高額賞金であると言う事は……
ギルト長に案内され、ラトムとヴェルサルユスとロエヌ駐留軍司令官は個室の椅子に座り、その対面に置かれたテーブルにはロエヌ近郊の地図が置かれた。
とりあえず、話だけを聞いて判断すると言う事で依頼の説明を受ける事となったのだ。
「現在、この付近の街道にて旅人や軍の輸送隊が消息を絶っている。当初は魔獣に襲われたのかと思い軍や冒険者が調査したのだが、その結果一人の魔術師の仕業である事が発覚した。」
余り関心がなさそうなヴェルサルユスに代わり、ラトムが尋ねる。
「そこまで解っておりながらその魔術師を討伐しなかったのですか?」
「軍の討伐隊や冒険者の高ランクパーティーを送ったのだが、壊滅した。生き残りの冒険者が言うには死体のようなものを複数使役しているとの事だった」
「死体を使役?」
今まで依頼の中身に無関心であったヴェルサルユスは興味深そうに尋ねる。
「はい。詳しい事はこの報告書に書かれております」
ロエヌ駐留軍司令官が書類を取り出す。
「見せて」
とヴェルサルユスが言うと、司令官は書類をヴェルサルユスに手渡す。
ヴェルサルユスは礼を言う事もなく受け取り、それに没頭するように報告書を読み始める。
(ヴェルがここまで集中して仕事関係の書類を読むなんて珍しい。ヴェルがここまで真剣になる程この依頼は危険なのかな?)
ラトムはどうするか迷う。
(報酬次第だけど割に合わない可能性が高そうだな。しかし、竜騎士候補生と言う立場で軍の要請を無碍に断るのも今後面倒くさい事なりそうだし……どうすれば良いんだよ)
ラトムは心の中でどうするか考えながらロエヌ駐留軍司令官に頭を下げる。
「ヴェル……いやヴェルサルユスが先程失礼しました」
ヴェルサルユスが礼等を言わず報告書を受け取った事をラトムが謝罪すると報告書を読んでいった連合軍最強の竜娘が口を開いた。
「ラトム、いつ私がその男に失礼な態度を取ったのよ?」
「現在進行で取ってるんだよ、お前は」
ラトムの言葉にヴェルサルユスは書類を読みながら頬を膨らませる。
「まるで私が礼儀がなっていない痛い娘みたいじゃない」
ヴェルサルユスの言葉に半分以上からかいが混じったため気をつき続ける。
「それ、今頃気づいたの?」
「……絶対後で泣かすわ。覚えておきなさいよ」
「軽い冗談だよ。」
ラトムが苦笑を浮かべながらそう言うがヴェルサルユスの答えは
「今更言い訳言ってももう遅いわよ」
であった。
しかし、ヴェルサルユスの目や声等からほとんど怒っていない事をラトムは解っており
「そう。じゃあ、この後俺は地獄を見そうだな」
と軽口をたたいていた。
「ええ。私が責任を持って見せてあげるわ」
ヴェルサルユスもラトムの軽口にのると、突然ロエヌ駐留軍司令官は笑い出し、そして
「君達は本当に仲が良いのだな」
と続けた。
「ただの幼馴染と言う名の腐れ縁ですけどね」
とラトムが言うとヴェルサルユスは不満そうに頬を膨らませるが特に何も言わなかった。
「話がそれて来たので本題に戻るがこの案件の報酬としては600ソリドゥスと考えているがどうであろう?」
司令官の問いにラトムは驚いたように答えた。
「600ソリドゥスですか?」
ソリドゥスは金貨の通貨単位であり、連合軍の将軍クラスでも月俸6ソリドゥスぐらいである。将軍の給与9年分以上となればかなりの高額案件である。
ちなみに金貨は大物取引単位であり、主に通貨として運用されているのは銀貨であるミリアレンセである。
「そうであるが不服か?」
司令官の言葉にラトムは首を横に振る。
「いえ。報酬の高さに驚いていました。」
ラトムはそう答えながら
(高額賞金と言う事はかなり厄介な案件なんだな、これ。比較的簡単な依頼をこなしてそこそこ稼げれば良かったのにどうしてこうなった)
と心の中で溜息をついた。




