シザーフィッシュの塩鍋
ダンジョンの報告をした翌日、俺はデパートの中にある武器店に行き深海星鋼を使って包丁の注文をしていた。
店員は見たことない鉱石にびっくりして失敗したら困るから、と注文を断られた。
失敗しても責めないし金も取らない、なんなら失敗して鉱石が無くなれば追加で探してくるという条件で注文を受けてもらい、そのかわり初めて触る鉱石だから練習も兼ねてということで費用が安く済んだ。
俺専用の包丁…楽しみだな。
「よし、今日はこいつを使って夜ご飯だな」
俺はデパートから帰宅し、キッチンで夜ご飯の準備をしていた。
作るのはシザーフィッシュの塩鍋。この暑くなってきた時期に鍋かよと思う人もいるかもしれないがダンジョンで見つけた昆布で出汁を取り、シザーフィッシュとパールキングクラブの身を入れた鍋は美味いはずだ。
出汁を取るためにわざわざシザーフィッシュの頭はとっておいたんだ、これを鍋に入れ昆布とパールキングクラブの殻、酒を入れ出汁をとる。
出汁が取れたら塩を入れ、白菜と人参陽炎茸にネギを加え煮ていく。
野菜に火が通ったら食べやすくぶつ切りにしたシザーフィッシュとパールキングクラブの身を入れる。生食可能な魚だから火を通しすぎない方がいいだろう。
仕上げに刻みネギとお好みで柚子胡椒を準備して完成だ。
『美味そうな匂いだが今日は肉はないのだな』
「ああ、魚だがパサパサしてなくて柔らかいぞ。それに蟹の身もある」
『む、それならいいか』
「美味しそうなスープなのです!」
それじゃあ俺はまずスープから1口。
「──塩しか入れていないのにこんなに美味いのか」
野菜の甘みに蟹の風味もある、これは下手に味付けしないで塩だけで正解だったかもな。
「はわわっ、魚が柔らかいのです〜」
『うむ、これは美味い。だが今日は米はないのか?』
米信者のフェンは鍋をおかずにして米が食えるみたいだが、今日は〆に雑炊にしようと思って敢えて今は米を出していないんだ。
「最後にとっておきがあるからスープは残しておいてくれよ」
『全部飲んではだめなのか!』
「米が食えなくなってもいいなら飲み干していいぞ」
『ぐぬぬ…』
だが飲み干したい気持ちもわかる。この最後に入れたパールキングクラブの身も出汁が染み込んで美味い。
暑い暑いと言いながら食べる鍋も悪くないみたいだ。
「よし、雑炊を作るから1回鍋は回収するぞ」
『なっ!まだ具が少し残ってるではないか!』
「その方が美味いからいいんだよ」
鍋は1度火にかけ沸騰するまで待つ。
「ちょっと味が濃いな、水を入れよう」
『主だけ食べるなんてずるいぞ!』
「味見だ」
そこに洗った米を入れ5分程煮込む。
最後に溶いた卵を回し入れ、パールキングクラブの身も追加で入れたら完成だ。
「出来たぞ、熱いから気を付けろ」
「ふーふーなのです!」
『おお、米だ!』
さて、俺も1口。
「最初の鍋が前座でこれがメインと言ってもいいぐらいに美味い!」
『やはり米が1番だな!』
「優しい味がするのです!」
酔っ払った次の日の朝はこれが食いたい。それぐらい美味い……
「寒い冬に食ったらもっと美味そうだな…」
コタツを用意してみんなで鍋を囲むっていうのも良さそうだ。何種類かの味を用意して、冬弥たちを誘ってもいいし、真羽も連れてきたら喜ぶだろう。
また冬の楽しみが出来たな。
『明日からは何をするのだ?』
そこなんだよな…ダンジョン探索でもいいんだが、なんだかんだ俺たちはここ数ヶ月こちらの世界に来てからダンジョンを攻略したり遺跡で地下を見つけたり海龍蛇と仲良くなったり忙しない日々を過ごしている。
もっとのんびりして過ごしてもいいような気もするがじっとしすぎるのも暇でつまらないという面倒な性格をしているのだ。困ったもんだ。
まあ、何事もない平和が1番いいのだが……
──こういうのをフラグと言うのだったか?




