5階層へ行く
5階層へ降りるとまた草原に変わっていた。
ここはどんなモンスターが出るのだろうか…
『ふん、二足歩行の犬か』
───コボルトか。何故かフェンが敵意むき出しだが、お前は犬ではなく狼だろうが。
コボルトは二足歩行で歩く犬のような見た目だ。大きさは小柄な人間程のサイズだが、ゴブリンより少し知能が高く集団戦が得意だ。
素早く連携し、狩猟本能で攻撃してくるのが厄介で、錆びた剣や他にも武器を使ってくることもある。
─────コボルトが2体。
正面と右……いや、違う。
リックは半歩だけ後ろに下がる。
直後、死角から飛び出してきた3体目の短剣が空を切った。
「──連携は悪くない」
呟きながら剣を振る。一閃。
喉を引き裂かれたコボルトが崩れ落ちた。
コボルトの牙だけ何かに使えるかもと思いそれだけ狩り取ってダンジョンを後にした。
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家に帰ってきて早速庭で解体をしてしまおう。血抜きなども全部庭でやるが浄化魔法を使えば綺麗さっぱり元通りになるから気にしない、大雑把な性格なのだ俺は。
解体用ナイフを使い迷いのない手付きであれだけ狩り尽くしたというホーンラビットを全部解体していた。
『相変わらず早くて綺麗で慣れているな』
「生きていくのに必要だったからな」
さて、キッチンに戻ってきたが何を作ろう。
アウトドアスパイスをかけて焼くのもいいが、なにか手の込んだものを作りたい。
スマホでレシピを調べてこれにするかとメニューを決めた。1番最初に出てくる王道なメニューを作れば外れはないだろうと。
「さて、と」
解体したホーンラビットの肉を水で洗い、キッチンペーパーで丁寧に水気を拭き取る。
淡い桃色の肉は脂が少なく、それでいて張りがあった。
『それを食うのか?』
ソファで丸くなっていたフェンの鼻がひくついている。
「ああ、今日はシチューにする」
『しちゅー』
聞き慣れない言葉を繰り返しながらフェンの耳がピクピクしていた。
俺はは肉を一口大に切り分け、軽く塩胡椒を振った。
次に人参、玉ねぎ、じゃがいも。
一定のリズムで刻まれる包丁の音が、静かな部屋に心地よく響いた。
フライパンにバターを落とす。じゅわり、と溶けた黄金色の油にホーンラビットの肉を並べた瞬間、香ばしい匂いが一気に広がった。
『……っ』
フェンが勢いよく顔を上げ、こちらに近寄ってきた。
「まだ味付け前だぞ」
『だが美味い匂いがする!』
表面に焼き色がついたら、続けて玉ねぎを炒める。甘い香りがじわじわと立ち上がり始めた、人参とじゃがいも、キノコも入れておこう。
鍋に水、牛乳、コンソメを入れてことこと、と小さな音を立てながらシチューが煮え始める。
部屋中に温かな香りが広がりいつの間にか、フェンがキッチンのすぐ横に座っていた。
「近い近い」
『見張っている』
「つまみ食い防止じゃなくて?」
『───』
図星だったらしい。
鍋の蓋を開けると、白い湯気がふわりと立ち上がった。
とろみのついたスープの中で、野菜と肉がゆっくり揺れ、お玉ですくえばホーンラビットの肉は驚くほど柔らかく崩れた。
「よし、完成」
『待っていた』
「お前ずっとそこにいただろ」
テーブルに並べられたシチューとパン。
「熱いから気をつけろよ」
リックはそう言ってシチューを口へ運ぶ。
濃厚なクリームのコクに野菜の甘み、ほろりと崩れるホーンラビットの肉。思わず息が漏れた。
「──うまっ!」
ダンジョン帰りの身体に温かなシチューがじんわり染み渡っていく。シチューにして正解だったな。
フェンの方を見ると勢いよく顔を突っ込んでいた。
『────熱っ!?』
「だから熱いと言っただろ」
しかし、恐る恐るもう1口。
『──うまい!!』
「だろ?」
『肉が柔らかく、野菜も甘く汁もうまい!なんだこれは!?』
フェンのシッポがブンブン揺れているが、
リックは笑いながらちぎったパンをシチューに浸してやった。
「シチューに浸して食うともっと美味いぞ」
『!?!?』
新しい家に、温かな料理。
そして、隣には当然のようにフェンがいる。
異世界では考えもしなかった穏やかな時間に、リックは小さく息を吐いた。幸せだな。




