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鋼と虎  作者: 釘崎バット
第9章 クロエとミオ5

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第7話

 猫田さんが、キュートランガードの連中に襲われたそうになっているのを見た私は、私の手首を押さえていた男を振り払うと、ミオと猫田さんに向かって駆け出した。


 私の心配を他所に、猫田さんは飛びかかって来る男たちをふらふらと揺れるように躱していく。


 猫田さんが移動した後には、キュートランガードの面々が重なり合って倒れていた。


 そこへミオが立ち塞がる。


「おい、キュートランなんとか!! ミオはお前らのことなんか知らん!! ミオはもうネコタと、おつ・・・おつ・・・お付き合いをすることになったんだナ!!」

「「「「「なんだってーー!!!!」」」」」

「キュートランなんとかは、今日で終わりだ!! 今後ネコタやミオ・・・うちの仲間たちに手を出したら・・・ボコボコにしてやるからナ!!」


「ミオさん・・・」

 私は、ミオと猫田さんの少し手前で立ち止まる。


(うわぁ・・・言っちゃたよ・・・こんな公衆の面前で・・・ミオさんとネコタさんは「お付き合い」をしたって・・・きゃあ~大胆~!!)


 ちょっと先を急ぎ過ぎたのではないか?って気もするけど・・・猫田さんは大丈夫であろうか?

 今回ばかりは空気を読んで欲しいケド・・・


「え? どういうこと?」

「え?」

「いや、ミオが自分と付き合っているって・・・どういうこと?」

「え? だって、ネコタはミオのこと大事だって・・・??」

「それはもちろんそうだけど。 ミオだけじゃない、クロエやシンシア、それにグスタフだって大事な仲間さ。」


(ああっ!! やっぱり猫田さんは分かっていない!!)


「え? ネコタは、ミオのこと好きじゃないのかナ?」

「もちろん好きだけど?」

「クロエやシンシアは?」

「同じくらい好きに決まっているじゃないか。 こんな自分を仲間にして一緒に過ごしてくれたんだ。 大切で大好きに決まっているだろう?」

「な・・・な・・・ななななナ・・・」

「どうしたミオ?」

「なんだとおぉぉぉーーー!!!」

「おい、ミオ?」

「バカネコター!!」

 ミオは猫田さんに向けて渾身のストレートを放つ!!

 しかし、猫田さんはスルりとミオのパンチを躱した。


「避けるなバカネコタ!! もう知らん!!」

 そう叫んだ直後、ミオは1人で走って行ってしまった。


「え? あれ?」

「ちょっと~! 猫田さん!!」

「お、クロエ・・・」

「猫田さん、ヒドいですよ!! ミオさんの気持ちが分からない訳じゃないでしょ!?」

 私の目からは、涙が溢れだしていた。 泣きながら自分に詰め寄る私を見て、猫田さんも少し察したものがあったのか、いつもの飄々とした態度とは違う・・・少し真剣さを帯びた表情に変わる。


「ミオの気持ち・・・ああ、そうか・・・そうだな。」

「本当に分かっていなかったんですか!?」

「・・・好意は・・・あったのかもと思わなくはないが・・・しかし、自分のような正体が分からないヤツはミオには相応しくないだろう?」

「そう思っているのなら、ちゃんと答えてあげて下さい!! ダメならダメでも・・・あんな風にはぐらかすなんて・・・ヒドいよ!! ミオさんが可哀そうですっ!!」

「はぐらかしたとかでは・・・いや、クロエの言うとおりだな・・・」

「とにかく、ミオさんを追いかけなきゃ!! 猫田さんはホームに帰ってて!!」

「いや、自分が行くよ。」

「ふざけないでよっ!! 私のお姉ちゃんにヒドいことして!! 猫田さんになんか任せられない!!」

「すまないクロエ。 今度はちゃんとするから・・・自分に任せてくれ。」

 猫田さんは、私の答えを待たずにミオを追って行ってしまった。


 現場には、私とキュートランガードの面々、そして、事件の様子を見ていた通行人たち・・・


「・・・・・」

「あ、えーっと・・・先ほどの感じですと、キュートランガードは存続可能・・・ってことで宜しいでしょうか?」

「はあっ!? 良い訳ないでしょう!! キュートランガードは解散!! 二度とミオさんに近づかないで!!」

「「「「「はいっ!!」」」」」



 私は、ミオと猫田さんが走り去った方を見る・・・すでに2人の姿は見えず、今からでは足の早い2人に追いつけそうにない・・・いや、見つけ出すのも難しいかもしれない。


 もう猫田さんに任せるしかないの?

 猫田さんは「ちゃんと答える」って言っていたけど・・・本当にあの猫田さんに任せておいて大丈夫なの?


「・・・やっぱり、心配だよ・・・」

 私も、ミオたちが走り去った方向に向かって走り出した。



「ミオ・・・」

 猫田さんが、キュートラ事件の現場からかなり離れた場所にある公園の片隅でミオを発見した時には、10分ほどが経過していた。


 ミオは、紙袋を抱えて・・・なにか饅頭のようなものを一心不乱に食べていた。


「ミオ・・・」

「ネコタか? ミオに近寄るんじゃないナ・・・」

 ミオは、猫田さんの方を向かずに答える。 その間も饅頭を食べるのをやめなかった。


「先ほどは・・・その・・・すまなかった。」

「うるさいゾ。 お前の話なんか聞きたくない。 どっか行け。」

「いや、聞いてくれミオ・・・自分は・・・」

「聞きたくないって言っているだろう!!」

 自分の方に手を伸ばして来た猫田さんに対して、ミオは振り向きざまにパンチを放った。


 バシーん!!


 ミオのパンチを頬にまともに喰らった猫田さんがふっとんだ。


「あ、あれ? ネコタっ!! なんで避けない!?」

「・・・痛い・・・予想以上の威力だ・・・」

「なんで? ネコタなら簡単に避けられただろう!?」

「いや・・・良いパンチだった・・・さすがはミオだ・・・な・・・」

「おいっ! ネコタっ!! 死ぬなぁっ!!」




「う・・・ミオ?」

「おう、ネコタ・・・やっと目が覚めたか?」

 ミオのパンチで気を失っていた猫田さんは、公園のベンチでミオの膝枕で寝かされていた。


「ああ・・・頬が痛い・・・めちゃめちゃ痛いよ・・・」

「はっはっは・・・そうか? そりゃあそうだろう、ミオのパンチをまともに喰らったんだからナ。」

「そう・・・だな・・・」

「んじゃ、ネコタはホームに帰れ。」

「いや、その前にミオにどうしても聞いてもらいたいことがあるんだ。」

「うるさいゾ。 ミオは聞かないって言っただろ? 聞きたくないんだ。」

 猫田さんはミオの膝から起き上がると、地面に片膝をついてミオに向き合う。

 そして、いつになく真剣な顔で話始める。


「いいや、どうしても聞いてもらうぞ。」

「また殴られたいのか?」

「ああ、それでも構わない。 殴られている間は、話を聞いてもらえそうだ。」

「ミオは殴るといったら殴るゾ。」

「ああ、好きにするといい。」

「よし、じゃあ立て。」

 ミオが立ち上がると、猫田さんもミオの前に立つ。


「ミオ、先ほどは本当にすまなかった。」


 バシンっ!! ミオの平手打ちが猫田さんの右頬に飛ぶ。


「つっ・・・ミオの気持ちは嬉しいと思うし、自分がミオの事を大事で大切だってことも本当だ。」


 ドスっ!! ミオのパンチが猫田さんの腹に入る。


「グっ・・・自分のように正体不明な人間が、キミのような素敵な女性には相応しく無いと思ったんだ。」


 バシっ!! 今度はローキックが猫田さんの左足を襲う。


「!!・・・いや、そうではないな。 自分は・・・多分、トラ獣人の女性とお近づきになるのが怖い・・・のだと思う。」

「え? どういうこと?」

 再びパンチを繰り出そうとしていたミオの手が止まる。


「すまない・・・はっきりとは分からないんだが・・・自分の過去の記憶・・・なんだろうか? 恋人関係であったのかどうかは分からないが、トラ獣人の女性の姿を思い出すことがあるんだ。」

「なんだって!? いつからだ!?」

「そうだな・・・あの千剣山脈の遺跡での戦いの後、クロエから聞いた『チー』・・・じゃなかった『気』の力・・・気の力を意識して色々と試してみていた頃ぐらいではなかっただろうか・・・人影のようなものが、頭の中をよぎるようになったのは・・・」

「へぇ・・・」

「それで、先日のシザース高地での一件・・・これは前にも話したと思うが、自分はグスタフに担がれている間にも、気の力を・・・こう、体を循環させて傷の修復に当てられないかを試みていたんだ。 その辺りだな、その人影がトラ獣人の女性だと分かるようになったのは・・・」

「そ、それは・・・ミオとは違う人なのか?」

「ああ、顔までは・・・分からないが、髪は黒くて・・・」

「トラで黒い髪だと!?」

「ああ、黒い髪だ。 それは間違いない。」

「・・・・(クーニャ以外にも髪が黒いトラがいたのか?)」

「多分、今のミオたちのような・・・一緒に戦う仲間だったように思うんだ。」

「・・・・・」

「そして、彼女は・・・恐らく、自分を助けるために命を・・・だから、万が一にもミオにそんな事が起こったらと思うと・・・」


「・・・そんなの好きにならない理由になるのか? 恋人じゃなくっても、仲間が危ない時は助けるんじゃないのか? ミオだったら、当然助けるゾ。」

「だから・・・それでミオを失うのが怖いんだよ・・・」

「ネコタよ・・・お前はバカだナ。」

「・・・・・」

「ミオは、あんまり頭が良くないからうまく言えないんだケド・・・お前は、強い自分が仲間を助けるのは当然で、弱い仲間に助けられるのはゴメンだって言うのか?」

「・・・そんな訳がないだろう。 今までだって何度も助けられている。」

「じゃあ、それが恋人だとダメなのか?」

「・・・・・」

「どうなんだナ?」

「・・・そうか。」

「恋人じゃなくっても・・・仲間を助けられるとしたら助けるんじゃないのか? ネコタがミオの事をキラいだって言うんなら、恋人にはなれないんだけど・・・」

「ミオの事が嫌いなわけがないだろう。 だけど・・・少しだけ考える・・・いや、整理する時間を貰えないか?」


 ビシっ! っと、ミオのローキックが猫田さんの右足を蹴った。


「いてっ・・・」

「ふんっ! まあ、今日のことはオマエにとっては突然だったかもしれないからナ。 それで勘弁してやる。 ただ、急いだほうが良いゾ。 こう見えてミオはモテるからナ。」

「ああ、そうだね。 キュートラ・・・なんとかって連中がいるくらいだしね。」

「おい・・・そのキュートラって言うのヤメロ。 なんか尻尾がゾワゾワする・・・」

「そうかい、気を付けるよ。」

「おう。 じゃあ戻ろう。 クロエも心配してるかもしれんしナ。」

「そうだな。」



「あ!! ミオさ~~ん!!」

 ミオたちが公園から出ようとしたときに、遠くからクロエが手を振って走って来るのが見える。


「クロエにも心配かけてしまった・・・謝らないといけないな。」

「そうだナ。 全面的にネコタが悪いけど・・・ミオも一緒に謝ってやる。」

「そうかい。 ありがとうミオ。」

「ん。」


 私たちはなんとか合流して、ホームへの帰途についた。



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