新しい友人?
船に乗るために俺たちは港にやってきたのだが、そこには人だかりが出来ていた。
「何かあったのか?」
俺は近くにいたおっちゃんに声をかけた。
「ああ、観光客か?運が悪いな、海龍蛇が暴れて船が出せないんだよ」
「海龍蛇?」
「沖縄では有名で何百年も海にいる龍だよ。普段は温厚で縄張りからも出てこない、強いから他のモンスターも寄り付かなくて俺たち漁師からしたら海の神様みたいな存在だ」
その海龍蛇が急に縄張りから出てきてあばれている、と。これは討伐しなければならないか?
「おっちゃん、このままだとどうなる?」
「──多分討伐だろうな、俺としては複雑だが。だけどギルドに依頼しているが討伐できる人がいないって他の連中が言ってたよ」
「それは俺がどうとでも出来るんだが、おっちゃんありがとう。1度ギルドに行ってくる」
最近俺たちが向かうところに何かしら起こるな?と思いながらも俺たちは冒険者ギルド那覇支部に着いた。
「お前さんがS級冒険者のリックか?」
なぜか受付にはとても似合わない顔に傷の入った厳ついおっさんに声をかけられた。
「そうだが」
「やっぱりそうか、榊の坊主から近々S級冒険者が沖縄の食材を求めてそちらに行くかもと連絡をもらってたんだ、俺はギルドマスターの金城だ。海龍蛇が暴れだして他の職員も忙しくてな、そんな時俺の直感スキルでお前さんが来そうな気がして受付で待ってたんだよ」
榊というのは俺に沖縄を勧めてくれた研究者だ。
「なるほど、理解した。その海龍蛇の件について話し合いたい」
「こっちだ」
そう言って俺たちは室長室に案内された。
『ふむ、こやつ中々強いな』
「俺の強さがわかるとはただの狼じゃねぇな」
まあそれはそうだ、神狼だからな。
「それで、普段温厚な海龍蛇がどうして暴れてるんだ?」
「それがわからねえ、ここ何百年もそんな記録は残ってねえんだ。数日前から時々縄張りから出てくるようになったんだが昨日から急に暴れ始めてな、船が出せなくなったんだ。原因を調べることは可能か?」
「俺たちは飛行魔法で空を飛べるから調べることは可能だと思うが討伐でいいんだよな?」
「ああ、それでいい。漁師の奴らは海の神様を討伐しないでくれって言ってきてるが、相手は伝説級の龍だ。このまま暴れられたら街どころか国がやられてもおかしくないからな。お前さんなら倒せるだろうという判断だ」
「報酬などはいらないから海龍蛇丸ごともらってもいいか?」
「──少しは買取に出さねえか?」
「実際に解体してみないとわからないな。美味そうだと嬉しいんだが」
「え、食うのか?」
『うむ、もちろんだ!』
そして俺たちはまた港に向かうことになった。
「おうさっきの兄ちゃんか、どうすることになったんだ?」
「討伐することになった。だが、もしかしたら討伐しないで済むかもしれないぞ」
「どういうことだ?」
俺は考えたんだが龍はもともと知能が高い、それが何百年も生きているとなると話せる可能性が高いのではないかと。他の人には何を言ってるかわからないと思うが、俺には言語理解がある。龍の言葉だって理解できるはずだ、なぜ暴れてるのかがわかれば海の神様と呼ばれている海龍蛇を討伐しないで済むかもしれない。
「まあ、あまり期待しないで待っててくれ。フェン、行くぞ」
俺は自分とフェンに飛行魔法をかけ暴れている海龍蛇の元へ向かった。
「兄ちゃん……空飛べるのかよ」
そう呟いたおっちゃんの声は俺たちには聞こえていなかった。
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「これは……」
俺たちは海龍蛇の近くまで飛んでやってきたのだが海には不法投棄されたゴミが多く目立っていた。
「グルァアアアアア!」
「落ち着いてくれ海龍蛇!話しがしたい!」
俺は敵意を向けず、あくまで討伐する気はないという意味も込めて優しく話しかけた。
『──我の言葉がわかるというのか』
「ああ、わかる。だからこそ話し合いたい。お前が暴れているのはこの海に捨てられたゴミたちか?」
『人の子よ。なぜ、我の海を汚すのだ』
やはりそうだったか。ここ沖縄の綺麗な海で何百年も過ごしているのに急に不法投棄で自分が住んでいるところを汚されたのだ、そりゃ怒りたくもなる。
「すまなかった、ゴミを捨てたのは俺ではないが浄化で綺麗にするのを手伝おう。そして地上に戻ったらこの事を伝え犯人も探そう」
『──お主は優しいのだな。何百年と生きておるが我の願いを聞いてくれたものはおらぬというのに』
それはただ単に話が理解出来る人が今までいなかっただけだ。それにしてもなぜ最近になってゴミの不法投棄が増えたのだろうか。
『我は何百年とこの地を守ってきたというのに、なぜこのようなことをされなければいけないのか……』
「多分だが、誰かが捨てているから俺たちも捨てていいだろう。とか、海は広いから少し捨てたところで誰も気付かないだろうとかそういうくだらない理由だと思うぞ」
『そうか……悲しいものだな。また汚れたらお主らに頼んでもいいのだろうか』
とても悲しそうな顔をする海龍蛇。暴れたくて暴れているわけじゃないし、これはもちろん人間側がやらかしたことだ、討伐する必要もない。浄化で簡単に済むお願いならなんぼでも聞いてやろう。
「もちろんだ、俺たちは転移ができるからすぐに飛んでくるぞ」
『そうか、少し待て……これをやろう』
海龍蛇は自分の逆鱗の近くの鱗を2枚取り俺たちに手渡した。
『友好の証だ。我の加護が与えられる』
俺は鱗を鑑定した。
「──すごいな。持っているだけで水中で呼吸ができるようになり、念じると海龍蛇と念話ができるのか」
『うむ、人の子と従魔の狼の分だ。人の子のためならいつでも手を貸そう』
「これは加工して首からぶら下げても効果はあるか?俺にはもう1人従魔がいるんだ」
『そうだったのか、ならもう1枚渡しておこう。加工してももちろん効果はあるがな』
「ありがとう、海龍蛇よ。俺の名前はリックだ。こっちはフェン、後は花妖精のメリルだ。何かあればそちらからも念話してくれ」
『ああ、よい友人を得た。狼もよろしく頼むぞ』
『うむ、海の美味いものが食いたいのだが知らぬか?』
フェンが聞くと、海龍蛇が少し考えたあと海に潜っていった。
『こやつらのことか?このサンゴクラブと琉海ロブスターはここの海でしか取れないやつだ』
『それだ!それが食いたかったのだ!お主やるではないか!』
俺たちがここに来た目的だった食材があっという間に見つかってしまった。まあ、手間が省けて良かったと思おう。
「ありがとう海龍蛇。今度お礼に普段食べられなさそうな物を持ってくるよ」
『海を綺麗にしてくれた礼だ、どうということはない。だが、我は海の物しか食べた事がないからな。違うものが気になる、遠慮なく待っておるぞ』
そうして俺たちは友人……いや友龍?になった海龍蛇に別れを告げ港に戻った。




