オーク肉の角煮
翌朝。
今日はダンジョンには行かず休日にすると決めていたリックはいつもより遅い時間に起きてきた。
フェンはすでに起きていてリビングでテレビを観ながらポテチを食べていた。
──どんどん現代に染まってきているな。
まあいいか、ポテチ美味いしな。爪までしっかり舐めている狼なんてちょっと見たくなかったが。
『遅かったな、主よ。我は腹が減ったぞ』
時刻はすでに昼過ぎ、がっつり食うと夜あんまり食べれなくなるからな……。
「うーん、ちょっとこれから夜ご飯に向けて時間のかかる料理を作るからこれにしよう」
そう言ってインベントリから前に大量に作って入れておいたホーンラビットのサンドイッチを一緒に食べた。
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リックはキッチンへ立ち、ダンジョンから持ち帰ったオーク肉の塊を取り出した。
分厚い肉の塊。赤身と脂が綺麗な層になっている。
『それが今日の飯か?』
「オークの角煮」
『かくに』
またしても聞き慣れない単語にフェンは繰り返し呟きながら肉をじっと見つめていた。
「時間かかるぞ」
『肉はやけばすぐ食えるだろう?』
「美味くするには手間が必要なんだよ」
リックは大きな鍋にお湯を張った。
切り分けたオーク肉を入れると、アクが浮かび始めた。臭み抜き、これをしっかり丁寧にやるだけで味が大きく変わる。
酒に生姜、長ネギの青い部分を入れさらにアクを取っていく。
『面倒だな』
「料理は戦闘より準備が必要なんだ」
下茹でした肉を取り出し、表面を軽く洗い余分な脂を落とす。
鍋に戻し酒にみりん、砂糖と醤油を加える。
──甘辛い香りが少しずつ部屋に広がった。
『匂いが変わった!』
「ここからが本番だ」
弱火でじっくり静かに。
鍋の中でオーク肉がゆっくり揺れる。リックは時々、蓋を開けてアクを取り、煮汁を肉へ回しかける。
その度に濃厚な香りが部屋へ溢れた。
『まだか』
「まだ」
────数分後。
『まだか』
「まだ」
────さらに1時間後。
『──まだなのか』
「おまえずっとそれ言ってるな」
煮込んでる間に忘れずに米も炊いておく。
炊飯器から立ち上る湯気に白米の甘い香り、それに反応したフェンの耳がピクっとなった。
『白い粒だ!』
「好きだよな」
『うむ、あれは危険だ』
「わかる」
さらに何時間か煮込み、窓の外はすっかり暗く夜ご飯の時間になっていた。
蓋を開けると、綺麗な色に染まったオーク肉。箸を入れるだけで、ほろりと崩れる。
途中で入れた大根にも味が染み込んでいた。
「よし、完成」
『待っていたぞ!』
リックは角煮を白米に乗せると、艶やかなタレが米に染み渡っていく。
箸で持ち上げた肉は、驚くほどに柔らかかった。
───1口、甘辛い味が広がる。脂は濃厚なのにしつこくなく、噛む必要すらないほどに柔らかく煮込まれていた。
「────美味すぎて幸せ」
フェンは無言で食べていた。夢中だ。
『消えたぞ』
「何が?」
『肉が口の中で消えたのだ!』
またか、と笑った。
『オーク強かったか?』
「いや?」
『もっと感謝して食うべきだったな』
「そこ?」
10階層に向けてしっかり休み、美味い飯も食った。
この後、一緒に風呂に入ったあと、アイスを食べ明日のダンジョンに備えて早めに寝るリックとフェンだった。




