出会ったあの子
すっかり休暇も満喫した次の日、俺とフェンは最近の日課になりつつあるダンジョン探索のため函館まで来ていた。
「今日は5階層の探索だな、行くぞフェン」
5階層は川が流れていてそこに魚系のモンスターが泳いでいたり、ポーションの材料となる薬草や花が咲いていて、それを主食とするフラワービーがいるらしい。食べてる花によって巣からとれる蜜の種類が変わるのも面白い。そして、ごく稀にレアモンスターとしてロイヤルクイーンビーが出現するとのこと。この女王蜂の巣から取れるのは黄金の蜂蜜はとても貴重らしいので是非見つけたら手に入れたい。
「──ん?フェン、ここの壁の奥から生命反応があるんだが気のせいか?」
『いや、何者かがいるようだ』
どうしよう、とりあえず壁壊してみるか?異世界のダンジョンは壊しても少ししたら修復して元通りだったが、ここのダンジョンもだろうか?まあ、いいやどうにかなるだろう。
「フェン、ここの壁壊してみてくれ」
『うむ』
──ドゴォォオオオン!
俺は息を呑んだ。
そこまで大きくない空間に床1面花畑だ、そしていくつもの泉がある。それに見間違いでなければ…
「フェン、俺にはフェアリーに見えるんだが」
『うむ、我も見えておる』
そうか、やはりフェアリーだったか。鑑定。
──こちらの世界では妖精と言うのか、鑑定結果では花妖精と出た。
「あわわっ!どうして人がいるのです?」
手のひらサイズの花妖精がこちらに気付き近寄ってきた。
「すまない、ここが君の場所とは知らず壁の奥に生命反応があったから来てしまった」
「ふわぁ…!てっきりここに来られる人はいないと思ってたから嬉しいのです!」
──なんだこれ、ちょっと可愛いすぎないか?
「ところでここは、どういう場所なのだろうか?」
「私はずーっと前にここのダンジョンで産まれたのです!元々はここより下のお花畑にいたのですが、怖い蜂さんがいたのでこちらにお引越ししてきたのです!」
なるほど、それで引っ越してきたのはいいが誰も来ず、長い間ずっとここで花と泉を造り上げ管理してきたらしい。ところでさっきからずっと俺の服の匂い嗅いでるけどそんなに臭う?
「お兄さん!とっても甘い匂いがするのです!」
甘い匂い?朝、フェンに苺ミルクを作ったからだろうか?練乳か?
「果物とかの匂いかもしれない。食うか?」
「はわぁ、いいのです!?」
俺には子供とかいないが、孫ができたらこういう気分になるのだろうか。今とてつもなく貢いであげたい気分だ。
「これ、クリスタルストロベリーと練乳だ。君には大きいから切ってやるから少し待ってくれ」
俺は食べやすくカットして花妖精にあげた。もちろん隣にいた狼も食う気満々だが。
「ん〜!お口の中が幸せなのです!もう何十年もこんな美味しいもの食べてなかったです!」
よし、決めた。いっぱい貢ぐ。金だけはある、美味いものたくさん食わせてやろう。
「それならたまにここに来るよ、甘いものたくさん持ってくる」
「う〜ん、お兄さんに着いていっちゃだめなのです?」
「君はここの管理があるのではないのか?」
「ここはもう随分昔にダンジョンとして認められたのか、今ではお花を取っても次の日には元通りなのです!」
「そうか、それなら契約して一緒に俺たちと暮らすか?」
「い、いいのです!?やったぁなのです!狼さんもよろしくなのです!」
『うむ、我のことはフェンと呼ぶがいい』
「はい!フェンたん!」
──あ、噛んだ。めちゃくちゃ恥ずかしそうにしてて可愛な。
「す、すみません!フェンさんって呼びたかったのです!」
『ぐっ、可愛いとはこういうことをいうのだな』
なぜか狼までちょっとデレている。もうおまえ今日からフェンたんでいいよな?
──そうして異世界で災害級とまで恐れられた神狼は今日から“フェンたん”となった。
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契約を終え、花妖精の名前はメリルと名付けた。フェンが小さな声で『メリたん…』と呼ぼうとしてたことは聞かなかったことにしておこう。
「メリル、そういえばここの花とか詳しく案内してくれないか?」
「もちろんいいのです!これは月光カモミールといって、飲むと疲労回復効果が期待できるのです!」
他にも蜜月花という花びらから甘い蜜が滴っている花も見つけた。蜜を紅茶に入れて飲んだり、乾燥させてハーブティーにするのがいいらしい。
他にもミントやレモンバーム、ローズマリーなど普通のも育ててあった。
「次にこのお酒たちなのです!」
「まて、これは酒なのか…?」
泉だと思っていたものはどうやら全部酒でできているみたいだ。メリルが長い年月をかけてがんばったのです!と胸を張っている、可愛い。
「お気に入りはこの黄金蜜酒なのです!」
いわゆる蜂蜜酒か。確かに近寄ると甘くて花の香りがするな……黄金蜜酒の泉ってところか。
他にも薔薇の果実酒の泉に林檎酒の泉、月光酒の泉なんかもあった。この空間は夜になると月が出るらしく、月の光を浴びて徐々に味に変化がおきるみたいだ、面白い。
あとは七色葡萄酒の泉というのがある。見た目は七色に光っていて、飲む人によって味が違うのだとか。その人に合わせて好みの味に変化するらしい。
「これらの酒は貰っていっていいのか?」
「大丈夫なのです、このお酒たちも無くなってもすぐに元通りなのです!」
無限サーバーができてしまったか……これは函館支部に報告するべきだよな、多分。隠しエリアのこともあるし、ここはダンジョンだが比較的安全でここまでこれる。これはまたこのダンジョンが人気になるな…
「ちなみにメリル、ここに他の冒険者が来て、お酒を飲んだりお花を取ったりしてもいいのか?」
「いいのです!メリルはもうお兄さんと一緒にいくのです!」
そうか、それなら報告しに行くか。




