報告と差し入れ
「あれ、リックさん。ここに寄るなんて珍しいですね。ダンジョンの情報聞きに来たんですか?」
函館支部に顔を出すと以前グルメダンジョンのモンスター情報を教えてくれた受付嬢がいた。
「ちょうどいい、ちょっとダンジョンについてギルマスと面会がしたい。可能か?」
「さすがにかっこいいリックさんでも無理ですよ〜!お話なら私が聞きますよ〜」
この受付嬢は失敗だったか、最近いい人たちばかりだから油断していた。この前ダンジョンの情報を教えてくれた時は真面目だと思ったんだが、隣の青年の所に行くか。
「すまない、リック・ハンストンS級冒険者だ。ギルマスとの面会を頼みたい」
「っ……かしこまりました。予定を聞いてまいります、少々お待ちください」
そうそう、この対応でいい。S級と聞いてびっくりはしていたが普通に対応してくれてありがたい。そして隣の女は目を見開いてるな、そういえばS級って言ってないからそれもそうか。
「お待たせしました、すぐに面会するとの事でご案内させていただきます。申し遅れました、私ここの副ギルドマスターの佐藤と申します。」
サブマスってみんな受付にいるもんなのか?まあいいや、よろしくしておこう。
──コンコン。
「どうぞ〜」
中からちょっとチャラそうな声が聞こえてくる、まさかギルマスだなんて言わないよな?
入るのを躊躇していると、サブマスが苦笑いしながら「ちょっと、いえ。かなりチャラいのですがこれでも一応ギルマスなんです、すみません。仕事はできるので」と謝ってきた。
仕事が出来るのならいいか、サブマスに続いて中に入った。ちなみにフェンは興味なくて空間の中だ。
「ちょっと!僕の悪口聞こえてるからね!」
「はい、聞こえるように言ってるんです」
「もう、君そういうところあるよね!本当に!あっ、まずは自己紹介を。僕はこの函館支部のギルドマスター伊藤です!よく言われるけどこれでも30後半だからね!そして、こちらはサブマスの佐藤だよ。伊藤と佐藤でややこしいね、えへへ」
えへへじゃない。可愛くない、それにしてもめちゃくちゃ童顔だな。なんか頼りなさそうにみえるが多分サブマスがめちゃくちゃ優秀なんだろう、苦労を感じるよ。
「あ〜!もう僕が頼りなさそうで佐藤が優秀なんだって思ったでしょ!全くその通りだからね!」
その通りなんだ……まあいいや、ダンジョンの話もサブマスに一緒に聞いてもらえれば大丈夫だろう。
「それよりも、そろそろその肩に乗っている小さな幼女について触れた方がいいのかな!?」
そういえばギルマスが濃すぎて忘れていた。
「あのっ、あの、メリルです!はじめましてなのです!」
はい、うちの子可愛い。挨拶できて偉いね、今、果物出してやるからな。
「わわっ、これ食べてていいのです?」
「ああ、これから大人の話し合いをしなきゃいけないからな、メリルはこれを食べてていいぞ」
もきゅもきゅ食べてるメリルをいい大人が眺めるという時間が発生した。
「こほん、そろそろ本題に入ってもよろしいでしょうか?」
ああ、そうだったメリルの可愛さに本題を忘れていた。
「ダンジョンについてだが隠しエリアを見つけた」
「「っっ……!」」
そりゃあ、びっくりだよな。グルメダンジョンとして何十年も人気で毎日人が入るのに今さら隠しエリアなんてな。
「それでその情報をいくらで買う?」
俺はきっと今いじわるそうな顔をしているだろう。金には困ってないから最初はタダで提供しようかと思ったんだが、メリルが頑張って作った場所をタダで渡すのはやめたのだ。娘は誰にもやらん!っていう状況をやってみたかっただけだ、娘というか孫だけどな。
「──100出そう。いや、150出す!」
「メリルはそんな安くないぞ!」
「え?」
ああ、間違えた本音が出てしまった。
「ンンッ、なんでもない。よし150で取引成立だ」
タダでいいと思ってたものが150万になっただけで儲けものだ。このお金はメリルに貢ぐ。
「それで隠しエリアの場所だが地図はあるか?…………そう、この4階から5階に行く途中のこの通路の壁を壊したらあったんだ」
「壁を壊した……と、なるほど」
壊したあとも戻らないことは確認済みだからいつでも行けるようになった、安心するがいい。
「それで、その隠しエリアには何があったのでしょうか?グルメダンジョンだから食材だとは思うのですが」
「まず、床1面にはハーブなど花畑だ。そして……」
「──そ、そして?」
ギルマスの顔がキラキラと楽しみにしている子供みたいだ。
「たくさんの酒だ」
「キターーーー!!」
ギルマスがめちゃくちゃ喜んでいる、そんなに酒が好きなんだろうか。酒が誰でも飲み放題で冒険者なら誰でも取りに行けて、市場が混乱しそうだな。まあ、このサブマスがどうにかしてくれるだろう。
「持って帰ってきてるぞ、試飲するか?」
「いいの!?飲みたい飲みたい!ありがとう!」
「仕事中なんでダメです」
「君、本当にケチだよね!僕が1番偉い人だよ!」
慣れてくるとこのやり取りも面白く感じてきた、後で酒は渡しておこう。情報料貰ったしな。
「それで、最初の話に戻るんだが、そこの花畑と泉を作り管理していたのがメリルなんだ。もうダンジョンとして機能するようになり、管理がいらなくなったので俺と契約して一緒に暮らすことになったんだ」
メリルがぺこりと頭をさげた。果物を食べている最中だというのに自分の話がされているとわかると頭をさげるなんて天才では?
「そうなのか!契約いいなあ、メリルちゃん欲しいものがあったら何でも言ってね?おじさんいっぱい買ってあげる!」
──今ここに“メリルを愛で隊”が発足された瞬間だった。もちろん会員番号1番は俺だがな。




