(閑話)ある日の冒険者たち
冒険者ギルド横浜支部酒場にて。
「なあ、結局あのイケメンは凄いやつなのか?初めて見た時の圧でやべえやつかもと思ったが特に依頼受けてる様子もないじゃねえか」
「あの一緒にいる狼が強いだけじゃないっすか?」
最近はよくギルドに顔を出すようになったリックのことをイケメンだからという理由で気にいらない奴や、実力を知らないため自分たちの方が強いと思ってるバカが増えていた。
「でも俺、浅草支部で働いている友達がいるんすけど、リックさんに緊急依頼で救出要請だしたらしくて59階層まで行って秒で帰ってきたらしいっすよ」
「お前それ友達に騙されてるよ、そんなこと出来るわけねえじゃん。そもそもあそこはまだ53階層までしか到達されてないんだぞ」
確かに。それもそうっすよね、と笑っていたのだが背後からギルマスが声をかけた。
「──その話なら事実だろうな」
「え、ギルマス?」
「サブマスもここに来るなんて珍しいっすね、ところで事実って?」
「あの方ならやりかねないということですよ。事実、横浜から浅草まで走って向かって15分で着いたそうですよ」
「それ本当に人間っすか?」
「あと、1つだけ言っておくぞ。早死にしたくなかったら喧嘩だけは売るなよ。彼自身優しくて温厚だからいいが、喧嘩どころか戦争になっても日本は彼に負けるだろう」
「それは…あの狼にですか?」
「いや、彼自身にだ」
すっかり喧嘩腰になりかけていた冒険者たちもリックのやばさにビビり始め、絶対に自分たちは喧嘩は売らないと心に決めたのだった。
「それよりも戦い方のコツとか聞いてみたらどうだ?教えてくれるかもしれないぞ。お前たちもそろそろ中堅ぐらいにはなりそうなんだから」
「教えてくれますかね?」
「基本的に彼は頼んだら教えてくれると思うぞ、理不尽なお願いとかじゃなければな」
──後に新人冒険者がリックに指導を頼み込むことが増え、巷では鬼のリックと呼ばれるようになった。
「あの、ところでずっと気になってたんすけど、サブマスの頭に乗っているのなんすか?」
「これは彼の花妖精から頂いた花冠です」
「えっと、なにかバフがかかったり効果があるんですか?」
「いいえ、かわいいだけです」
「──かわいいだけ、なんですね」
泣く子も黙ると言われているサブマスが、さも当たり前のように花冠をつけていることに対して冒険者は戸惑いを隠せないでいた。
「最近ギルドに花瓶や、花が増えたのって…」
「ええ、メリルさんから頂いたのです。素敵でしょう?荒くれ者が多い冒険者ギルドが落ち着いて華やかに見えませんか?」
「それはそうなんですけど、それにしてもギルマス。サブマス変わりすぎじゃありません?」
「ああ、メリルを愛で隊に所属してるからな、まあ俺もだが」
「確かにあの子可愛いよな、こんな俺にもいつも挨拶してくれて。こないだなんていつもお疲れ様ですなんて言われたよ」
「ああ俺もちょっとお気に入りの武器が壊れて修理だしてたんだが、元気にな〜れ!って励まして貰っちまった」
みんなが幼女可愛い、癒される。俺も愛で隊に入りたいななど言ってるなか、サブマスからの一言でその場が凍った。
「私は宮本しゃん大好きって言ってもらえました」
「──は?それはずるいだろう。名前呼びでしかも噛んだところなんて可愛くないはずがない!」
「ぐっ、なんか負けた気がする。俺も言われたい!」
「ところでなんで大好きなんて言ってもらえたんだ?」
「室長室にメリルさん専用のクッションを用意して好きだという果物とお菓子を常備しています。あ、そういえばお菓子買いに行こうとしてたところでした。私はそろそろ失礼しますね」
それを聞いた冒険者たちは自分もお菓子を用意しておこうと決めたのだった。
──そんな話をしていることを知らないメリルは今日も家で花冠を作っていたのだった。
「えへへ、今日も可愛くできたのです!」




