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新たなる世界へ  作者: パルス
第二章

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第二部 第45話「夜襲と殲滅」

第二部 第45話「夜襲と殲滅」


夜は、静かに始まった。


火は焚かれておらず、光もないため視界は限られているが、その分だけ外の気配ははっきりと感じ取ることができ、リックは外縁に立ったまま動かず、耳と感覚を研ぎ澄ませながら周囲の変化を待っていた。


風はある。


だが、それとは別に、明らかに混じる気配がある。


「……来たな」


小さく呟いた直後、森の奥でわずかな揺れが生まれ、それが一つではなく複数に増えていくことで、やがて隠しきれないほどの動きとなって現れた。


次の瞬間、影が飛び出す。


魔獣の群れだった。


数はそれなりに多く、勢いのまま突っ込んでくるが、その動きは統制されたものではなく、目の前の獲物へ向かって一直線に走るだけの単純なものだった。


そして――


最初の一体が、地面を踏み抜いた。


乾いた音とともに土が崩れ、魔獣の体がそのまま落ちていくと、それに続く個体も同じように足場を失い、次々と落とし穴へと飲み込まれていく。


止まらない。


前が崩れたことで後ろが押し込み、さらに後続が踏み込むことで被害は広がり、気づいたときには前列は完全に崩壊していた。


それは戦闘というより、事故に近かった。


だが、それで終わりではない。


落ちなかった個体が、混乱しながらも前に出ようとする。


その瞬間だった。


左右から矢が放たれる。


無数の矢が、ほぼ同時に夜を切り裂いた。


「近づくな、距離を取れ!」


ザクトの護衛隊の声が飛ぶ。


彼らは前に出ない。


距離を保ち、安全圏から一方的に攻撃を続ける。


焦りも、無駄な突撃もない。


ただ、確実に仕留めるための動きだけがそこにあった。


矢は外れない。


落とし穴で動きの鈍った個体を優先し、次に動いているものを狙い、連携して削り取る。


それは訓練された動きだった。


一方で、ゴーレムも動く。


大型が一歩踏み出し、穴の縁に残った個体をそのまま叩き潰すと、小型が素早く動いて逃げ場を塞ぎ、さらに巡回していた中型が横から回り込んで取りこぼしを処理していく。


連携は乱れない。


人間とゴーレムの動きが噛み合い、無駄が一切ない。


中央、本体側ではリックのパーティーが静かに構えたまま、必要な場面でのみ魔法を放ち、遠距離から確実に数を減らしていくが、その動きはあくまで補助であり、主力はあくまで外周の制圧だった。


戦闘は長く続かない。


突入してきた魔獣の群れは、落とし穴で崩され、矢で削られ、ゴーレムに押し潰されることで、ほとんど何もできないまま数を減らしていき、やがて動くものがいなくなった。


静寂が戻る。


ほんの短い時間だった。


だが、その結果は明確だった。


「……終わりか」


誰かが小さく呟く。


戦闘と呼ぶにはあまりにも一方的で、こちらの被害はほぼゼロに等しい。


村人たちは、穴の中からその様子を見ていた。


戦いが始まったはずなのに、気づけば終わっている。


その現実に、言葉が出ない。


リックは周囲を見渡し、倒れた魔獣の位置と数、そして動きの流れを頭の中で整理していく。


これは本隊ではない。


あくまで様子見。


「……まだ来る」


静かに言う。


その声に緊張が戻る。


だが同時に、別の空気も生まれていた。


護衛隊の方から、小さなざわめきが広がる。


勝った。


それも、圧倒的に。


その実感だった。


リックはその様子を一瞥し、短く告げる。


「戦利品は全部持っていけ」


一瞬、空気が止まる。


「……いいのか?」


護衛の一人が思わず聞き返す。


普通なら分配される。


それが当然だった。


だが、リックはあっさりと言い切る。


「実際にやったのはお前たちだ」


それだけだった。


無駄な説明はない。


だが、その一言で十分だった。


護衛隊の空気が変わる。


驚きから、納得へ。


そして――信頼へ。


「……了解だ」


短い返事。


だが、その中身は重い。


そのやり取りを、マグロンは静かに見ていた。


利益を分けるのではなく、流れを作る。


その判断の意味を理解しながらも、簡単に真似できるものではないと感じている。


リックはすでに次を見ている。


終わっていない。


むしろ、ここからだ。


夜はまだ続く。


そして、その先には確実に本隊がいる。


「……次は本気だ」


小さく呟く。


その言葉が、静かな夜の中に沈んでいった。

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