ワイバーン肉のスペアリブ
「なあフェン、やっぱり昨日の19階層にいたワイバーンは無視しないで狩ったほうがよくなかった?」
温泉旅行から帰宅した翌日、ふと昨日のダンジョン19階層にいたワイバーンを思い出したのだ。
『うむ、我もそう思う』
神崎の爺さんを待たせてると思ってなるべく急いだ結果、ボスの結晶甲獣まで全て無視したが翌日の今になって食べたくなったのだ。
「ちょっと行って狩ってくる。今日はワイバーンを食うぞ」
『それがいい!ここは任されよう』
「ただ、家でテレビ観てるだけじゃないか……」
仕方ないパパっと行ってワイバーンの1体や2体ぐらい狩ってこよう。
「なぜこういう時に限って群れで襲われるのか。どこかに運のステータスがあがる魔導具でも売ってないだろうか」
すぐ帰る予定だったのに10数頭のワイバーンに襲われ仕方なく倒してはいるが、頭の中は今日のレシピを考えていた。
「スペアリブとかどうだろう。前にレシピを調べた時4、5時間かかると書いてあったが、ワイバーンの肉なら普通の獣とは繊維が違う。低温で2時間も火を入れれば骨から肉が自然とほどけるはずだ」
決めればそこからの狩りは早い。なんてったってスペアリブの仕込みが待っているからな!
「ただいま」
『む、解体はしないのか?』
「ついでに誰もいなかったから今日食べる分だけダンジョンで解体してきたんだ」
『そうか。そして今日のメニューは何なのだ!?』
「スペアリブにバーベキューソースを塗って焼こうかと思って。たまには俺も手でガッと食いたいからな」
『我もガッ!と食いたいぞ!』
大体お前はいつもガッと食ってるよ……それよりまだ夜ご飯までに時間はあるから下準備で下味をつけておこう。
「まだ食えないから大人しくメリルと待っとけ」
『なに!?今から食べるのではないのか!』
「はいはい、フェンたんあっち行くのです〜」
まだ昼過ぎだというのに、本当に食い気ばかりの狼だ。
そして俺はキッチンにワイバーンのスペアリブをドンッと出した。
まずはスペアリブの表面についている余計な脂や筋を切り取る。このひと手間で肉が柔らかくなり、味も染み込みやすくなるからな。
そしてスパイスを混ぜ合わせ、肉全体にしっかり擦り込む。この時にオイルを塗ることでスパイスがよく密着するらしい。
これでラップをして夜ご飯の時まで冷蔵庫で寝かし、その間に骨を煮込んでスープにでもするか。
ワイバーンの骨を軽く火に炙って香りを出してから、大きめの寸胴に入れじっくりと煮ていく。
今日のスープの分だけ取り分けたら残りはラーメン用のスープに取っておこう。
とりあえず後は夕方までのんびりして待ってよう。
「そうだな〜次行くとしたら東北か九州辺りか?」
俺は空いた時間で次の旅行先を調べていた。
ギルドの依頼を受けてもいいんだが、また面倒なのに絡まれてもな、と思いまだ行ったことのない場所で探していた。
「東北だと……函館まで転移してから飛行魔法で飛んでいくか、岐阜まで転移してから走っていくかどっちがいいだろうか」
ここで普通の人ならば公共交通機関だろ!とツッコミたくなるがリックは普通ではないのだ。
「仙台の牛タンを食べに行くか」
『うむ、それがいい!』
「甘いのも食べたいのです!」
そんなこんなで話しているうちに夕方になり、そろそろスペアリブを焼く時間になった。
オーブンを120度で予熱し、アルミホイルで包んだスペアリブを鉄板に乗せ2時間じっくり焼いていく。
焼きあがったらアルミホイルを外し、溢れ出てくる肉汁はバーベキューソースと合わせておく。これが後でソースの旨味になる。
スペアリブにこのバーベキューソースをたっぷり塗り180度のオーブンで10分焼く。
『まだ焼くのか!?』
出来たと思ったらまた焼かれるスペアリブを見て困惑しているフェンは放っておいて、さらにソースを塗りもう一度10分焼く。
これを繰り返すことで表面に艶のある香ばしい層ができるのだ。
最後にお好みで片面1分程炭火で炙るとジュワっと脂が落ち、炎が上がって燻されることでスモーキーな香りがまとわりついて本格的になるが今日はこのまま頂くことにしよう。
いつも通り白米とスペアリブ、スープを盛り付け完成だ。
『ガッといっていいのか!』
「ああ、これはそうやって食べるもんだな。俺も今日は手でいく。メリルのは食べやすくカットしてあるぞ」
「ありがとうなのです!」
この匂いがもうたまらない。俺も手で持ち1口ガブッとかぶりついた。
「──柔らかくてうま……っ」
本当にスペアリブなのかと疑いたくなるぐらい簡単に骨から肉がホロホロと解け、このバーベキューソースの味で白米が進む進む。
「やっぱりワイバーンを狩りに行って正解だった」
『うむ!』
──そうして食べ終わった俺たちだが、腕につけている真羽と対になった迷子防止ブレスレットに反応があった。




