ミノタウロス肉の赤ワイン煮込み
ダンジョンから帰宅し、解体のために庭に向かった。
「さて、問題はこいつだな」
インベントリからミノタウロスを取り出した。
「───!!」
フェンが勢いよく立ち上がり、鼻をひくつかせながらミノタウロスに近寄り、完全に目を輝かせていた。
「近い近い、まだ解体前だぞ」
異世界でもそうだったが日本でもミノタウロスを倒せる者はいる。だが、素材を優先するため全てを持ち帰れる者は少なく市場に肉が卸されることがほとんどない。そのためミノタウロス肉というのは貴重で高級肉だ。
リックは丁寧に部位ごとに分け解体を進めていく。
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リックはキッチンでまな板の上に解体したばかりのミノタウロス肉を置いた。
「──やっぱりいい肉だな」
包丁を入れると、重い感触。普通の牛肉より遥かに筋肉質だ。だが包丁を進めると断面から鮮やかな赤身が顔を出し、白い脂も綺麗に入っていた。
「煮込み向きはこっちだな」
肩肉とすね肉を切り分けていく。筋が多く、硬い部位だが長時間火を入れればこういう肉ほど化けると知った。
『──────』
「だからまだだって」
フェンは完全に待ちきれない様子だ。
肉を大きめに切り分け、塩胡椒を振る。そこにローズマリーを擦り付ける。
続いて鍋を火にかけ油を薄く引き、十分に熱したところで肉を焼いていく。
――ジュワァァァァッ!
一瞬で激しい音が部屋中に響き、脂が跳ね香ばしい匂いが広がった。
フェンがソワソワしているが我慢してもらおう。
「ここで触りすぎず、焼き目をしっかり付けよう」
やがて肉の表面がこんがりと焼き色が浮かび上がり、香りも一気に濃くなった。
「──よし」
全面焼き終えた肉を1度取り出す。鍋底にはしっかり肉の脂と旨みが残っていた。そこへ刻んだ玉ねぎ、人参、セロリ、にんにくを入れる。
「この鍋底の旨みが1番大事なんだよな」
ジュッと音を立てながら野菜が炒まっていく。玉ねぎが透明から飴色に変わり、甘い香りが立ち始める。
そこへ小麦粉を少し振り入れ、全体を絡める。さらに冷蔵庫から赤ワインを取り出した。
「───異世界なら1本で結構いい値段するんだけどな」
そう呟きながら惜しみなく鍋へ注ぐ。
次の瞬間、ぶわっと濃厚な香りが広がった。
ワインの酸味、肉の香ばしさ、そして炒めた野菜の甘み。混ざりあった匂いだけで腹が減る。
『グルル…』
「まだ煮込むんだよ」
リックは苦笑いしながら木べらで鍋底の旨味をこそげ取り、張り付いた旨味が赤ワインへ溶け出していった。そこに肉を戻す。
さらにトマト缶とコンソメ、水、ローリエを加え蓋を閉める。
火加減は弱火で、時々蓋を開けアクを丁寧に取っていく。その間にもどんどん香りが深くなっていく。
赤ワインの深みや肉の旨味、香草の匂い。
部屋全体が高級洋食店のような空気になっていた。
フェンは完全に鍋の近くに座り込み、真剣に待機している。
「おまえ、番犬みたいだな」
『うむ』
返事だけは立派だ。
さらに2時間程煮込み、濃い赤色のスープだったのが艶のある深い茶色へ変わっている。
スプーンで肉へ触れるとホロっと崩れた。
「よし、完成だな」
皿に盛り付け、横にはマッシュポテトを添える。軽く焼いたパンも用意しておく。
「よし、食っていいぞ」
───フェンは勢いよく皿に突撃しているが痛くないのだろうか…。
リックも口へ入れた瞬間、濃厚な旨味が口に広がった。筋の部分もとろとろに溶けていた。
「牛肉より味が濃くて美味いな」
まだミノタウロスの在庫はあるがなくなればまた狩ってきてもいいな。
────フェンも気に入ったのかシッポを揺らし、ちぎったパンをしっかり浸しながら食べていた。
一旦、ダンジョン探索は休憩してのんびりしてもいいな…




