デパートへ行く
翌日、俺は鞘から剣を抜き、刃を確認した。
大きな損傷はないが、昨日のミノタウロス戦で細かな歪みなどがあるかもしれない。放置して大事な場面で折れたりしたら面倒だからな。
「──メンテナンスに出すか」
『出かけるのか?』
「ついでに買い物もだな」
異世界だと武器や防具の修理などは鍛冶屋だったが日本だと大型商業施設内にあるらしく、いわゆる“デパート”と言う建物だ。
一般客も普通に多いが、上層には冒険者向けの店が揃っていて武器や防具店、ポーション店、魔導具店などがあるが今回行くのは修理店だ。あちこち行く必要がなく1つの店にまとめた奴は天才だと思う。
身支度を整え、スマホの地図を見ながらデパートへ向かった。
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『でかいな』
到着して見上げながらフェンが呟く。
「よし、修理店に行くか」
エレベーターにびっくりしていたフェンだが、目的の修理店にすぐ着いた。
「いらっしゃいませ〜」
「この剣のメンテナンスを頼みたい」
受付の男性の話によるとあんまり刃こぼれもなく、このぐらいなら1時間ちょっとで終わるとの事。それならデパートで時間を潰して、また後で来てもいいな。
「わかった、また後で来る」
──さて、時間ができてしまった。どこに行こう…?壁にある店内の地図見てると気になるところを見つけた。
「地下だと?」
『なにがあるのだ?』
「食い物だな、惣菜やら色々売っているらしい」
『早く行くぞ!』
そんなに急がなくても逃げないって。多分。
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地下に到着すると大きな垂れ幕が見えた。
“北海道物産展開催中”?
『なんだこの幸せな空間は。いい匂いがする!』
普段スーパーなどには入らず外で待っているフェンからしたらいっぱい食べ物が並んでる空間というのはワクワクすることだろう。
店員にちゃんと確認したが従魔も一緒に入っていいとのことだったので今日はフェンも一緒だ。
ふと、バターの香りが鼻を抜けた。
『グルルゥ…』
「お前もわかるか、この美味そうな匂いが」
フェンは完全に匂いに釣られ、匂いのする方へ歩いていった。
「お兄さん!焼きとうもろこしどうですか〜!」
「──無料で?」
「はい!試食どうぞ〜!」
リックは困惑しながらも受け取り、1口かぶりついた。醤油の香ばしさと、とうもろこしの甘み、そしてバターのコク。
「うまっ」
『我もだ!』
店員の女性がかっこいい狼ですね、と笑いながらフェンにもとうもろこしをくれた。
『うむ、うまい!』
耳がぴんっと立っている。そして、くるりと方向転換し何事もなかったかのように最後尾に並び直した。
「──おい」
さすがにそれはだめだ、とぼけた顔をするな。
結局店員が、特別だよ?とフェンにもう1つ渡していた。すまん、いっぱい買うから許してくれ。
他にも色々と店をまわり、いももちを食べてみたりザンギの試食をして唐揚げとの違いがわからないが大量に買っておく。揚げた肉はなんでも美味いということだ。
締めにソフトクリームを食べて牛乳の濃さに感動し、地下を後にして修理店に武器を受け取りに行った。後は夜ご飯にでも食べよう。
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武器を受け取り帰宅したリックはデパ地下での戦利品をテーブルに並べた。
「北海道でこれだけ凄いなら他はどうなんだ?」
スマホで検索してみると各地のご当地グルメがたくさん出てきた。
博多ラーメンや、仙台の牛タン、大阪のたこ焼きもいいな。
これはいつか全国を行かねばなるまい。リックは転移魔法を使えるのだが、1度でも行ったことがないとそこには転移できない仕様で便利な魔法ではあるのだが、今すぐ行けないその性能に少し不満を感じる程ご当地グルメは魅力的だった。
フェンも一緒に画面を見て、ヨダレが垂れそうだが放っておこう。
「フェン、買ってきたジュース飲むか?」
コーヒー牛乳とか甘いのが好きなフェンなら気にいるだろうと思い、“カツゲン”という飲み物を買ってきていた。
『なんだこれは!?うまい、うまいぞ!』
勢いよく皿に顔を突っ込んで飲んでいるが、絶対それベタベタになるやつだろ…
でも、確かに美味いな。今度見つけたらまた買っておこう。
ついでに、ベタベタになったフェンと一緒に風呂に入り夜ご飯は海鮮丼を食べた。
「北海道に住むのが正解だったか?」
北海道の食いもん、強すぎるだろう……
夜ベッドで横になりながら、隣を見ると今日買った“鮭とば”を大事そうに抱えて眠るフェンがいる。
「──なぜ、狼が鮭とばを抱えたまま眠っているんだ…」
本気で北海道に家を構えようか悩み始めるリックだった。




