今と言う時が止まってくれれば良いのにと思うのは贅沢なのかしらね
食事も終わり、元受付嬢の家も確認したはヴェルサルユスはラトムとともに取った宿屋の部屋に向かった。
その後はお風呂もあると言う事なので二人はそのまま風呂場に向かった。
女湯にて体と頭を洗ったヴェルサルユスはお湯につかる。
浄化の魔術で別に風呂に入らなくても汚れや臭いの問題は解決出来るのであるが、やはりお風呂に入れるのであれば気持ちがいい分こちらが良い。
「それにしても1ヶ月前はこんな事になるなんて思わなかったわ。いきなり竜騎士になるなんて言い出すんだから」
ラトムにいきなり言われてからが色々大変だった。
自分も騎竜候補になるため連合軍西方方面軍や中央軍総司令部に根回ししてリュベルに数騎の竜騎士を派遣させる事でラトムの傍にいる事を叶えたのである。
まあ、連合軍もヴェルサルユスと言う強力ではあるが扱い辛い駒をある程度自由に使えると言うメリットが発生するから軍も応じているため連合軍が一方的に譲歩した訳ではない。
利害が一致したため自分の願いが通ったに過ぎないと言うのはヴェルサルユスも理解している。
「一ヵ月前……」
ヴェルサルユスは自分が発した言葉に引っ掛かる。
「そういえばこの事件も起き始めたのが三週間程前からだったわね。何か作為的な物も感じなくもないけど……まあ良いわ。あがったらラトムに相談しましょうかね」
1人で考えても仕方ないと判断したヴェルサルユスは久しぶりの風呂を十分に堪能し、風呂を上がった。
部屋に戻ったヴェルサルユスの目にまず映ったのはラトムがベットで気持ちよさそうにベットで寝ている光景である。
かすかに石鹸の臭いがする事からきちんと風呂に入っているようだ。
「まったく……風邪をひくわよ」
ヴェルサルユスは呆れたように言いながらも顔は優しい笑みだった。
そしてラトムが蹴っ飛ばしている羊毛布団をヴェルサルユスはラトムにかける。
その後ラトムが寝ているベットに腰を下ろし、ベット横になっているラトムを見つめた。
「あなたと出会ってから本当に退屈しないわ。」
彼と出会って以来、今思えば二人で色々馬鹿な事をやった記憶もあるし、確実に面倒事も増えている。
しかし、それに関してヴェルサルユスは全く後悔していない。今まで退屈だった竜生と違って彼と出会ってからは本当に楽しく瞬く間に時間が過ぎていったからだ。
しかし、その楽しい時間も直ぐに終わりを迎える。ヴェルサルユスの長い寿命を考えるとラトムの寿命等一瞬だからだ。彼がいなくなった後の長い余生を耐えきれるかと言われると
「耐え切れない。またあの退屈なだけの時間を繰り返すなんて……」
である。
それにもう一つ迫ってきている問題もある。
そろそろラトムも相手を見つけて結婚も考える年頃である。もし、本当にラトムがそういう相手を見つけた時自分は表面上だけでもそれを受け入れる事が出来るのか……
「最強の竜と言われてもままならない事が多いわね。ラトムならそれが面白いと言って楽しむんでしょうけど……」
ヴェルサルユスは苦笑を浮かべて続ける。
「今と言う時が止まってくれれば良いのにと思うのは贅沢なのかしらね」




