ。」

「もちろん私もよ。」

「みんな・・・ありがとうございます。」

「報酬が入ったら、一部は現金で渡すけど、残りはの分は一旦ギルドのパーティ預金に入れておくからね。」


 思いもかけずに、かなりまとまった金額が入って来るらしい。

 使い道については、食事が終わってからも色々と話し合ったが、現在のホームを売却して、もうワンランク上のホームを買おうかという話にまとまりつつあった。


(新ホームか・・・ギルドや商店街にも近くて、工業地区にももうちょっと近いと便利だけど・・・何と言っても、お風呂があると嬉しいなぁ。)

 なんて、夢は広がるばかりだった。



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