アヤメの決意
私は彼が好きだ。
最近では、いつも"彼と話したい"と思うようになった。
そして今まで以上に彼を想う様になった。
そして私は思い付いた。
そして今、宣言する。
彼との連絡手段を手に入れる!と。
「でもあーちゃん、私この間拒否されたよ?」
今は放課後、日が沈むにはまだ少し早い時間。
白い光が差し込むこの教室で、私たちは私たち二人だけしか居ない教室の角で会話に花を咲かせていた。
今の状況はと言えば、昨日の夜の私の決断を、その次の日に当たる今日、早速ミサに報告していた。といった感じた。
「うん、それは知ってる。私も見てたし」
「それでも諦めないなんて。余程、彼への愛が強いんだね♥️」
「うっさい」
まぁ、確かに橘の事は好きだけど。
でもそれだけで行動を起こそうとしてる訳じゃない。
昨日は失念しかけていたけれど、私の目的は彼を救うこと。
・・・ミサはちゃんと分かってくれているのだろうか。
この子ってば恋愛脳だから、もしかすると忘れられているかもしれない。
「ねぇ、あーちゃん」
「えっ、何?」
「いや、別に何も無いけど。あーちゃんボーッとしてたけど大丈夫?魂どっか行ってたよ?」
え、私ボーッとしてたの?
結構考え込んでいた筈だし、ボーッとしてる様には見えないと思うんだけどな。
「で、実際問題どうするの?簡単には聞き出せないと思うけど」
「んー、どうしよ」
「何か考えてないの?」
「うん、決意した私はそこでそのまま寝ちゃったから」
「何してんのよ」
私もそう思う。
それはさておきどうしようか。
ミサの没交渉から一週間。
流石にリトライは早いよね・・・
さて、行き詰まった。
どうしよ・・・
何か作戦でもたててみようか。
・脅して聞き出す
いやいや。
これからの関係に絶対的な溝が出来るし、第一そんな勇気も度胸もない。
・待つ
まぁ、さっきのよりはマシだけどこれも違うかな。
連絡手段を手に入れる!って言った手前、こんな作戦をとるわけにはいかないし。
・当たって砕ける
砕けちゃダメだよ。
・交流してみる
うん、これしかない。
・・・って言うかこれしか無いのは分かってたんだけど。
ちょっとハードルが高いと言いますか。
私、ミサとは普通に話せてるけど基本人見知りって言うか、はっきり言ってコミュ症だし。
・・・やっぱり交流なんて無理ーーー!
「ねぇ、あーちゃん」
「え?あっ、な、何?」
「あー、またボーッとしてとりあえず橘くんと会話をすることから始めてみれば?」
「だからそれは無理だって!」
「え?」
「あ、ごめん。間違えた」
「大丈夫?頭のネジとれたりしてない?」
「とれてない!・・・と思う」
「え、自信無いの?」
「うん、何か色々あって・・・」
「この1分以内に一体何が?!」
「少々自己嫌悪を」
「ほんとに大丈夫?!」
「うん、もう治った」
「治るものなのかな・・・」
治った。
何て言ったものの、流石に辛いというかもう帰りたい。
そしてベッドにダイブしたい!!
「ミサ、そろそろ帰らない?」
「うん、そうだね。流石に暗くなるだろうし」
外を見てみると辺りはオレンジに染まっていて、空にはひつじ雲が浮かんでいた。
私たちは席を立ち、教室を出て、廊下を歩き出す。
すると廊下の向こうに誰かの人影が見えた。
人影は私たちに近づいてくる。
あれは・・・
「お!橘くんだ」
「ん?おぉ、旭日に黛。どうしたこんな時間に」
「さっきまでガールズトークしてたの、教室で」
「へー、コイバナって奴か?」
「そうそう」
「お、まじか。なに?お前ら好きな奴いんの?」
「私はいないよ」
「じゃあ黛に?」
「そうそう」
「その言い方からしていないんだろ。もしかしてコイバナも嘘か?」
「そうそう」
「答える気ねーのな」
「女の子の秘め事に首を突っ込んじゃいけないんだよ」
「さいですか」
「で、LIME交換しない?」
「ん?良いぞ」
「あんたこの前同じこと私に言われたこと覚えてる?」
「いや、覚えてない」
「あっそ、まぁ良いけど」
「じゃ、三人で交換な」
「おっけー」
え?
「はい、バーコード。俺のアカウント名はA@tだ」
「何でそんな変な名前にしてるのよ。私のアカウント名はミサよ」
「わ、私のアカウントの名前はアヤだから」
「ん、りょーかい。じゃ、また明日。いつでも連絡してくれて良いからな」
「はいはい」
橘はさっきまで私たちがいた教室に入っていった。
・・・で。
「連絡手段、手に入ったね」
「・・・そうだね」
いや、その、まぁ、何というか。
釈然としないと言いますか。
なんか・・・
「私たちって一体何に悩んでたんだろうね」
と、ミサ。
「普通に話しかければ良いだけだったなんて思わなかったよ」
と、私。
一体昨日の決意は何だったのか。
まさか、こんなにもあっさり交換できるとは思っても見なかった。
でも交流してみると言う案は、やはり正解だったんだ。
しかも私がやりたくなかったやつ。
こんな調子で私は彼に振り向いてもらえるのだろうか。
さらに自信をなくしつつ、今だ釈然としない私たちは、二人で並んで、無言で帰宅したのだった。




