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大丈夫よ、ラトム。この程度の敵に私が敗北するなんてあり得ないから。

 宿帳の記入が終えたラトムに受付のおばちゃんは

「そちらのお嬢様の身分証のご提示もお願いします。」

 と口にする。


「私の分も必要なの?ラトムのだけで良いじゃない」

 と不満そうな態度を隠そうとすらせずヴェルサルユスは身分証を取り出し机の上に置く。

「ありがとうございます」

 身分証と宿帳の確認をしていた受付のおばちゃんが固まる。

「え。あのリュベルのヴェルサルユス様……あの恐竜の……」

 恐怖で震える受付のおばちゃんの言葉にヴェルサルユスの眉が吊り上がり

「もう一度言って……」

 と言葉を発した瞬間

「ヴェルはリュベル以外でも有名人、いや竜だから有名竜か。良かったね。しかし、恐竜か……くっくく」

 とラトムはヴェルサルユスをからかう。

「恐竜と呼ばれて良い訳ないじゃない!!それとあなた喧嘩売ってるでしょ!?」

 ヴェルサルユスの怒りの先はラトムに向かうが、彼は全く動じない。ラトムは呆れたように

「他人にどう呼ばれても気にしないんじゃかかったのかよ……」

 と言った後、半ば真剣な声で

「俺はヴェルのそのツンツンしたの好きだけど。」

 と続ける。まるで本音がもれたように……


「え。本当に?」

 その言葉を聞いたヴェルサルユスの暴風のような勢いは急激に弱まった。そしてヴェルサルユスは顔を真っ赤にさせながら尋ねる。


「本当、本当。そうじゃないとこんな長く付き合える訳ねえから」


「言い方が適当ね、やり直し」

 ヴェルサルユスが呆れるように答えるとラトムはからかうような笑みを浮かべ

 て姿勢を正し

「ヴェルサルユス様のそのツンツンした態度、私は好きですよ。」

 と口にする。


「あんた、やっぱり私に喧嘩売ってるわよね。今日、ポーカーであなたの財布に入っているお金、むしり取ってやるから覚悟しときなさいよ。」


「言い方が悪いと言われたから訂正しただけなのにな。それにそう言いながらヴェルが負けてむしりとられてる事が多いと思うけど?」


「言ってなさい。私は成長しているのよ。いずれあなたに常勝して見せるわ。」

 ヴェルサルユスが自信満々に答え、それを見たラトムは苦笑を浮かべて

「ヴェルはこういうゲームは余り向いてないんだけどね。まあ俺が心配する事でもないけど」

 と続ける。


 ラトムは受付のおばちゃんの方を向き

「では1泊宜しくお願いします。」

 と言葉にする。

 おばちゃんが恐怖と緊張で顔がこわばっている事に気づいたラトムは優しく続ける。

「大丈夫ですよ。ヴェルの場合、絡まなければほとんど無害ですから」


「一回ラトムが私の事をどう思っているのか、話し合わないといけない気がしてきたわ」

 ヴェルサルユスは後ろからジド目でラトムを睨みつけるがラトムは特に気にする事なく

「俺は大切な幼馴染だと思っているけどね」

 と答える。

 それそれ本当かしらね。たまに疑わしく思う時があるけど」

 ラトムの言葉を聞いたヴェルサルユスは素っ気なく答えた。




 案内されて部屋に入ったラトムは椅子に座り、先程ヴェルサルユスが読んでいたロエヌ駐留軍司令官から渡された報告書を読んでいた。

 ちなみにヴェルサルユスはベットに座って足をぶらぶらさせている。


「これ、ヤバくない?」

 報告書を読み終えたラトムの第1の言葉がこれである。

 しかし、それも仕方ないだろう。受けた依頼の魔術師が使役する動く死体のような物、これ傷を負わせても直ぐに回復するし、腕や足等を吹き飛ばしても瞬時にくっついていくらしい。

 そんなどうしようもない化け物を複数使役する魔術師をどうやって倒せと言うのか。ラトムから言わせればチェスでボーンだけで勝てと言う無理ゲーをクリアしろと言われているのに等しい。


「何がヤバいの?もしかしてその辺りの町娘みたいに死体のような物が怖いとか言わないよね?」

 ヴェルサルユスが半ばからかうような口調でラトムは尋ねる。


「まあ動く死体って時点で恐怖だけど」

 ラトムは苦笑いを浮かべながら

「……ダメージ与えても直ぐに回復されるって倒しようがないじゃん。これ、どうすんの?」

 と続ける。


「対抗出来そうな術式はいくつか思いついているし、後はそれを実戦で試しつつ後はは微調整していけば問題ないわよ。」

 ヴェルサルユスは素っ気なく答える。ヴェルサルユスはそこまでそこは困難に思っていないようだった。


「いや、でもそれが通じなければどうするんだよ。」

 ラトムが不安そうに言うがヴェルサルユスの態度は変わらない。

「その時は面倒だけど肉片も残さず消滅させれば良いだけよ。」

 ヴェルサルユスは自信にあふれた微笑を浮かべて続ける。

「大丈夫よ、ラトム。この程度の敵に私が敗北するなんてあり得ないから。あなたが契約を結ぶ竜を信じなさい」



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