白銀の翼
「お前さん中々やりおるの」
俺は今のんびりと大浴場の湯船に浸かっているのだが、何やら隣にいる爺さんに話しかけられた。しかしこの爺さん、今は歳だから仕方ないかもしれないが若い頃はかなり強かったはずだ、強い奴特有のオーラがある。
「あんたこそ現役のときはかなりの手練だっただろう」
「なあに、少しばかり顔が知れた程度じゃ」
ホッホッと笑っているが出来ることなら若い頃に出会いたかったな。
「お前さんは冒険者に見えるが依頼を頼めば受けてくれるのかのう」
どうやら俺はどこに行っても厄介事は起こるみたいだ……
やはり運のステータスが悪いからだろうか。
「どんな依頼だ?」
「温泉街の裏にある下呂ダンジョン最下層モンスター結晶甲獣を倒して素材を持ち帰ってほしい」
どうやら詳しく話を聞くと孫が今年いっぱいで冒険者学校を卒業して冒険者になるから贈り物をしたいとのこと。
下呂ダンジョンは全20階層で、昔ならそこそこやれたんだが20階層ボスは物理と魔法耐性があって核を狙って破壊できなければ討伐は厳しい、それで強そうな俺に依頼してきたってとこだ。
「その……やっぱり孫は可愛くてな。心配なんじゃ」
「ああ、わかるよその気持ち」
なんだかんだ真羽も可愛いからな。どうせなら温泉旅行誘ってやればよかった。
「お前さんも年寄りじみたこと言うんじゃな。まあいい、ギルドに指名依頼出した方が良いかの?」
「いや、ランク上げに困ってるわけでも金に困っているわけでもないからな。適正価格でちゃんと買い取ってくれるならギルドに依頼は出さなくていいぞ、明日チェックアウトしたらすぐに狩ってこよう」
「──20階層だぞ?そんなすぐに狩ってこられるのか?」
「まあそうだな、初見のダンジョンだから余裕を持って1時間はかかると思っておいてくれ」
「──お前さん本当に人間か?」
失礼な。過去に悪魔やら化け物やら色々言われたがまだ辛うじて人間だ。
そして俺たちは大浴場からあがり連絡先を交換して別れた。
『ふむ、ダンジョンか。もちろんいいぞ!』
「私はいつも通り空間の中で畑やキノコさんのお世話してるのです!」
俺は客室に戻り事情を説明した。
せっかくの温泉に入ったあとすぐにダンジョンに潜ることになるからフェンも休憩してていいぞとは言ったんだが、どうやらリフレッシュしたのかやる気に満ち溢れている。
「じゃあ明日はここを出たらダンジョンに行くということで決まりだな」
たまたまではあったが最下層のモンスターを倒しに行くならまたギルドカードに踏破の記録が残る。なんだかんだ個人的な依頼だから、受付からまた何かやらかしたんですか?みたいな目で見られなくて済むしラッキーだったな。
今日はさっさと寝て明日に備えるとするか。
「ここで待っておるぞ」
翌日、チェックアウトの時たまたま爺さんと一緒に宿を出た。
俺たちはそのままダンジョンへ向かおうとしたら、すぐに終わるなら近くで終わるまで待つと言い出し、それなら近くの喫茶店で待っていてもらうことにした。
「──本当に、1時間もかからずに……戻ってきたのか」
俺たちは20階層までモンスターは無視して全力で走り、結晶甲獣をサクッと倒して帰ってきた。物理攻撃や魔法攻撃は逆に相手にダメージが入らず力が増幅するという面倒な個体だったが、核の場所さえわかれば簡単だったのだ。
喫茶店から出て人気の少ない場所でモンスターを渡すと、どうやらその爺さんが持っていたバックはアイテムバックだったらしく、問題なく収納が出来た。
お金はギルドカードからの送金でいいかと聞かれ、問題がなかった俺たちはお互いのギルドカードを取り出した。
「爺さん……Aランク冒険者なのか。通りで強いわけだ」
「そういえば名前を言っていなかったな、解散したが昔は“白銀の翼”というパーティーでリーダーをしておった神崎 雅人だ。それよりお前さんのこのカードの色は……」
「俺も自己紹介していなかったな、リック・ハンストンSS級冒険者だ。最近作られたばかりでな知らないのも無理はない」
「──SS級…強いとは思ったが、とんでもない人物に依頼しちまったみてえだな……料金は上乗せした方がいいか?」
「いや、これで十分だ。またなにかあれば連絡してくれ」
そして俺たちは転移で帰宅したのだが、後ろで爺さんが転移を見てまた驚いていたのは言うまでもない。




