森林鶏の親子丼
冒険者ギルドで説教が行われてるとは知らないリックたちは20階層ボス部屋の前まで来ていた。
『つまらぬ、美味くないモンスターばかりだ』
そう、11階層のフォレストウルフと12階層のキラービーはまだ肉と蜂蜜が確保できたからよかったのだが、それ以降は食っても美味くないモンスターばかりだったのだ。さすがのフェンでも蜘蛛や猿、木は食べない。
「そして20階層ボスはエルダートレントなんだよな…」
依頼を受けたから知ってはいたがボスも木だから食えない……はあ、やる気がなくなるのも無理はないな、さっさと終わらせて帰ろう。
「サブマス、これ依頼完了届」
俺たちはエルダートレントを解体場に出し、サブマスのいる受付に戻ってきていた。
「お疲れ様です、リックさん。少し不機嫌そうですが何かありましたか?」
「いや、食えるモンスターが少なくてな…まあそれはいいんだが、あれは何だ?」
ギルドの隅で今にも泣きそうな顔で正座をしながら他の冒険者たちに囲まれている蒼天の剣がいた。
「リックさんたちがダンジョンに向かわれたあと、私が彼らに注意しようとしたのですが……」
なるほど、俺のことを知っている他の冒険者が気を利かせて“お話し合い”をしてくれているみたいだ、彼らに任せることとしよう。
だが、俺に気付いた彼らがこちらへ走って向かってきた。
「っ……あの、先程は本当に、すみませんでした……」
なにを吹き込まれたのかかなり俺のことをビビっているようだが、3人とも頭を下げて謝ってきた。謝れるだけこいつらはまだ偉い、ちゃんと更生して真面目になることだろう。
「ああ、早死にするようなことがなくて良かったよ」
そして俺たちがギルドを出る時。
「え、俺たち殺される予定だった……?」
と、呟いていたのは聞かなかったことにしておこう。
「今日のご飯は何にするか……」
家に帰宅し、俺はキッチンで夜ご飯のレシピを考えていた。いつもならその日ダンジョンで狩ったモンスターとかにするのだが今日はこれといっていいモンスターがいなかったからな。
「こういう日は簡単に丼でいいか」
『うむ、それがいい!牛丼やミノタウロス丼も美味かったからな!』
「卵を使ったのが食べてみたいのです!」
卵か……三色丼や天津飯もいいがやはり親子丼だろう。森林鶏の肉と卵を使ったトロトロの親子丼にしよう。
まずは鶏肉を1口大に切り、塩を振っておく。
余分な水分をキッチンペーパーで拭き取るとこれだけで臭みがなくなり森林鶏の甘さが引き立つ。
次にフライパンに出汁と酒、砂糖にみりん、醤油を入れて火にかける。
ちなみに親子丼を作る時には親子鍋というのがあるらしいが俺は持っていないから普通にフライパンだ。
沸騰してきたら薄切りにした涙玉オニオンを加え、玉ねぎが透明になってきたら鶏肉を入れる。アクは丁寧に取りつつ、鶏肉は煮すぎないように……
卵は軽く溶きほぐし、3分の2程回し入れる。
ある程度固まったら残りの卵も入れ余熱で火を通したらトロトロの親子丼の完成だ。
丼に白米、具を乗せ最後にお好みで三つ葉や刻み海苔を散らしてテーブルまで運んでいく。
『おかわりだ!』
「まだ食ってないだろ」
「卵がふわふわなのです!」
さて、トロトロのうちに1口。
「森林鶏だけでも美味いのに、その卵も一緒だと美味いのは当たり前か……」
『うむ、これは何でも卵でとじれば美味いのではないか!?』
「卵だけでも美味しいはずです!」
結局何でも美味いってことでいいだろうか?
『ところで主に絡んでいた奴らは少しは見所がありそうだったのか?』
「どうだろうな、確かにルーキーにしてはいいのかもしれないが所詮まだその程度だ。彼らがこの先強くなるか、そこそこで終わるかは努力次第だな」
今の性格のままだと自分たちは強いと勘違いしたまま終わるだろう、だが反省して真面目に訓練をすればいずれはB……いやAランクには行くかもしれないな。
そう考えると真羽って本当に優秀だったんだな、今度もっと褒めてやろう。




